ことの顛末について語る④
「わたくしのせいですって?」
信じられない様で俺と公爵を見比べて公爵が僅かに目を反らした事に気付いた。
「お父…様…?」
「君が幼い頃からやらかしていたのを尻拭いし続けて、ここ数ヶ月より活発に動いていた君のフォローをする為、中毒に成る程お茶を飲みながら奔走していたはずだ」
多分数ヶ月前にヒロインが入学してシナリオが始まったんだろうな。彼女の中で。
思ってもいなかった事に放心しているアリシア嬢をおいて今度は公爵に話かけた。
「娘可愛さに王太子に嫁がせたかったのだろうが、生憎アリシア嬢は私を嫌っている。私への暴言の数々は皆の知るところだ。しかも私を廃嫡させると言う様な謀反ともとれる発言を私とロカルトも聞いている」
これにロカルトは強く頷き、公爵は苦し気ながらも目を見開き顔色をさらに悪くした。
「婚約者候補を辞退して欲しい。この事は国王陛下にも了承を得ている。受け入れてくれるならば今回の件諸々厳重注意に留めよう」
俺の言葉に力なく頷き目を閉じた。
医師とともに公爵を安静に運びだし、未だ放心状態のアリシア嬢が無意識に付き添って部屋をあとにした。
最後の方は黙って成り行きを見守っていたロカルトとニックは複雑そうな表情でそれを見送っていた。
綺麗事だがこれからは現実に目を向けて生きて行って欲しいと願うばかりだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「いやぁ~、終わったなぁ~」
ソファーの背にもたれて伸びをする。
いやぁ、長かった。政情の柵云々で今までかかったけどやっと片付いた。
あとは今回裏で大分動いてもらった父上にだされた条件をなんとかしないとなぁ、気が重い。
こういう時には然り気無くニックがハーブティーでも入れてくれるのに今はそれがない。
不思議に思い伺うと何故かロカルトと二人顔を寄せていた。
「なにやってんの?」
「いや…あの」
躊躇いながら先に口を開いたのはロカルトだ。
「僕は正直シュワイツ嬢を隠れ蓑に公爵が暗躍していると思ってました」
「私もです。でも証拠が見付からずうまく隠していると思っていました」
うーん、これは公爵を過大評価してるというよりも自分たちの能力が高いから複雑に考えてしまったって事かな…?
「お前たちの考えだと公爵の人柄と矛盾してるだろ?ニックが調べてくれた公爵は甘やかされて楽な方に流される人物。高位貴族らしくプライドは高いけどそれだけだ。アリシア嬢に振り回されて尻拭いするのが精一杯でよかれと思って結んだ俺との婚約者候補も娘はロカルトの方が良かったって迂闊過ぎだろ?」
「僕たちは難しく考え過ぎてたんですね」
なんか二人とも見えない耳としっぽがしょんぼりしてるな。
「でも二人が注意してくれてたから茶葉に含まれてるナツメグのことにも気付けたんだし、ありがたかったよ」
そう俺は前世の記憶があって平和ボケしてるからか深慮遠謀は苦手なんだ。次期国王として足りないものが多すぎる。
だからこそロカルトやニック、側近たちを頼りにしてるしもっと大切にしたい。
「これからも頼りにしてるからな!」
ニッカリ笑顔を向けると余計ふて腐れた。なんで?
「人たらし」
どちらともない呟きは俺に聞こえなかった。
ロカルトはソファーに座り直してニックにお茶を頼みながら不満をもらした。
「でもよかったんですか?あれだけ彼らから風評被害を受けていたのに、罰が軽すぎるように思うのですが」
「いいよ、側近候補だった三人はこれから人の下につかなきゃいけないんだ、相当苦労するだろうし、リリー嬢は言わずもがな。アリシア嬢だって俺の婚約者候補じゃなくなった上に今までの行いが酷すぎたんだ。嫁ぎ先がみつかるか怪しいくらいだろ?」
俺もニックからお茶を受け取り一息。
「それにリリー嬢以外は国の重鎮方の家の人間だからな。貸しを作ったってことで落着でいいよ」
これで納得してくれたかなと思っているとニックが俺的爆弾をぶっこんだ。
「それでは殿下のご婚約者はソフィーリア・タンゼン侯爵令嬢ということで決まりですね」
「ああそうですね。兄上のお役に立ちたいとあれだけ健気に頑張っておられたのです。兄上もまんざらでもないのでしょう?」
「ゲフン、ゴフン」
あー、お茶が喉につまった!
そう、だから苦しくて顔が熱くなってるんだ!
決して照れてる訳ではないんだからなっ。
そこの二人、ニヤニヤしない!
くそっ、実は父上に出された条件もこれなんだ。
いい加減腹をくくって婚約者を決めろと。
思い込みの激しい奴らに振り回された長年の乙女ゲーム系の問題は解決したけど、この問題はこれからの人生を左右する大一番。
まずはソフィーリア嬢にプロポーズから。
気合いを入れて臨む決心をする俺であった。
[完]
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