表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エピソードエレン  作者: 暁辰巳
1/22

誕生

 壁町アウル。


 王国と城の壁であり、盾でもある城壁に囲まれた小さな町。


 と言っても、アウルの城壁の大きさは、城や王国の城壁と比べるとかなり小さい。

 精々、三階建ての一軒家分の高さくらいだ。

 

 アウルは伯爵家のお偉いさんが管理する領主地でもなければ、特別な何かがある程、優遇されるような町でもない。


 では何故|ただの小さな町に城壁が設置されている(・・・・・・・・・・)のか、その疑問にお答えしよう。



 アウルから少し離れた南の地には『騎士国ドラゴニア』という王国があり、その国はギラ•ランド•ドラゴニアという王様が統治している。


 ギラは騎士国ドラゴニアだけでなく、この地『ドラゴニス大陸』を所有地としている。

 故に、ドラゴニス大陸にある全ての村と町はダンの物であり、その地に住む人々は全てダンの民である。


 ギラが『最強の人間』として、ドラゴニス大陸を統べる王として君臨した時、ダンはドラゴニス大陸の全ての村と町に、城壁を授けた。


 城壁は騎士国ドラゴニアより遥かに小さいが、それで充分だった。

 何故なら城壁は硬くて丈夫で、並の魔物の侵入を拒むからだ。


 城壁が与えられた村や町の地域には、並以上の力を持つ強力な魔物は生息していない。

 故に村や町の人々は皆、魔物に怯える事もない安全地帯で平和に暮らしている。



ーーーーーーーー



 世界が暗闇に包まれた新月の夜。


 (アウル)のあちこちに設置された街灯魔導機(マギア)から出る光が、夜となった町を照らしている。


 そして静かと化したアウルのある一軒家では、ある奮闘が起こっていた。



ーーーーーー



 ベッドで横になっている一人の女性が大声を上げていた。

 女性は妊娠していて、今日が記念すべき我が子が生まれるのである。


 女性は今戦っているのだ、出産の痛みと。

 部屋には防音のルーンが刻まれていて、部屋から音が漏れる事はない。

 故に女性は、安心して大声を上げる事が出来る。





-----------------------------------------------

 


 長い奮闘の末、女性は無事に我が子を出産した。

 依頼で出産の手伝いをしに来た医師の手助けもあり、女性と赤子は何の支障もなかった。

 

「ふふ。 私譲りの灰色の髪をしているのね」


 生まれたばかりの我が子を女性は優しく抱く。

 女性は我が子を抱きながら窓から夜空を見上げていた。


 新月の夜は、月が暗闇に覆い隠される夜。

 故に新月の夜は不幸や災いが起こりやすい不吉な夜として、世界で不気味がられている。


 だけど女性は新月の夜を見上げても何も怖くはなかった。

 我が子が無事に産まれた事もあるが、彼女はそう言ったオカルト話は、あまり信じない傾向の人だったからだ。


 「...あれは」


 女性が夜空を見上げていると、一瞬だけどありえないものを目にした。

 暗闇しか映らない夜空で、

 一瞬だけ映った小さな光を女性は目にした。

 


 「エレン...。 この子の名はエレンよ」

 

 一瞬現れた光を目にし、今思った彼女は、

 生まれたばかりの我が子に「エレン」と名付けた。


 これから先、

 エレン(この子)は多くの辛い事、悲しい事、の人生を歩む事もあるだろう。

 それは生きる上では当たり前の事、誰だって辛い事は最低でも一度は目にする。


 だけど暗闇の中、

 一瞬だけど現れたあの小さな光のように、この子の生きる未来が、

 光ある未来になるよう意味を込めて、彼女は我が子に“エレン”と名付けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ