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第12話 聞きとうない!

 










 起爆間近の不発弾が、スキップをしながら近づいてきやがった。

 俺の心境は、まさにそれだった。


 できる限り接触しないようにしようとしていたのに、なずぇあっちから近づいてくるんです!?


「ふう、今日はさすがにいろいろあって疲れたわ。さあ、もう寝ましょう。こっちに来なさい」

「なんで俺のベッドに勝手に入り込んでんの? 帰れって言ったんだが?」


 スタスタと歩き、我が物顔でベッドに上がる舞子さん。

 いや、この屋敷は舞子さんのものだから、我が物顔であることが間違いではないのだが……。


 彼女の衣装もマズイ。

 先程のドレスでも露出度が高かったのに、今のスケスケのナイトドレスは扇情的にもほどがある。


 激しい起伏のなまめかしい肢体はもちろんはっきりと浮かび上がっている。

 目を凝らせば、もっと中身も見えそうだ。


 そんな妙齢の美女が、ベッドに上がって自分をいざなっている。

 思わずフラフラと吸い寄せられそうになるが、俺の鋼の素晴らしい格好いい精神力で踏みとどまる。


 ……トラップだ!


「奴隷ちゃんには毛布を上げるわ」

「奴隷であるこの身に毛布を……ありがとうございます」

「いいのよ。私も元奴隷だし、あなたたち奴隷を迫害するつもりなんて毛頭ないわ。そこは、この世界に飲み込まれていないのよ」

「おい、勝手に二人でほのぼのするな」


 俺が必死に耐えているというのに、奴隷ちゃんが仲良くなりそうだった。

 篭絡されるな、騙されるな。


 舞子さんはそこそこ腹グロだぞ!


「あら、混ざりたいの? 百合の間に挟まる男は殺されるわよ?」

「百合じゃねえだろお前ら。別に挟まりたくもないわ。……え? 殺されるの? 急に不安になったんだけど?」


 俺が本当に挟まりたがる男なら敵意を向けられるのもわかるけど、全然そんな気持ちがないのににらまれるのは納得できない。

 しかも、敵意どころか殺意なら、なおさらだ。


 どれだけ過激派なんだ、そいつら。


「ほら、私が添い寝してあげるから、さっさとベッドに来なさいな。今更恥ずかしがるような間柄じゃないでしょう」


 ベッドをポフポフと叩く舞子さん。

 おい、その言葉は止めろ。


 明かな誤解を招く。


「マスター?」

「ま、待て。俺には舞子さんが何を言っているのかさっぱりわからないんだ。だから、その目でにじり寄ってくるのは止めてくれ」


 目のハイライトを消してじりじり近寄ってくる奴隷ちゃんに、主人であるはずの俺はビビりまくりだった。

 おい! 奴隷としての猫かぶりがとれかかっているぞ!


 ここ、舞子さんもいるんだからちゃんと演技しとけよ!


「いいから、さっさと寝る」

「ぐぇっ」


 強く舞子さんに腕を引っ張られ、自分の意思とは関係なくベッドの上に転がる俺。

 つ、強い。


 雌ゴリラかな?

 下手人である舞子さんは、俺を上から見下ろして何とも言えない顔をしていた。


「……別に鍛えていない私に抑え込まれるってやばくないかしら? もうちょっと鍛えたら?」

「嫌だ無理しんどいだるい」

「さすがです、マスター」

「どこにさすが要素があるの?」


 鍛錬を含めた激しい動きは、できる限り避けないといけない。

 俺の身体が受け付けないからな。


 ニート上等。

 呆れたため息をつく舞子さん。


 しかし、俺からも小言を言う必要があった。


「というか、本当に俺らの部屋に来るのはマズイから控えろよ。当主が客人の男の部屋に、夜中侵入するなんて、悪い噂しか立たないだろ。あんた、家の中でも敵はいるんだろ?」


 俺と奴隷ちゃんの推測では、内通者がいる。

 そんな奴らの餌になるようなことをするべきではないと思うのだが……。


 もちろん、そんなことは俺に言われずとも舞子さんも分かっているだろうに。


「ええ、それは承知の上よ。でも、こうすることが、一番私の身の安全を確保できるのよ」


 コクリと頷いた舞子さんは、じっと見つめてくる。


「スタルト家の内部によろしくない存在が紛れているのは、あなたも気づいている?」

「まあな」

「仕方ないわよね。彼らからすれば、ぽっと出のどこの馬の骨とも知れない私が、今やスタルト家の頂点である当主ですもの。名家に相応しくない、元奴隷のアバズレのくせに。そう思うのも無理ないわ」


 い、言い過ぎでは?

 自分で言っているから余計に質が悪い。


 確かに、元奴隷の……どうかはさておき、外部の人間がいきなり名家と称される家の中に入ってきて、今ではトップに君臨する。

 ずっと内部にいた人間からすると、面白くないのは当然だろう。


「い、いや、そこまでは思っていないんじゃ……」

「直接言われたもの」

「ひぃっ」


 舞子さんにそんなことを!?

 自殺志願者か!?


 そんなにも直接悪意をぶつけることができるということも、俺には理解できない。

 だいたい、心の中で罵詈雑言を吐き散らして終わりだから、俺。


「ちなみに、その人は?」

「……うふっ」

「ひぃっ」


 魅力的な笑顔を見せてくれたが、その暴言を吐いた者の末路は想像できた。

 そりゃそうだ。舞子さんが黙ってやり返さないはずがなかった。


 しかし、怖い。

 舞子さん、怖い。


「と、まあ、そんなわけでどうしても今の私の立場が気に食わないという者もいるのよ」

「えーと……」

「ここまで聞いたら、分かるわよね?」


 嫌じゃ嫌じゃ!

 聞きとうない!


「私の命を狙っている殺害予告の犯人、スタルト家の内部犯よ」


 内通者どころの話じゃなかった!

 どうなってんだ、この文明レベルの低さ!




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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~


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