ことの顛末について語る①
誤字報告ありがとうございます。
俺は額に手をあてわざとらしくため息をついた。
「誰を庇うとかそういう事を言っていない。皆が迷惑していると言っているんだ」
「だってアリシア様が意地悪言うんですもの。グスン」
「ああ可哀想にリリー、私たちが君を守るよ」
「ありがとう、みんな」
リリー嬢が目を潤ませ手を胸元で組んで強調するとさっきまで気まずそうにしてたのに鼻の下を伸ばしてやがる。あのあざとさに気付かないのか?
「まぁ!意地悪ですって?!あなたこそ婚約者のご令嬢方に悪いと思わないのっ?」
「お友達と仲良くしてるだけなのにダメなの?そんなのおかしいですっ」
ああ、またまぜっかえされた。
「リカルド殿下こんなことお許しになるなんてどう言うつもりですの?」
「リカルド様助けてっ」
「リリー、私たちが守るよ」
パァンッ!
気が狂いそうになって、思わず両手を打ち鳴らした事で皆驚いて固まった。
「とにかくこれ以上ここで騒ぐのなら学園に申し出て君たちには学食の使用を禁止にしてもらう。皆の迷惑になったことを反省する様に。周りの者ももうすぐ授業が始まるので遅れない様にしてくれ。以上解散!」
それで皆蜘蛛の子を散らす様にいなくなり、四人はまだ何か言いたそうだったけどギャラリーがいなくなった事で口を閉じた様だ。
◇ ◇ ◇ ◇
「ううう…、情けない…」
俺は貸し切りサロンの隅で膝を抱えていた。気分が優れないとして授業はサボりでございます。
ううう…とっさに割って入ったとはいえ最後に猫だましみたいなことしか出来ないなんて、これで王族王太子なんて笑われる。
見ていただけなのにロカルトたちも疲れた様だ。
「あれ程話が通じないなんて驚きです」
「普段の我々の苦労がお分かりか?」
警備も誘って労いつつも皆で頭を抱える。
「もう強権を持ってあたるしかないのでは」
ニックの呟きに皆賛成の様だけど俺は躊躇ってしまう。
この世界の成人が早いとはいえ俺的にはあんな奴らでもまだ10代の子供なんだ。
王族の強権を振りかざせばおそらく貴族として死んでしまう。
そう思うとこのまま大きな実害なく過ごせたらと願ってしまう。
次期国王としてダメだろうけど、どうせ俺はヘタレなんだよ。
◇ ◇ ◇ ◇
それから数ヶ月、事態は動いてしまう。
アリシア嬢のソフィーリア嬢への脅しと謀反の疑い発言。茶葉の事、公爵の事もまぁあるか。
それよりも俺の逆鱗に触れた事。
ラノベなんかの読み物だからこそ面白可笑しく後のざまぁでスッキリ爽快なそれ。
冤罪をかけようとしたんだ、三人の婚約者に。
奴らは婚約者にリリー嬢に対しての冤罪をかけ、それを許す代わりに結婚した後有利に立ちリリー嬢を囲う事を黙認させようとした。
リリー嬢を三人で共有する気か?
そしてどこまで意思の疎通があったのかわからないがリリー嬢も自作自演し彼女らに罪を擦り付けようとしていた。
婚約者の令嬢の側で転けて「ひどいです~」と泣きながらにげたり、これまた定番の教科書を自分で破り、噴水に飛び込んで、母親の形見のブローチを壊した。階段落ちは怖かった様で3段目辺りから飛び降りて自分で足を捻ってた。
この怪我でもって三人それぞれ断罪する計画を立てていた情報をつかんだんだ。
自分の為に人を陥れるなんて俺には許せない。
「すべて始末をつける」
俺の言葉に側近一同頷いた。
◇ ◇ ◇ ◇
「リカルド殿下っ、どういう事ですか?!」
教室を移動中の渡り廊下。大勢の生徒の間をぬってあの三人が血相を変えてやってきた。
すかさず護衛が間に立ち塞がったのを留めて何食わぬ顔で向き合った。
「挨拶もなしに何の用だ?」
「それどころではありませんっ、我らの婚約が破談になったのです!」
この言葉に周りの生徒が興味を引いて足を止めさせた。
「それが私に関係あるのかわからないがこの様な所で話すことではない。授業もあるし放課後にでも時間をつくって聞いてやろう」
「そんなの待てません!」
「っ!」
「お前たち兄上にどれだけ不敬を働く気だっ!」
側に控えていたニックより早く廊下の先から声が聞こえ護衛を従えたロカルトが足早にこちらに来た。
「いたのか、ロカルト」
「ええ、教室を移動していたらその三人が慌てていたのが見えまして行き先が兄上だと気付きましたので後を追いました」
言葉を交わす俺たちが呑気に思えたのか焦れてさらに喚きだした。
「我ら同日に実家に呼ばれまして先方から我らの有責で婚約を破棄されたと告げられたのです!」
「婚約者に訳を聞こうにも学園を暫く休んでいる様子」
「リカルド殿下から側近を外された事を聞き、それが原因と思い訳を聞きに来ました!」
こいつらギャラリーがいないと話が出来ない病気かな?
わざわざ恥をかくことないのに、まぁそっちが望んだんだ答えてあげるが世の情けってヤツだな。
「確かに先日側近候補から外す旨をお前たちの実家に国王陛下を通じて通達した」
「では…」
「ああ正確に把握してもらいたいのだが、お前たちは側近候補だったんだ。側近だった事は一度もない」
ありがとうございました。