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【書籍化・コミカライズ】自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた  作者: 溝上 良
最終章 自分を押し売りしてきた奴隷がドラゴンをワンパンしてた編
110/124

第110話 滅び

 










「……え、なにこれ?」


 ポカンとするブレヒト。

 目の前で殺そうとしていた男が爆発四散したのだから、唖然とするのも当然だろう。


 いや、別に死んでくれるのは構わない。

 殺そうとしていたのだから。


 だが、どうやって死んだのか?

 身体機能は凍り付かせていたし、怪しい動きもなかったはずなのだが……。


「ま、まあ、いい。結局死んでくれたことには変わりないんだからな。じゃあ、次はお前らだ」


 あまり事態を飲み込めないが、自分にとって都合の悪いことが起きたわけではない。

 そのため、気を取り直して動けない響と愛梨を見る。


 彼女らを殺して、次はアリアトだ。

 自分をうまく利用できたと思い込んでいるようだが、足元をすくってやる。


 ブレヒトの口角は自然と上がっていき……。


「まあそんなに慌てるなよ。リベンジマッチに付き合ってくれ」

「ッ!?」


 背後から聞こえてきた声に、とっさに飛びのいた。

 そこには、何らかの方法で自害したはずの理人が、無傷で立っていた。


 信じられないものを見る目で、理人を睨みつける。


「……なんだお前?」

「一般人だ」

「死んで蘇る一般人なんているわけないだろ」

「いや、まあ死んだわけじゃないんだけどな。致命傷だっただけで」


 苦笑いする理人。

 もともと、自決用の手段は、禍津會の構成員全員が持っている。


 転移者という社会的カースト最下層に位置し、世界に対する報復で大量虐殺を行っている。

 捕らえられたら、ろくでもない結果になるのは言うまでもない。


 そもそも、異世界人に生殺与奪権を与えることなんて、禍津會の構成員なら我慢できるはずもなかった。

 理人もそれを行使したに過ぎない。


 ただ、死ねばそれで最後だから、致命傷を負う程度。

 それでも、一度身体は死んだと錯覚するほどの衝撃を受けたため、ブレヒトによって凍結させられていた力はリセットされた。


 これで、五体満足の状態で戦うことができる。

 いや、戦う必要はない。


 今の理人は……マカの力は、この程度の相手なら、戦いと言うまでもなく圧殺できる。


「じゃあ、死のうか……」

「ッ!?」


 凄まじい歪な邪気のこもった殺気。

 ブレヒトによって死にかけたとしても、理人は彼に対して個人的な恨みも怒りもなかった。


 ただ、この世界の人間である。

 社会も文化も歴史も、リセットするために生きていてもらっては困る存在。


 だから、殺す。

 直後、理人は巨大な氷の中に囚われる。


 ブレヒトの力で、瞬く間に全身を氷漬けにされる。

 だが、無意味なことだった。


「もう効かないよ」


 氷が粉々に砕かれ、中から理人が現れる。

 機能停止させられていた眼を使ったのだ。


 ……なお、効かないとは言っているが、足が小鹿のように震えているのは気づかれていなかった。

 普通に寒い。


「やっとマカの力が俺の身体に馴染んできたみたいだ。あいつの力を、少しくらい引き出せるようになった」


 自分の眼……今まで行使してきた片目とは、また逆の眼を手で覆う。

 マカの力は、片目だけではなかった。


 理人に与えられていたのがそれだけだったのであり、彼女の力を大部分を奪った今、それ以外の力もある。

 それが、もう一つの眼。


 すべてを回帰させる眼。

 傷ついた身体も、瞬く間に修復させることができる、絶大な力を持っていた。


「安心しろ。お前の代わりに、アリアトはちゃんと滅ぼしてやるから」

「ふざけんな! それだと、何の意味もない! 俺が……俺が復讐を……!!」


 怒りを露わにするブレヒト。

 他人に復讐を奪われて、誰が喜ぶか。


 激怒して再び身体機能を停止させようとして……。


「悪いな」


 グチャ、と音が鳴った。

 ブレヒトの身体はひき肉になった。


 二つの眼。

 今の理人にある力は、それこそ世界でも有数のものとなっていた。


「俺からすれば、お前も殺さないといけない対象なんだよ」


 物言わぬ屍となったブレヒトを見下ろす。

 数瞬の後には、すでに彼に対する興味は完全になくなっていた。


 ブレヒトにだけ構っている暇はない。

 一刻も早く、この世界を破壊し、人々の大多数をすり減らし、リセットしなければならないのだから。


「……で、大丈夫か?」

「抱きしめてくれないと無理だわぁ」

「……寒い」


 一応聞いてみれば、響も愛梨も大丈夫そうである。

 と言っても、やはりこの極寒の中、一時的にとはいえ抑え込まれてしまっていたため、疲弊は激しいようだ。


 ならば、一人で成し遂げよう。


「もうちょっと我慢してくれ。とりあえず、アリアトをこのまま滅ぼしてくるから」


 そう言って、理人は消えた。

 その後、たった一日でアリアトという国家は、地図上から完全に消滅し、滅んだ。




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新作です! よければ見てください!


その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~


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