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君のソナタ  作者: R a bit
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番外、切り取られた原稿用紙の三枚目

物語を動かすイベントを考えるより、その間を作るのが一番難しいのかもしれません。

宮古みやこりつが学校に来なくなってから三日目。

昨日の反省を活かし、俺を学校に連れ戻したいもの好きたち

黒井くろいこころ恋澄こいずみ色芭いろは外川そとがわ…ではなかった。外界に住まう者(アウトサイダー)の三人は朝早くの他に人の居ない教室で計画を練っていた。

意見を外川がだして、恋澄が可能かどうか判断し

黒井はどっちつかずでアイディアは出しつつも、外川に対しても恋澄に対しても肯定的ではなかった。

「だから!お前等は男子の気持ちがわからないからそんな事を言えるのだ!」

「ではなんですか?そんな昭和のヤンキー漫画みたいな事で宮古君を窮地から救って魅せるとでも?」

二人は静かに言葉を綴る黒井と違い、ギャーギャーと喚くように議論を続けていた。

ことの発端は、一発目のアイディアという一番大切なところで、外川が「喧嘩したあと土手でお互いを称賛すれば全ての男子は手のひらの上だ。フッ。」

なんて事を吐かした事だ。

それから段々ヒートアップしていき、今に至る。


確かに外川君の案は何処となく古臭いけど…

実際男子の意識を変えるのが一番なのは事実だと思うな。


「そうでしょうか。」

思慮深く何が最善か考えている恋澄だったが、

外川は未だ熱が冷めないようで

「そも男という生き物は!地位と名誉と金と女性が有れば生きていけるんだ!!」

「何ですかその金持ちの命乞い真に受けた人。

あと女性っていう所なりきれてないの満載ですよ?」

このボケを何処かで見たことがあるが、

まぁ今気にしても仕方がない。


兎にも角にも、先ずは味方を増やすのが先だよね。


黒井の一言によって恋澄は我に返って、誰が極力的になるか考えた。

無難なところは逢川あいかわ愛依あいになる。

黒井との仲も外から見る限り悪くない。

あと一人挙げるとすれば橋李はしり虎古もこだ。

が、彼女は今回の俺の行動で一番被害を受けた。

どうあっても協力するとは思えない。

「そうですね。発目はつめさんは宮古君に対して何かするわけではないみたいですし、案外彼女が適任かと。」

発目はつめはじめ

薄桃髪を三つ編みにした丸メガネをかけた少女。

発明部を作り一人で何か怪しげな研究しているが、

化学の先生には大いに気に入られているようで

全く廃部になる気配はない。

「…でっでは!我は他クラスの男子に…」

外川がこれ以上女子が増えることに危機感を持ち、

逃げようと扉に手をかけようとしたところ

「ひっ!?ご、ごごごごめんなさいっ!??」

流石に恋澄程ではないが、周りの女生徒と比べると明らかに長いスカートに濃い黒のタイツ。

半袖が増えるこの時期に、

ブレザーを着る程隙のない見た目。

噂をすればなんとやら。という奴で、外川は教室に入ってきた発目と衝突した。

「あ、いえ…その。俺の方こそごめん。」

先に立ち上がって手を差し伸べる。

こういうときには、きちんと良い人である。

「発目さん。少しお話しませんか?」

いつの間にか移動したのか、恋澄は外川の少し斜め前に立ち、黒井に視線を送る。

そうして黒井は静かに首を縦に振った。


「な…成程。それであーしに協力して欲しい。と。」

以外といえば失礼だが、気の弱い性格の発目の一人称は「あーし」らしい。

「ええ。手始めに宮古君が何故あのような行動を取ったのかクラスに話す機会を作りたいですね。」

いつものように黙々と進める恋澄、話を聞いてる黒井、

側で黙っている外川。

「フヘヘっ。あーしに出来ますかね?そんなこと…」

恋澄は作ったかのような特徴のある笑い方に顔をしかめるも、直ぐにまた話し始めた。

「発目さんは、この学年に協力してくれそうな知り合いはいますか?」

何気ない発言。

少なくとも恋澄に関してはそう思うだろう。

ただ、この場にいた三人は違う。

特別なことをしなくても相手に覚えられ、

自然と話せるくらいの知り合いができ、

適度で不快にならない距離感を作れるわけではない。

「貴様っ!解らないが解らない。とかぬかすタイプかっ!!??」

「あ、あああああーしだだだって作ろうと思えば親友の一人や二人くらい。」


恋澄さん。無能が何故無能なのかが解らない有能は

自分より下を理解できない有能は果たして本当に有能なのかな?


喚く者、見栄を張る者、何かよくわからない事を綴る者

三者三様の慟哭を轟かせ

その有り様に恋澄は絶句していた。

「はぁ…取り敢えず、発目さんは協力してくれるって事で良いんですね?」

「は、はぃ。」

(こんな構成で大丈夫なのかしら。)

とは流石に声に出さなかったが、ここに記すという事は、恋澄は後で俺に愚痴るぐらい不満を感じていたようだ。

その後も五分程度話し続けると、再び教室の扉が開いた。

現れたのはその場の誰も予想しなかった人物。

スカートからスパッツを覗かせ、

短く揃えられた髪に少し日に焼けた褐色がかった肌。

麦わら帽子が似合いそうな快活な少女。

橋李虎古だった。

「ごめん。盗み聞きさせてもらった。」

怒っている訳ではないみたいだが、

有無を言わせぬ迫力に、四人は黙って聞くという選択肢しか出てこなかった。

ほぼ全員がこう思っただろう。

自分の思いを踏みにじった宮古を、またクラスメイトとして迎え入れるのは言語道断だ。と。

然しこの予想も大きく外れることとなった。

「私も、協力する。」


同日夜。

橋李はある人物に電話をかけていた。

時間的にはもしかしたら夕飯中かもしれないとも思ったが、どうやらスマホは肌見放さないタイプのようで、

ワンコールもなく電話に出た。

「もしもし。」

「はい。もしもし、可愛い可愛い貴女だけの重平しげひら百合花ゆりかです〜。」

いつも通りテンションの高い声。

だが、何処か反響しているようにも聞こえる。

入浴中だろうか。

「その、百合花に聞きたいことがあるんだけどさ。」

ビデオ通話では無い故わからないが、

恐らく重平百合花は、今度は何をお願いしようかと考えニヤついている事だろう。

「良いですよ。そうですね〜、今週の日曜に予定開けてくれたらですね。」

陸上部はかなり活動日が多いが、流石に日曜は完全フリーだ。特に用事もないため橋李は二つ返事で承諾した。

「宮古君が、何であんな自己犠牲の精神で人を助けようとするのか、教えて。」

無論重平が知っている確信はない。

根拠もない。ただ自信はあった。

「簡単ですよ。宮古先輩は高校を卒業したら自殺するつもりなんです。今を生きる自分なんてどうでもいいんですよ。」

可愛らしい声に似つかない内容。

橋李はその言葉の意味を上手く咀嚼できなかった。

「聞きたいことは以上ですか?」

「まっ…待って。」

橋李は混乱する頭でもう一つ聞きたかった事を聞き出す。

「百合花と宮古君は、どうして知り合いなの?」

どうして。とは少し語弊を生みそうだが

「え〜、パパ活って言ったらどうします?」

「百合花がそんな事したらアナフィラキシーで倒れるでしょ。」

少しずつ橋李の頭が冷静になってきた。

「ん〜でもこれを言ったらつまらなくなるんですよね。」

重平は暫く唸りながら、結論を導いたようだ。

「なんで私が宮古先輩のことを詳しく知ってるのか、なんでその上で()()先輩と呼ぶのか。少し考えてみてください。そうしたら、何となくわかるんじゃないですか?」

重平はそう言って電話を切った。

今回で律が少し掘り下げられましたね。

律は主人公且つ語り手。

だけどそこがしれないキャラにしてるんですよね。

あくまでも、読み手は律に自己投影するじゃなくて、

律の話を聞く聞き手になって欲しい。という意図を込めてます。

鈴音の方でも書きましたが、こっちだけ見てるという人がいるかも知れないのでここでも書かせていただきます。

更新が大分遅れました。

少ないながらも最新話まで読んで頂いた方々に謝罪します。

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