閑話 アリシア・クリスタリアの独白
私はアリシア・クリスタリア。十七歳。クリスタリア国の第一王女です。
この度、ハクブルム王国の第一王子、クラウス様と婚約を取り交わす運びとなりました。
婚約者となるクラウス様と私の出会いは、確か五年程前だったと思います。当時私は十二歳。クラウス様は十四歳で、我が国の王立学院に留学中のご身分でした。
私は学院には通わず学業は全て家庭教師から学んでおり、本来なら私たちが出会うことは無かった筈なのです。
ですが、私の従兄弟であるスアレス公爵家のアルベルト兄様がクラウス様とご学友であったため、王宮で開かれたお茶会にクラウス様をお連れし、自分で言うのも恥ずかしいのですが、私たちは運命的な出会いを果たしました。
お互いに一目惚れとでも申しましょうか……。ふふふ。
出会いから一年半後、留学期間が終わり、クラウス様はハクブルム国にお戻りになられたのですが、それ以降も定期的に私たちはお手紙のやり取りだけはずっと続けました。
子どもっぽい一目惚れから始まった私たちの恋ですが、五年をかけて真実の愛に変わりました。
私たちは生まれた国がそもそも違うのですから、私たちの間には言葉や生活習慣の違いも含め、もちろんいろいろな困難もございましたよ。
特に私の父であるクリスタリア国王が、私の他国への嫁入りに猛反対をしたのです。父としてはクリスタリア国内の貴族と結婚して私に王宮の近くで暮らして欲しかったようです。
クラウス様はそんな父を説得する為に、この一年、何度も何度もこの国に使者を遣わせて下さりました。
その甲斐あってやっと父の了承を得ることが叶ったのです。
嬉しい反面、寂しい思いもあります。
先日も家族でお喋りをしていた際に、妹のローザからハクブルムはどのくらい遠いのかと問われました。
私は国の外へ出たことが無いので、彼の国が遠いところだとは知っていましたが、実際にどの位遠いのかなど考えたこともありませんでした。
クラウス様との婚約に浮かれ、結婚してハクブルムに暮らすことになれば、家族とは簡単に会うことは叶わなくなると言う簡単なことさえ想像出来ていなかったのです。
秋の終わりまでにはクラウス様が正式な婚約の申し入れをする為に私のところへ来て下さいます。そして一年後、私はハクブルムへと輿入れ致します。
小さな可愛い妹のローザは「遠くへ行く位なら憧れていた王妃様になれなくても構わない」と言っていましたが、あの子もいつか恋をするでしょう。
その時ローザは家族と愛する人、どちらを選ぶのかしら?
いつかその時が来たならば、私はあの子の幸せを遠い地ハクブルムから祈ろうと思っています。
ローザと、それからもちろん私の愛する家族に沢山の幸せが在らんことを。
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