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君のソナタ  作者: R a bit
1/34

♯1,君の成果

何となくどんな話か知ってもらうためのものなので、別に♯2から読んでもらって大丈夫です。

別作品書いてたらなんか思いついたやつなのでいつ♯2がでるかわかりませんが。


ねぇ、りつ君。努めるの名詞化が努力なら、努力を動詞化するなら正しいのは努力するじゃなくて努めるになると思うんだけど律君はどう思う?


「相変わらず、答えの無さそうな事を考えるな。」


道徳得意だったので。


「残念な事に、あれは非道徳的と言う言葉がある通りに、

世間一般が持つ倫理観や道徳心に反するものは不正解だ。」

俺の前の席に座る少女、黒井心くろいこころはいつの間にか日課になったのか、毎朝毎朝態々後ろを振り向いて風呂に入っている間に思いついたらしい疑問を俺に投げかけてくる。


捻くれてるなぁ。まぁ良いよ、いつもみたいに追々答えよ。


そう言って今日も彼女は、登校してきたクラスカースト上位の女生徒の知り合いの所へ向かっていった。

愛依あい!おはよう。」

「心はいつも元気そうだねぇ。」

逢川愛依あいかわあい、出席番号一番を小中高で取り続けていることをステータスに感じているらしい少女。

金髪に大量のピヤスやらなんやら。

ギャルという言葉の意味を、そのまま形にした人物だ。

彼女との一件は、また別の機会に話すことにする。

ネタバレをするなら、今回の話は俺や心、逢川を含めて五人目になる生徒がキーマンである。

「心、愛依、おはよう。」

虎古もこ!おはよう。」

「また日に焼けたな、部活か?」

橋李虎古はしりもこ。前述した五人目だ。

陸上部所属、日に焼けた褐色肌と男子のように短くした髪型が特徴の少女。

「近々定期的にやってる記録測定があるからね、頑張らないと。」

教室の中心で話し合う3人は、まさにクラスの中心人物であった。内容は知らないが。

因む事ではないが、四人目の生徒。

発目はつめはじめという薄桃色の髪を三つ編みにした丸い眼鏡をかけた少女。

発明部という部活を作り、一人で何やら研究している少し変わった人物だ。

友人が居ないという点では俺と似ている。

因む事ではない。というか、今回の話には一切関係がないのだ。

しばらく外を眺めていると、もうHRの時間らしい。

担任が教室に入り、立っている生徒に着席を促す。

「では、今からホームルームを始める。」

zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz


律君、朝の考えてくれた?


放課後。人の少ない教室で彼女、黒井心は再度俺の所へ来た。

「さっぱりだよ。造語であろうと何だろうと、使われているなら正しい単語なんじゃないか?」

暇だったから調べたが、力を入れて努める事が努力らしい。

もう当人のやる気の違いくらいしかないのだろう。


というか、また授業中寝てたでしょ!

本当に考えてくれてた?


「寝ていたのは確かだが、そもそも授業中に努力という言葉に関して考えることもまた、授業の放棄では無いのか?」


また自分の事を棚に上げて…


「いつか牡丹餅ぼたもちになる事を願ってるんだよ。」

そう言い残し、俺はいつも通りにバイトへ向かった。

いつもと違ったのは、その道中である人物に話しかけられた事だ。


「 」

「 」

「 」

肩を掴まれてようやく、誰かが話しかけてきたのだと気づいた。

後を振り返ると、そこには焦ったような呆れたような、怒ったような…まぁ不機嫌な顔で橋李虎古が居た。

「心から聞いていたが、君は本当に人の声に耳を傾けないな。」

「申し訳ない、話しかけてくる人なんて普段居ないから。」

ぴっちりとした二の腕や脚を露出させ、日焼けしていない白い肌を覗かせるユニフォームを着ていること、夏が近いといえかきすぎている汗ややけに汚れたシューズから彼女が今部活中であるのは明らかだ。

「なんだ。話をするときは人の顔を見ろ。」

女性が男性の目線に敏感というのは、本当らしい。

「いや、部活抜けてきて良いのかなって。」

彼女は陸上部のエースだ、2年生の為1年生の練習に付き合う必要もあるだろうし。

そもそも、すべての行事やテストに一生懸命な彼女だ。

1クラスメイトを見つけただけで、部活を抜け出してくるとは思えない。それに、陸上部の顧問はかなり強面の男性だ。

「あぁ、それは…良いんだ。顧問には体調が優れないと伝えている。」

それが不思議でならないのだが…

「橋李さんが俺に話しかけてきた理由も、それを嘘をついてまでやろうとする理由もよくわからないが…」

心の名前が出た、ということはそういう事だろう。

「ここで話す事では無い。っていう解釈で良いのかな?」


嘘を本当にする為でもあるが、こういう時に行く場所は決まっている。

「保健室に、何か用があるのか?」

「ここ保健室って言うのか、仮眠室だと思ってた。」

ドアをスライドさせるといつも通り、化粧の濃い女性の先生が座っている。

「やぁ、宮古みやこ君。あれ?今日もまた女の子を連れてきたのかい?」

「男の時も何回かあっただろ。」

「相変わらず口調を直さないね。」

そういいつつも、煙草を灰皿に置き、こちらへ向き直った。

「橋李さん、だったよね?怪我はしていないようだけど、カウンセラーを御所望かな?」

「いえ、私も何故矢部(やべ)先生の所に来たのか…」

矢部治美やべおさみ

基本保健室で生徒の治療やカウンセラーを担当している。

美人であり、声も何か落ち着く彼女は一見普通に見えるが

保健室に誰もいないと直ぐ煙草を吸い出すため、保健室内は煙草と、芳香剤とファ◯リーズが混ざった匂いがする。

換気しているから別にいいだろう。といい続けているらしいが、彼女のせいで喘息の生徒達用に第2保健室なんてものができた。

教師でい続けている理由は誰も知らない。

これらの実績という名の前科によって、彼女はヤブ(矢部)医者なんてあだ名がついた。

「例のやつだよ、心から何か聞いてるだろ?」

「あぁ、そういえば。さっき黒井さんがここに来たよ。

なるほどね、また彼女によって面倒事に放り込まれたようだ。」

大きめのデスクを挟み、俺と橋李が隣に座る形で矢部と向き合う。

「じゃあ、話を聞かせてもらおうか。」

橋李の話を要約すると、

最近上手く記録が伸びず、成長していく後輩とどう接したら良いかわからなくなったらしい。

「成る程、対人関係か。」

こちらをチラッと見て、矢部は残念そうな顔をした。

悪かったな、俺が人と関わるの苦手でよ。

「それで、君はここに何をしに来た?」

そう問いかけられ、橋李は面食らっている。

「すまない、少し強い言い方をしたね。

君はその問題を抱えて、どうしたい?

その問題を解消して、何をするつもりだい?」

「私は、またいつもみたいに…皆と笑い合いたいだけです。」

動揺が見て取れる。

「小さな悩み程、完全に終わらせるのは難しいんだ。

簡単に再発するし、時間が解決してしまう事が多い。

それじゃあ駄目なんだ。」

矢部のモットーは解決じゃなく克服。

「君は、なんで今回みたいな悩みができたのか。考えたことはあるかい?」

抗体を作るためにウイルスを注入するのが荒療治で無いように、

矢部にとって、これが正しいカウンセリングなのだ。

「そんなの、スランプってやつしかないでしょう?」

「いや、違うよ。確かに君は今スランプに陥ってる。

でもそれは今回の件の原因じゃあないんだ。」

まるで全て知っているかのように、矢部は橋李へ問いかける。

とうやら、今日解決する問題でも、俺の出番がある訳でも無いみたいだ。

「君はただ…おっといけない。宮古君、君のバイトが始まってしまう。車をだそうか?」

「良いですよ、理由を言えば店長は残業で許してくれるでしょう。」

「そうか、それじゃあまた明日だ。」

今日はそのままバイトに行き、家に帰り寝ることにした。



翌日の朝、いつも通り心は俺に話しかけてきた。


律君。虎古ちゃんの事なんとかなった?


「さぁ、昨日は完全に矢部に任せたからどうなったかは。」

実を言えば、今回の件がどう転ぶかなんとなく俺にはわかっていた。

「俺の推測が正しいなら、今日橋李さんは登校してこないだろうな。」

結果から言うと、俺の推測は当たったらしい。

橋李の姿は放課後になるまで現れなかった。

放課後、俺は矢部に呼ばれて保健室へ向かっていた。

ドアを開けなくても煙草の匂いがする。

どうやら保健室の中には矢部しか居ないみたいだ。

「失礼します。」

案の定矢部は煙草を吸っていたが、

「やぁ宮古君。よく来たね。」

矢部はマグカップを二つ用意して、コーヒーを沸かしていた。

「誰かと面会でもあるんですか?」

「いや、君以外は呼んでいないよ。」

つまりこの二つのコーヒーは俺と矢部用らしい。

長居させる気だろうか。

「宮古君は、今日は確か深夜のコンビニバイトだっけ?」

こういう情報を知られているとイニシアティブを握られてしまうな。

「で、長居させる気って事は。また謎解きでもさせるつもりですか?」

「ハハハ。嫌だな宮古君、まるで私が人の悩みを題材に君と遊びたがってるみたいじゃあないか。」

その通りだ。という言葉は今は飲み込んでおこう。

「じゃあ早速始めようか。」

妖艶に笑い、矢部は新しい煙草を取り出した。

「君のことだ、なんとなくはわかっているんだろう?」

「なんで記録が伸びないのか、何故今日学校に来ないのかぐらいだな。」

俺にはこれしかわからないが、矢部はきっともう何もかも暴いてあの日に橋李から聞き出したんだろう。

「じゃあ聞かせてもらおう、君の推理を。」

「まず前提として、橋李は誰かから嫌がらせかストーカー被害に遭っている。」

「ほう、何故そう思った?」

以前似たような事が有ったから、なんとなくではあるが…

「橋李のユニフォーム、多分サイズがいつもより小さかった。」

「君は、意外と男の子なんだな…」

何か誤解を招いているな。

「橋李は結構日焼けしているが、あの日のユニフォームは明らかに日焼けしていない肌が出ていた。おそらくいつものユニフォームが無く、一年や中学の物を着ていたんだろうなって。」

「まぁ、それは正解だが…」

軽蔑を含んだ眼差しだ。心外だな。

「シューズもスパイクじゃなかった。あれは多分登校用だ。」

「そうだな、彼女は何者かによっていつものは持ってこれなかった。」

なら、もう今回の件は完結だな。

「それにストレスが溜まって記録が伸びず、ストーカーにしろ虐めにしろ、犯人を探す必要がある。今日登校してこなかったのはそれが理由だろう。」

俺は荷物を持ち、椅子から立とうとすると

「少し待て、今回の件はそこまで簡単じゃあないぞ。それと折角入れたんだからコーヒーは飲んでいけ。そして洗ってくれ、私の分も。」

「そんなこと言っても、他に何かあるのか?」

コーヒーを一口飲む。

うん。ちょっと酸味が強いが美味いな。

「ヒント1、彼女が部活を途中で抜けたのは今回が初めてじゃ無い。」

それがなんだって言うんだ。体調不良で通るならそら何回かは休むだろう。

「ヒント2、もし橋李さんじゃなく、君が彼女の立場なら多分途中で抜ける事は出来ない。」

「顧問が橋李に良くない感情を抱いて、顧問が彼女の所持品を盗んでいた。とかか?」

「君はそういうのが好きなのか?誘うときがきたら考慮しておくよ。」

スルーしておこう。

気まずくなったのか、矢部は咳払いをしてコーヒーを飲んだ。

よく見ると砂糖とミルクを足しまくっている。

「ヒント3、これが重要な事じゃなければ君を帰すつもりは無かった。」

あぁ、成る程そう言うことか。

「ひな祭りか。」

「随分遠回しだな。君らしいといえば君らしいがね。」

腐っても大人。それぐらいの気遣いはできるらしい。

いや待て、じゃあ心はなんで俺に相談するように橋李に言ったんだ?

「君はおそらく、何故黒井さんが(以下略)って思ってるだろう?それも含めて考えてみてよ。」

「ストーカーから守るため、とかか?」

だとしたらもっと屈強な男に頼んでほしいな。

「それを君に期待しないだろ、笑わせないでくれ。」

ヒーヒー言いながら矢部は笑う。

俺に気遣いはないらしい。

「ひな祭りはただの口実で、実際は別の理由があるってことか?」

続けてくれ。と言わんばかりにニヤニヤしながらこちらを見る。

確かに、ストーカー被害にあったにしてはあの格好で一人で歩くのはそこそこ勇気がいるだろう。

「ヒント4、彼女は今まで途中で抜けたときは早退している。」

本気で体調不良。は流石にないか。

スパスパヤニ吸いやがって。

考えている俺の姿が面白いのか、矢部は既に3本目の煙草を吸っている。

私物が盗まれたにしては、教師に相談はしておらず、

体調不良ではないのに早退をする。

それに、心が俺のことを話すって事は、何か心理的な問題だ。

何にでも真面目な性格。

今日は家に…

「質問1だ、橋李は今日自分の家に居るか?」

意表を突かれたのか、矢部は鳩が豆鉄砲をくらったような表情をしている。

「いや、彼女は今日私の家に居る。」

もう分かったかな?と目で問いかけられた。

「回答、橋李の親(多分母親)が橋李の部活に反対している。」

「じゃあ、車を出そうか。ふふふ、君をこんな早く家に入れることになるとはね。」


「車内では吸わないんですね。」

矢部の家まではそこそこあるみたいだが、ヘビースモーカーの彼女らしからぬ程だ。

「ん?あぁ。流石に車を2台買うわけにはいかないからね。」

教室もそうだろ。運良く空き教室があったから良かったものを。

そのまましばらく彼女の少し荒い運転に揺られた。


「着いたよ。」

そこは一人暮らしが住むにしては大きめの家だった。

「まぁここから先は若人の時間だよ。

大人の私が少年少女の青春を妨げてはいけないからね。」

内ポケットから煙草とライターを取り出し、少し離れた緑地においてあるベンチに座って煙草を吸いだした。

「あの、鍵がないと…」

いい終わる前に矢部は何かを投げてきた。

「合鍵だよ、好きにすると良い。」

ご丁寧にリボンがつけられている。

少しよれて汚れていることから、随分前から準備していたのだろう。

家の中に入ると、橋李がリビングに置かれたソファーに座ってテレビを見ていた。

まだバラエティーの類はやっておらず、本当に興味があるのかわからない情報番組をつけている。

「橋李。」

予期せぬ来客にかなり驚いた様子だ。

よく見ると随分ラフな格好をしている。

出来るだけこれ以上見ないように、上に取り付けられた時計を眺めながら問いかける。

「少し話さないか?」

「だから、話すときは目を見てよ。」


「矢部先生からどれくらい聞いたの?」

言いにくい話題だろうに、他人に言うことは自分がすべきという事だろう。ちゃんとこっちを見ている。

「あの人はこういう時は、俺に当ててもらおうとするから。多分俺に聞かれたくないような事は知らされてないよ。精々、何故部活を早退するのかぐらいだな。」

「そっか。」

安心したのか、表情が少しほころんだ。

「橋李は、どうしたいんだ。」

「宮古君も同じこと聞くんだね。」

そういえば、これは矢部がよく言ってる言葉だったな。

「私は部活を辞めるつもりだよ。」

女性は生まれながらにして役者。

理由を知らなければ完璧な笑顔でそうつぶやく。

「それは、親の為か?お前の為か?」

少し話を急ぎすぎたな。でも、早めに終わらすに越したことはない。

「言い換えよう。お前の価値は親の価値観でしか決まらないのか?」

「なんで…そんな事聞くの?」

笑顔に影が差す。

「母親に言われたんだろう。もっと勉強しろとか、恋人を作れとか。」

図星らしい。

既に笑顔は崩れ、ぎこちなく表情筋が痙攣している。

「でも、私だって」

「努力してきた。か?」

遂に彼女は目を逸らして俯いた。

「じゃあ、どうすれば良いの?

部活は後輩が私に憧れてくれてるから易易と辞められないし、

勉強に専念するって言っても、私はスポーツメインで進路を決めるつもりだった!」

クレッシェンドをつけられたように、彼女の声量と語気が強くなる。

「筋肉つけて、日焼けしても走り続けて、髪も短くして!

お母さんの思う理想の女子から離れても!私は誇りをもってた!自信をもって走ってた!」

泣き出しては涙を拭い、顔をグシャグシャにしながら話す。

化粧してないのか。

「私はただ!お母さんに、頑張ってって!そう言って欲しかった!認めて欲しかった!!」

なんてことはない、価値観の違い。

親は橋李に女性として、女性らしく生きてほしくて。

橋李は自分の好きなことを、自分らしく生きたい。

「なのに!お母さんは…可愛らしく、女の子らしくしてって!私は…」

泣きつかれたのか、彼女はため息をつき話すを辞めた。

「橋李は、橋李虎古という人である前に、両親の娘だ。

言うことを聞くことも親孝行だろうし、自分の道を見つけることも悪いことじゃない。

女性として生まれたのも橋李の持って生まれた個性で、何年も周りの目を気にせず努力し続けたのは才能だよ。」

「じゃあ、私は…お母さんになんて言えば良いの…?」

「ーーーーーーーーーーー」



で?どうなったの?


「ん?あぁ橋李の事か。」

深夜ではあるが、心の家からかなり近いらしく、彼女はよくこのコンビニの近くの公園に気晴らしに来ている。

今は俺も休憩時間だった。

「助言は可能な限りしたよ。」

あとは、橋李がどうしたいのかだ。


そっか。ちなみに、努力については考えてくれた?


「そうだな、努力は案外才能の名前なんだろうな。」


才能?


「握る力が握力なんだから、努める力が努力なのかもなって。

今回の一件でそう思ったよ。」

そういう意味では橋李虎古という人物は、誰よりも天才なのかもしれない。


同刻橋李宅

彼女は自分の母親に思いを伝えていた。

「お母さん、ちょっと良いかな。」

両親は共働きで、母親はいつも疲れた顔をしている。

「何?どうかした?」

母親はスマホを見ながら相槌を送る。

「私、部活続けたい。お母さんが私に思ってくれてる事も、正しいと思うし。ちゃんと考えてくれてることも嬉しい。」

でも、と彼女は続ける。

母親はもうスマホから目を離していた。

「走る私が一番、私らしく生きれるってそう思う。

女の子に生まれたからってその通りだけに生きたくない。」

「最近元気無いなって思ってたら、そんな事考えてたの。

良いのよ、誰かの価値観で生きなくて。生きることを好きになれなきゃ成功は出来ないわよ。貴女とお父さんのお陰で私は働きながら暮らせるんだから。」

次の日から橋李は学校に来て、部活を最後までやるようになった。


「 」

「 」

「 」

肩を譲られ、誰かに声を掛けられた事に気づいた。

「宮古君!無視しないでって。」

「橋李か。最近元気そうでなりよりだよ。」

お礼を言うにしてはやけに日付が経っている。

「3日間も無視するのは酷くない?」

どうやら3日間も話しかけられたことに気付けなかったらしい。

「お礼言いたくて、ちょっと良い?」

渡り廊下から階段へと移動し、人気のない所についた。

「ありがとうね、今回は。宮古君の事、てっきり人に興味ないスカした人だと思ってた。」

なんだ?喧嘩か?

「あの言葉のおかげだよ。ありがとう。」

本当にそれしか用がないのだろう。

彼女は足早にそこを去っていった。

「で、心はそこで何してるんだ?」


バレちまってはしかたねぇ。


「怪盗か何かなのか?」


冗談だよ。

ねぇ、律君。虎古ちゃんになんて言ったの?


「別に、特別変な事は言ってないよ。」

そう、何も特別な事は言っていない。

「大人は若人の青春には関与しちゃいけないらしい。」


何それ?


「どっかのヤニカスの受け売りだよ。」

君の成果は君の成れの果てじゃない。

自分が選んだ道を疑ってはいけない。

好きに生きる彼女は誰よりも女子だった。

だから当然の一言だった。

自分が走りたい理由をちゃんと伝えればいいと。


彼女の走る理由をここで綴るのは、少し先の話のネタバレと少し前の話に関わる為、あえて書かないことにする。

私が信仰する方の言葉を借りるなら、

趣味で書いたものです。

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