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エピソードエレン  作者: 暁辰巳
9/22

試験を終えて



 目を覚まして最初に感じたのは、柔らかい感触だった。

 ふわふわして気持ちいい、オレ愛用の枕に近い感触だ。

 そしてどこからか、いい匂いがしてくる。


 「気が付いた?」


 目を覚まして最初に目にしたのは、ユイさんの顔だった。

 視界が徐々にハッキリしていき、ユイさんの優しい微笑みが目に映った。


 「―! うあああああああ!」


 ユイに膝枕をされていた事を知ったエレンは、顔を赤くして大声を上げながら慌ててユイから距離をとった。


 「痛いところはまだある? もしあるなら遠慮なく言って」


 「い、痛いところ?」


 ユイが言ったことに、エレンは訳が分からずちょっとの間頭が混乱するが、

 模擬戦のことを思い出して、エレンはユイの言葉を理解した。


 「い 痛いところはもうないです」


 「そう? ならよかった」


 「そ それより」


 「それより?」


 「どうしてオレが ユイさんの膝で眠って」


 「膝枕のこと? エレン君を治療するためには安静にする必要があったの。

  安静にした後、私の回復魔法で治していったのよ」


 ユイの合成魔法を受けたことをエレンはふと思い出し、自分の体の違和感に気づいた。

 ユイの合成魔法を受けて大ダメージを負ったのに、

 まるで、何事もなかったかのように綺麗に治っている自分の体を確認した。

 

 「それよりエレン君 ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


 単刀直入に聞くかのように、ユイはエレンに言葉を放った。


 「な…なに?」


 「模擬戦の最後に強力な魔法を放ったのは覚えてる?」


 摸擬戦の最後に放った魔法を尋ねられ、エレンは少し困惑する。

 無論。エレンは模擬戦の最初~最後までよく覚えている。

 エレンにとって、師である(エリナ)以外の魔法使いとの対戦が初めてだからだ。


 「覚えているよ。最後に放った魔法が、残った魔力を全て込めて放った中級炎魔法(フレイムブラスト)くらい」


 最後に放った魔法を尋ねられ、エレンは馬鹿らしく思う。

 エレンにとって、最後の悪あがきで放った魔法を聞いてなんになるとたかをくくっていた。

 しかし、ユイが注目しているのは最後に放った魔法自体ではなく、魔法に使ったエネルギー(・・・・・)である。


 「最後に放った魔法に “生命力“を使ってないでしょうね?」


 ユイの言ったことに、エレンは は?っと思った。

 エレンにとって、『生命力』という言葉は初めて聞いたし、魔法を使うために消費する『力』自体は魔力しかないからだ。


ーーーーーーーーーーー


 ユイは模擬戦最後の事実を説明した後、生命力について説明しだした。



 「生命力っていうのは、生物(私たち)が生きている力の源で魔力と対をなす力のこと。

  文字通り。 生命力は命そのものよ」

  


 ユイの説明を聞いて、エレンは生命力というもう一つの力について理解した。

 生命力が、生物の力量と生きていることを示す力のことを。


 「生命力は、魔力の代わりにもなるんですか?」


 ユイの説明を一通り聞き終えた後、何かに感づいたエレンはユイに質問した。



 「察しがいいわね。 エレン君の推測通り、数ある魔法の中には生命力を使うものもあるわ。

  っと言っても、生命力を使う魔法の殆どは禁忌に指定されたものが多いけど」


 「禁忌ってのは?」


 「絶対に使ってはいけない、絶対に触れてはいけないもののこと。

  生命力はある程度使うくらいなら問題ないけど、生命力は魔力と違って取り返しがつかないから」


 ユイの説明を聞いて、エレンは嫌な予感が頭によぎった。

 エレンの不満は顔にも現れていた。


 不満の原因は、エレンの母であるエリナの死。

 エリナは唐突にエレンの目の前で死んだ。

 エレンにとって、突然目の前で倒れて死んだ出来事はエレンのトラウマとなっている。


 「あ! 忘れかけていたけど、試験は合格よ。 まだ子供なのにあそこまで強力な魔法を操るなんて、流石は師匠(エリナさん)の息子ね」


 そう言いユイはエレンの頭を優しくなでた。

 なでられるエレンは照れ顔で『やめて』と言い放った。

 

 グ~~ウ~~



 「取り敢えず町へ戻ろっか」



 二人の腹の虫がなった後、ユイはそう言い、二人は(アウル)へ戻った。


 

 

  

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