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エピソードエレン  作者: 暁辰巳
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経験、初めての友達

 学屋。この町(アウル)に存在するただ一つの教育施設。


 六歳となった子供は皆、学屋に通うようになっている。

 学費は無料。



 「学屋に通う気はない」ッとオレは母さんに懇願したのだが、即却下された。

 「学屋に通わないなら、もう魔法は教えない」っと母さんに強く言われたからだ。

 日々の魔法の鍛錬を生きがいにしているオレにとって、魔法の鍛錬を存続させるため、オレは仕方なく学屋に通わざる負えなかった。

 オレはただ、母さんから魔法さえ学び続ければそれでよかった。魔法だけ極めればそれでいいっと思っていた。

 それに魔法教本を読む為にある程度の文字が読めるようになったから、学屋で学ぶ必要はないと思っていた。

 





 ■



 学屋に通いだした頃、

 「学屋で学ぶ事はない」っと思っていたオレの信念はあっさりと砕けた。


 読み書きで“読み″の部分は大したことはなかったが、“書き″の方が根本的にできていなかったからだ。

 それにこの世界では読み書きだけでなく、学屋では読み書きの他に、算術と歴史の科目もあった。

 母さんと魔法の鍛錬が順調な一方、学屋の勉強はついていくので精一杯で、


 学屋の勉強はいつも大変だけど、家に帰って母さんに授業で分からなかった所を説明すると、

 母さんは勉強が苦手なオレでも分かりやすく、丁寧に教えてくれた。

 だから、大変な学屋の授業をいつでも頑張っていけた。


 学屋では、朝~昼の間だけ授業がおこなわれる。

 一時間目~四時間目。


 授業は一時間に40分、間に20分ずつの休憩が挟まれておこなわれている。

 そして授業になると、それぞれの科目に適している先生に毎回変わっておこなわれる。


  正直ややこしい…。


 ■




 学屋に通う生活は、数ヶ月程たった。

 今日の授業を全て終え、ひと段落下したオレは、カバンを背負って学屋を後にした。

 

 今日の授業もいつも通り頑張ったし、今は昼時なので腹が減っている。

 だからオレは、走って母さんがいる家へ帰っている最中だ。







  

 「ーん?」


 帰っている途中、一瞬だけど微弱な気配を感じた。

 ある程度熟練した魔法つかいは皆、誰とて例がなく魔力や気配を感じ取るようになる。

 魔法使いは皆、“魔力″という異能の力を主に使用し続けているため、探知能力が自然と身に付くらしい。母さんが教えてくれた。

 子供であるオレもその例に漏れず、魔力探知を手にした。

 

 

 このまま真っ直ぐ家に帰ってもよかっけど、

 どうしても気になったオレは、気配を感じた現場である路地裏を一人で入った。


 オレは気配探知に意識を集中し、いつでも魔法が撃てるような体制で路地裏を少しずつ進んでいく。

 路地裏では誰の目にも映らないし、大声を出して助けを求めたとしても助けはこない。

 だからオレは、魔法と探知能力を頼りに進んでいる。


 

 

 


 「魔物め この俺様が退治してやる!」


 慎重に奥へ進んでいると、どうやら奥へ辿り着いたらしい。

 路地裏の奥で起こっているのはいじめだった。


 オレと同じくらいの歳をした男が二人がかりで、

 オレやいじめっ子より年下の奴をいじめていた。



 『やめろお前ら!』

 

 見るに耐えられなくなったオレは、物陰から姿を現して、大声で叫んだ。


 「なんだお前?」

 「魔物の味方をする気かー?」


 いじめっ子二人の視線がオレに向いた。

 いじめっ子の威圧によって思わずビビってチビりそうになったが、オレは強く自信を持って自分を奮い立たせた。

 

 「魔物とか魔族とかオレには分からねえよ! けど、怯えて痛がっているじゃねえか!」


 人族や動物の血が【赤い血】をいるのに対し、魔物と魔族は【蒼い血】をしている。

 いじめられている子の姿はオレやいじめっ子と同じ人の姿をしているけど、血の色だけは違っていた。

 

 例えいじめられている奴が魔物だとしても、

 怯えて涙を流している所を見てしまった以上、ほおって置けなかった。


 「お前、さてはこいつと同じ魔物だな?」

 「お前も退治してやるー!」


 いじめっ子二人は、オレを魔物扱いして襲い掛かってきた。

 

 「ーなんだこれ!?」

 「どこから水を撃って来やがる!」


 襲い掛かってきたいじめっ子二人に、人体に一番無害な水属性魔法でいじめっ子を迎え討ちにした。

 二人の内一人は怯んだけど、もう一人のほうは突進してきた。

 だけど初級風属性魔法『エアル』で押し返した。

 


 その後、オレに敵わないことを知ったいじめっ子二人は「覚えてろよー」っと捨て台詞をはいてこの路地裏から出て行った。




 いじめられていた子は酷い怪我をしていた。

 致命傷や重傷を負っている程の怪我ではないが、見るからに痛そうな怪我だ。

 こういう時、初級か中級の回復魔法で全身の怪我を治せると思うが、オレは回復魔法は使えない。

 

 魔法教本に記されていた情報だが、

 魔法の向き不向きは、生まれた時から決まっている。


 オレは火、氷、地、風、水、光、闇、電の八属性中、

 光を除いた七属性の魔法を使える。(中で火と氷の二属性が得意)

 

 回復魔法は光属性である為、オレには使えない。


 オレは、いじめられていた子をおぶってオレと母さんとオレが住む家に運ぶ事にした。

 母さんなら回復魔法が使えるからだ。


 毎日特訓してきた回もあって、体力の少ないオレでも、肩に背負って運ぶことが出来た。


------



 物陰から出て町中をコソコソ運んでいると、町をパトロールしていた衛士さんに見つかった。

 見るからに怪我している子供を、子供が運んでいるのだから、怪しいのはバレバレだけど。

 

 いじめられていた子の着ていた服の上に、オレが着ていた服を上乗せしている。

 幸いな事に、顔には血が出ていなかった為、

 首から下までの部分は、服を上乗せして、服に染みた血の跡を隠すことができた。


 あのいじめっ子二人のように、

 コイツ(いじめられていた子)が人ではなく、魔族だと人々にバレれば、どうなるか分かるからな。



 衛士さんには嘘をついて誤魔化そうとしたのだが、誤魔化せなかった。

 だけど幸いな事に、コイツの正体が魔族だと衛士さんにバレても、衛士さんは差別をしなかった。


 

 衛士さんはコイツを手当てをするために、大急ぎで詰め所へ運んでくれた。

 詰め所には、回復魔法を使える魔法使いの衛士さんがいるため、もう心配はないとのことらしい。


 

 オレはほっとして、家に帰った。






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