閑話 レイフ・アルカーノの独白
俺はレイフ・アルカーノ。十歳。
両親と長兄は海運関係の仕事をしている。次兄は王立学院の第五学年に、俺は第一学年に在籍中だ。
先日のこと。魔導実技基礎演習の最初の授業で、俺は遅刻ギリギリに教室へ飛び込んだ。
とりあえず教室の扉から一番近くて空いている席に座ることにしたんだけど……運悪く、その席の隣に座っていたのはこの国の第三王子だったんだ。
魔道実技基礎演習、う〜ん、なんだか長いな。略して “魔実基演” でいいか。魔実基演のクラスは属性別なんだけど、どうやらその中でもさらに魔力量別に分けられているらしい。
このことはCクラス担任で、さらに魔実基演でも担当になったらしいアレン先生から前もって聞かされていた。
何故って? 俺以外のメンバー七人が全てお貴族様だったからだよ!
魔力量は遺伝的要素が強い。
遥か昔から貴族だから魔力量が多いのか? 魔力量が多かったから貴族になれたのか? そんなことは知ったこっちゃないが、総じて貴族の魔力量は平民のそれよりも格段に多い。
だから当然最上位クラスのメンバーは貴族ばかりだ。そこに平民の俺が入ったら? そりゃ、最上位クラスに入れなかった貴族の坊ちゃん連中は当然面白くはないだろうなって話だよ。
入学式の三日後、俺は既にクラスで問題を起こしていた。
男爵家の坊ちゃんの余りの傍若無人振りに苦言を呈したのが発端だ。「苦言を呈した」なんて言うと聞こえがいいが、実際にはぐうの音も出ない程に言い負かしたんだけどな。
最終的にはアレン先生が仲裁に入って一旦は収まったけど、相手にしてみりゃ平民風情と見下していた俺に対して禍根は残るだろう。
ちなみにそいつは俺と同じ “水属性” だが、このクラスには居ない。推して知るべしだ。
アレン先生は前もって忠告してくれたわけさ。「男爵家どころか王家の子息が一緒だぞ!」と。
なのにやっちまった。選りに選って王子の隣を引き当てた。最悪だよ。
でもまあ別に、どこに座ってたって関わらなきゃ良い話だろうと俺は思うことにした。
授業が始まって、俺は正直魔力量では負けないと思っていたし、絶対に魔力操作なら上手くやれるという自負もあった。それなのに失敗したんだ。それもクラス全員の前で。
悔しかったし恥ずかしかったよ。
だからあんな風に悪態を吐いちまった。……今となっては反省してる。
「今日の演習クラスどうだった? まさか王族相手にまた問題なんか起こしてないだろうな?」
寮に戻ると、同室のイワンが待ち構えていたかのように聞いてきた。心配しているというよりは、俺が何か仕出かしたに違いないと期待している目だ。
「別に。特に問題なんて何も無いよ」
「嘘だろ? レイフが何の問題もなくあのクラスで授業を終えられるとは思えない! 王子様はどうだった? やっぱりアイツみたいに威張り散らした嫌な奴か?」
「別に普通」
「普通? なんだそれ。ちぇ。つまらん」
イワンは興味を失ったようで、すぐに他の奴らに話しかけている。
あの一件は男爵家の坊ちゃんにももちろん問題はあったが、俺にもちょっとは非はある。それは認める。
俺は元々階級制度を良く思っていない。実際今まで関わってきた貴族なんて、身分を盾に威張り腐った嫌な奴らばかりだったから。
だから王立学院になんて入る気は全然無かったんだ。
でも母親からの強烈な「しのごの言わずに王立学院に行きなさい!」的圧力を跳ね除けるだけの気力が俺には無かったんだよね。……なんだって母さんはあんなに “学院推し” なんだ?
それにしても、アスールは俺が思ってた貴族(まあ王族だけど)と良い意味で全然違った。口では上手く説明出来ないけど、アイツはなかなか良い奴だと思う。アスールとはなんだか波長? が合う。
だから、取り敢えずは友だちになってみた。
次の授業? まあ、それなりには楽しみ……かもな。
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