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閑話 ヴァネッサ・ノーチの独白

 私の名前はヴァネッサ・ノーチ。十歳。ノーチ男爵家の三女です。


 我が家は貴族とは名ばかり。実際に比較したことはもちろんないですが、思うに我が家は “超” が付くほどの貧乏貴族なのでしょう。


 私より九歳上の姉は第一子ということもあり、特に問題も無く王立学院に入学し、無事に卒業しました。

 六歳上の兄も同じく王立学院の卒業生です。

 問題はこれ以降に生まれた兄妹たちです。

 三歳上の兄は既に長女が学院を卒業済みだったことと、次男が “男子” で両親も学院に入学させないという考えは無かったことが幸いしたのでしょう、現在王立学院の第四学年に在籍しています。

 二歳上の姉は、当時二人の兄が学院に在籍中だったことと、金銭的にも学力的にも次女の進学の可能性は無いと判断されたことを主な理由に、学院入学の話題すらあがりませんでした。次女にも特に不満は無いようでした。


 そんな我が家ですから三女である私は、自分がこの王立学院によもや入学出来るなどとは夢にも思っていませんでした。

 それでも()()()()()()あるかもしれない小さな可能性に賭けて、私は算術だけは頑張りました。嫁に出すしか能が無い娘であるより、家族にとって()()()()として自分の存在価値を示す方が利があると考えたからです。


 最終的に、私が入学させてもらえた理由は多分長男が卒業して、学院に在籍しているのが次男だけになったことと、もはや私のために出せる持参金など我が家には無いことだと想像しています。

 それから姉の制服その他一式が家に残っていて、何も新しく揃える必要がないことそれもかなり重要なポイントだったはずです。

 こうして私は現在、幸運にも王立学院の第一学年に在籍しているわけです。



 そうそう。先日、学院で魔力と属性の測定がありました。

 我が家では自宅に魔導師団の方を呼んで魔力測定をするような経済的な余裕などありません。ですから、調べたことがないので自分の属性がおそらく “水” だろうと想像をしていただけで、本当にそうなのかを今まではっきりとは知りませんでした。

 測定の結果、予想通り私の主属性は “水” でした。

 ですが驚いたことに、ほんの少しですが私に “地” の属性もあったことが学院での検査で判明したのです。地の属性持ちはとても珍しいと言われています。それが私にもあったなんて!本当に嬉しいことです。

 “地属性持ち” は他の属性の方に比べて魔導師団への入団が容易いと聞いたことがあります。卒業後に家に頼らず自力で生きていくためにも、この地属性を学院での五年間で頑張って育てなくてはなりません。頑張ります!



 学院の生活は、私にとってとても素晴らしい日々です。

 まだ入学して二週間ですが、授業もとても面白いですし、実技もやり甲斐があります。

 友人と呼べるほどにはまだ仲良くはなれてはいませんが、同じクラスのカタリナ様はとても素敵な方だと思います。少しずつ仲良くなれたら嬉しいです。彼女の落ち着いた立ち居振る舞いは是非とも見習いたいです。


 同じAクラスには、第三王子のアスール殿下もいらっしゃいます。

 余りにも高貴な身分の方なのでなんだか気後れしてしまい、まだ殿下とはまともにお話をしたことはありません。

 ただ一度だけ何故だか急に「貴女は四女なの?」と聞かれたので「三女です」とお答えしました。すると「私の妹のローザと一緒ですね」と優しい表情で仰って下さいました。

 第三王女のローザ様と私が()()なんてとてもとても畏れ多いことです。……でも殿下とお話出来たことは嬉しかったです。ふふ。



 そう言えば、最近他のクラスのご令嬢方が私が在籍しているAクラスにいらっしゃるようになりました。

 皆さまはもうご自分のクラスに馴染まれて、他のクラスを訪問される余裕があるなんて、本当に羨ましいです。

 私は自分のクラスの方とも未だになかなかお話出来ないでいるというのに……。

 きっと皆さまは侯爵令嬢のカタリナ様とお友だちになりたくて、ああしてAクラスを訪問されているのだろうと想像しています。

 ……ですがカタリナ様はお一人で静かに読書をされていることが多くて……。皆さまなかなか声をかけ難いようです。私もそんな皆さまにどう対処していいのか分からず正直困惑しています。

お読みいただき、ありがとうございます。

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