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君のソナタ  作者: R a bit
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36.4℃の初雪

感動する話を作りたかったのですが、そういえば私があまり感動しない人間なので作れませんでした。

何となく気恥ずかしかったので比喩で誤魔化してる場所も有りますが何卒温かい目で。

麻枝さんって本当に凄い人なんだなぁって…

12月25日、街の喧騒は日に日に増加したこの数週間の内昨日ほどではなくとも、人の話し声や足音は確かに通常通りでは無かった。

クリスマスは家族と過ごすものらしいが、やはり歩く人は男女のカップルばかりだ。

そんな痛いくらいに光り輝く木々やビル群の隙間を、大切そうにケーキの箱を運ぶ一人の男が歩いていた。

その男に付いていくように、後から追いかけるレジ袋を持った男。

二人の表情はクリスマスに飲食物を持ち歩くとは思えない程、何処か追い詰められているようだった。

それもその筈、12月28日には焦柄こがれづか偉滝いだきは一か八かの手術を受ける。

成功してもその後はろくに行動できず、例え偉滝がその後何日生きようと、意識の有り食事や会話が出来る偉滝に会えるのは今日が最後だと言って良い状況だ。

前述した通りクリスマスは家族と過ごすものだが、不運なことに偉滝の両親は海外に行くことも多いデザイナーであり、24日のクリスマスイブのビデオ通話を除いて、満足に会うことは出来なかった。

早くても明日の明朝になるという。

現在時刻18時30分。

外川そとがわ信光のぶみつ宮古みやこりつは、焦柄偉滝の居る病院へたどり着いた。

両親が来るまで一泊する許可は事前に得ていた二人は、そのまま病室へ向かう。


「偉滝、入るぞ。」

一人しかいない故、寂しい雰囲気の漂う病室の窓際。

将棋の歩を握りしめた一人の少年が、白い瞳を二人へ向ける。

「ケーキとジュース、持ってきたぞ。」

「うん。ありがとう。」

以前までの大声で返事していた姿は見る影もなかった。

「前に言ってたろ?サンタが乗ってるケーキ食べてみたいって。」

「そうだっけ。」

小さく笑う偉滝に対して、外川は相変わらず張り詰めた表情のままだった。

「ニ年くらい前に言ったよ。何でも願い叶えてやるって息巻いたのに、まさか5月にクリスマスの物ねだられるとは思わなかったな。」

静かな病院の夜につられて、外川は少しずつ少しずつ現実に飲まれていくのを感じていた。

そんな暗い雰囲気の中、律の開けた炭酸が悲しく通り過ぎていく。

「あんま砂糖摂らせ過ぎるなって言われたからな、ちゃんとゼロカロリーのコーラを買ってきた。飲めるか?」

「ありがとう。」

コップを持つ手が震えているのを見て、律もまた深く現実へ沈んでいくのを感じていた。それを振り払うように言葉を急いで紡ぐ。

「クリスマスさ、外川が提案したんだ。普段カッコつけてるけど、やっぱちゃんと偉滝のこと大事にしてんだなって思って…それで、」

自分でも何を言っているか、何を言えば良いのか。

律はそのまま黙ってしまった。

外川もそれを茶化そうとは思わない。

誰も正解を知らない静寂が蔓延していく。


その後も外川と律は短く切れる会話を投げかけ続け、偉滝は少しずつケーキを食べていた。

ショートケーキの四分の一を食べ終えた所で、偉滝は外川と律が居るであろう場所を見る。

「ありがとうね。本当に、ありがとう。悪魔のお兄ちゃん。来れる日は毎日来てくれて。宮古の兄ちゃんに会ったおかげで、僕は海に行けた。ありがとう。」

涙ぐみながら、偉滝は二人にそう伝える。

「辞めろよいきなり。遺言みたいだろ…」

声は弱々しいが、外川は自分の足に強く握った拳を置いている。

そんな事を知りようのない偉滝は、それでも何かを悟ったようにまた小さく笑う。

「でもごめんね、少し眠いや。」

時刻は19時15分。偉滝は暫く目を開けなかった。


「外川、聞いてもいいか。」

「何をだ?」

偉滝を起こさないように、律は外川へ小さく問いかけていた。

「二人はどうやって出会ったんだ?」

「そんなん、今更知ってどうすんだよ。」

「偉滝とお前の事を、もう少し知りたいだけだ。」

電気を消した病室は暗く、遠くの街の夜景が嘲笑うように灯っていた。

それに照らされた律の表情を見て、外川はため息を吐いてから観念したように口を開く。

「俺が小学6年生の頃に、当時一年生だった偉滝に会った。俗に言うガキ大将みたいな奴に目が見えにくい事をイジられて、落書きされたランドセルを俺が偶然見つけたんだ。5歳も離れてるから、大声で威嚇するだけでそいつらは逃げてったよ。『大丈夫か?』って言ったら、偉滝のやつ、当時ハマってたアニメの主人公が現れたって思ったらしい。それから俺のことを悪魔のお兄ちゃんって呼ぶようになったんだよ。引くに引けないしそのまま自称悪魔を貫いていたんだ。俺もそのアニメを見て、できる限り寄せようとしたりもした。近所だったから、外で会うこともあったんだ。そうやって俺が主人公になりきってたら、当時だから…中2のクラスメイトに拡散されて、そのままネタにされて虐められて。気づいたら偉滝以外の友人は居なかった。それでも、偉滝が好いてくれる自分を否定したくなくて、いつの間にか無意識でも主人公を演じるようになったんだ。その1年後に偉滝の目が完全に見えなくなって、虐められてた事も拍車がかかって不登校になって、当時の養護教諭の紹介でこの学校に来たんだ。後はお前の知ってる通りだよ。」

語り終えた外川は、『なんか自分語りになっちまったな』といって照れくさそうに笑っている。

「俺、ココアでも買ってくるよ。」

そう言って律は、財布と携帯を持って病室を後にした。

変化が起こったのは、それから7時間と30分後。

午前3時半の事だった。


外川は何かに揺すられて目が覚めた。

隣を見たが律の姿はなかった。

寝ぼけた目を擦って正面に向き直ると、偉滝が起きて外川の方を見ている。

「これ、返すよ。」

偉滝が差し出した手には、将棋の歩が握られている。

「多分だけどもう必要ないから。」

「何言って──」

「一歩一歩進む歩で、友だちの『と』。そう言ってくれたよね。今でも覚えてる。」

偉滝の顔には諦めが色濃く現れ、それにつられて肌色は消えていく。

「4年も前だぞ。よく覚えてたな。」

「忘れないよ。死ぬまで覚えて、その時に返そうって決めてたもん。」

「今から死ぬみたいな事言うなよ。返さなくて良い。」

偉滝はその言葉に逆らって腕を下げようとしない。

「知ってたよ、僕のせいで…友だちできなかったんでしょ?だから、僕のせいでなくなった物を、一歩ずつ、『』り戻してほしいから。」

外川は何も言えなくなってしまった。

理解してしまった、今日が峠なんだと。

外川はその震える手を強く握りしめて、駒を受け取った。

「ごめんね、今まで。甘え続けて。」

「辞めてくれ。」

「もう大丈夫だよ。」

「俺の今までを否定しないでくれ。」

「ねぇ、悪魔ってさ、人が死んじゃう時どんな表情してるの?」

偉滝は前かがみになった外川の顔に手を当てて、そう呟く。

「そんなん…ニヒルに笑ってるに決まってるだろ…」

「じゃあ、信光のぶみつ兄ちゃんは嘘つきだ。」

落ち葉が水面に落下するように、その細い腕はベッドに落ちて、跳ねた水滴は零れ続けた。

午前4時。白い太陽は顔を覗かせ、外川の心情を裏切るようにその日は晴れで、

ベッドには冷たい雪が降り積もっていた。


12月28日

本来なら手術室に入っている筈の偉滝は、狭い箱に入っていた。

早めに行われた葬式には、両親と外川と律。外川ですら会ったことのない親戚が数名来ていた。

何処か居づらくて、現実感のない現実を受け止めれず外川は外に出て塀に背中を預けて座っていた。

そんな外川に、一人近づく影があった。

「大丈夫かい?」

声を掛けられ顔を上げると、声の主は偉滝の父親だった。

「はい。すみません。辛いのは御両親ですよね。」

「良いんだ、私たちも信光君は偉滝の兄だと思っている。それに人の死を悲しみ、追悼するのに権利も立場も有ってはいけない。」

偉滝の父はそう言って外川に手を差し伸べる。

「あと、偉滝からの伝言だ。自分で言うのは恥ずかしかったんだろうね。」

あの晩に言っていたことをまた思い出して、外川は泣きそうな目で受け止める覚悟を決めた。

「大好きだよ。だそうだ。」

「そう…ですか…」

愛情と悲しみと感謝が、主人公であり続けようとき止めてそれらの感情が一気に流れ出て、外川は嗚咽混じりに泣いていた。

「君と、彼のおかげだよ。私たちも、偉滝の気持ちを知ることができた。」

その言葉の意味を外川信光が理解するのは、律の通話履歴に午前3時20分に、偉滝の両親に電話をかけていたのを発見した時だった。

道半ばの雪華草は、種をまいて散った。

裏話というか、愚痴というか

基本私スマホで書いてるんですが、指が太いんで誤字が多くなるんですよね。だから最近はパソコンで書いていたんですよ。そしたらエンターキーを押すとたまに、カーソル?なんて言えば良いんでしょうか?書いてる場所が上に上がっていく謎現象が発生して、前回それで『10』という字が変な所に出ていました。

改行もスマホとパソコンだと横幅が違うのでスマホのときだと変な場所で区切っちゃうんですよね。

あと今回しんみりしてる話なのに、外川の『辞めてくれ』のセリフを書いてる時に予測変換で『やめてクレメンス』って出てきて小説の世界から強制ログアウトさせられました。ここまで普段の自分の言葉遣いを呪った事はありません。


まぁそんな事もありましたが、無事に1年生編が終わりましたね。

初めて本格的に小説を書き始めたのが11月なので、もう9ヶ月経ってる事になるんですね。

読みやすくなってたら幸いです。

次回は多分少し先になりますが、時系列では♯1の後になる予定です。大まかな流れは決めていてもライブ感で書いてるので変更はよく起こります。そして未来の自分がそのせいで設定変更をしたり構想を変える日々です。

えぇ最後に、偉滝が危ない状況の時に海外で仕事すんなやとか、外川と一対一にしたいだけのご都合展開とか思わないで上げてください。R a bit君が可哀想です。

手術を見守るために仕事を纏めて終わらせていただけです。トラックに跳ねられて神様から神を上回る程の力貰うよりは整合性有りますからね!?


次回♯21,君はどうだ

………の予定です。

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