閑話 ルシオ・バルマーの独白
僕の名前は、ルシオ・バルマー。つい先日、十一歳になりました!
僕の父親のフレドは国王様の側近。母親のラウラは王妃様のお茶会仲間。兄のラモスはシアン第二王子殿下の側近候補。で、僕ルシオはアスール第三王子殿下の幼馴染で親友ってところかな。
今はそんなアスールと一緒に、アスールが学院入学後に最初に作った友人のレイフの実家に、夏休みを利用して泊まりがけで遊びに来ている。
島ですよ。それも、ごく限られた人間しか上陸が許可されていない島!大っぴらには言えないけれど……ここはとっても特殊で特別な島。
一昨日は海釣りに出掛けた。その日に知り合ったばかりの島の子どもたちと一緒に。
釣りに使う餌については最初はちょっと鳥肌が立ったのは事実だけど、慣れればなんて事ないよね。面白いほど釣れて楽しかったぁ。それでも地元っ子には全然敵わなかったけどね。
それより、僕の魔力属性は “氷” なんだけど、余りにも沢山魚が釣れたのでその魚の鮮度を保つために役に立つんかもと思って、気まぐれに氷を魔力で作ってみた。
そうしたらそれを見た子どもたちが大騒ぎをするから、僕は調子に乗って大量の氷を提供しちゃったよ。
ちょっと魔力使い過ぎた感はあったけど、それはそれ。誰かに喜んで貰えるって、凄く嬉しいことなんだね。
釣った魚は、その日の夜にレイフの屋敷の料理人の指導の元、少しは僕たちも手伝ってオイル漬けに。てっきりすぐ食べられるのかと思っていたのに、翌朝まで待たなきゃダメだなんて……辛過ぎでしょう。
翌朝の食事で出された出来立てのシーディンのオイル漬け。あの美味しさをどうやったら伝えることが出来るのか……。
ちょっと噛んだだけで、口の中で魚の身がほろほろと崩れて、それでいて魚の脂が口いっぱいに広がる。同時にハーブの香りがふっと鼻から抜けていって、それはもう絶品!
自分たちで釣った&料理した魚だと思うと尚更美味しく感じる “特殊付与効果” を差し引いたとしても、これは相当なもの。ほんと、美味し過ぎ。
その日のハイキングで、お昼のお弁当にこのオイル漬けを使ったサンドイッチもあったんだけど、それがまた美味しいのなんのって。
他のサンドイッチも、もちろん毎回提供されるどの食事もとっても美味しいのだから、あの料理人の腕は賞賛に値するね。大袈裟でなく。
そう言えばあの後、下山を始めてからしばらくして、僕たちは一瞬霧に包まれてしまい休憩予定地の泉まで慌てて先を急いだんだけど、少し遅れて到着したアスールとヴィスマイヤー卿の様子がなんだか少しおかしかった気がするんだけど……。
アスールは本当に真面目で努力家。何にでも正面からチャレンジしていく性格で、僕としてはもう少しアスールは気楽に生きた方が良いと常々思っている。
まあ、彼は王家の一員だから、気楽にっていっても無理はあるかもしれないけどね。
何があったかは分からないけど、下山後アスールとヴィスマイヤー卿の関係がちょっと変わったのは事実だと思うね。アスールに壁が無くなったっていうのかな。少しアスールの感じが柔らかくなった。
卿に対してだけじゃなく、この旅行を始めてからいろんな人との出会いが僕たちに良い刺激を与えてくれてるのは間違いない。
さあ、今日はどんな新しくて楽しいことが起きるかな?
とりあえず午前中はまた子どもたちが勉強をしに屋敷まで来るだろうから、お楽しみは午後だね。
山をちょっと入ったところに山葡萄の木があったし、その脇の茂みにあったのは多分ワイルドベリーだよね。
もし間違ってると困るから、食べられるものかどうかレイフなら分かるかな? ああ、子どもたちなら知ってそうだよね。午後は誘ってみようかな。一人くらいは付き合ってくれるよね、きっと。
そしたら……明日のオヤツにダリオさんが何か作ってくれるかも。
楽しみ。楽しみ。
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