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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第六部 王立学院五年目編
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閑話 アニタ・アルカーノの独白

 私の名前はアニタ・アルカーノ。でも、本当の名はアニタ・オルケーノよ。

 アルカーノ商会の会頭であり、オルカ海賊団の頭領でもあるミゲル・アルカーノ(オルケーノ)の長男、カミル・アルカーノ(オルケーノ)の嫁です。

 私の年齢はできれば聞かないで欲しいわ。そうね、小さな二人の可愛い息子を持つ普通の母親よ。



 私たち家族が暮らしているのは、クリスタリア国の西に位置するテレジアという港町。

 私も、夫のカミルも、もともとこのテレジアの町の生まれ。私たちは同い年の幼馴染なの。


 テレジアは港町。

 今はクリスタリア国内では一、二を争う程の貿易港がある町としてかなり有名になっているけれど、昔は本当に小さな漁村だったと聞くわ。

 いくつもあったであろう候補地の中から王家が “テレジア” を重要な港として発展させる場所として選んだ理由は、

 テレジアの港は深さがあり大型船が寄港しやすいこと。

 他の地域よりも気候が穏やかで高波が少ないこと。

 王都ヴィスタルからも然程離れていないこと。の三つの利点が揃っていたからなのですって。


 確かに最高の条件が揃っているのは本当よ。

 だだ、当時の王家は知らなかったのよ。そのテレジアから目と鼻の先にある小さな島に、悪名高き “オルカ海賊団” の本拠地があることを……。



 現在のオルカ海賊団の頭領ミゲル船長の父親や、その父親、そのまた父親が海賊団を率いていた頃、オルカ海賊団といえば酷く残忍で、略奪を繰り返し、海を我が物顔で荒らし回る、手が付けられないほど厄介な存在だったそうよ。

 オルカ海賊団の幹部たちの首には賞金がかけられ、捕まれば死刑は免れないと言われていた時代がずっと続いていたの。


 それが、今から三十年近く前のこと、ミゲル・オルケーノが父親から地位を奪い取り、オルカ海賊団の頭領の地位に就いたのよ。そこからオルカ海賊団は劇的に変わったそうよ。

 一般の商船からの略奪や、身代の金強奪を目的とした誘拐といった行為を禁止し、襲うのは私服を肥やしている悪徳商会の船だったり、評判の悪い領主の持ち船だけにしたの。そしてそこで得た金品を貧しい人たちに配り始めた。


 それと同時期くらいだと思うけれど、テレジアにアルカーノ商会が誕生したわ。

 最初は小さな商いをするだけだったらしいけれど、きっとミゲル・オルケーノには海賊団の頭領と同等か、それ以上に、商売の才能があったのでしょうね。

 アルカーノ商会はあっという間に大きな商会へと成り上がっていったそうよ。


 まあ、そうは言ってもテレジアの町に暮らすお年寄りの中には、未だに昔の評判の悪かった頃のオルカ海賊団のイメージが拭えない人も一定数は残っているようね。ただ、それより下の年齢の人たちは、オルカ海賊団に然程悪い印象はないのだと思うわ。



 その新しい頭領と結婚したのが “女海賊リリー” としても広く知られている私の義理の母、リリアナ・アルカーノ(オルケーノ)よ。

 義両親が大恋愛の末に駆け落ち同然で結婚したということは前から聞いていたけれど、私とカミルが揃って、義母が実は()()()()()()()()()()()()()()と知ったのは、まだほんの数年前のことよ。

 立ち居振る舞いからして、義母が両家のお嬢様だったのだろうとは想像していたけれど、先王フェルナンド様の姪っ子だと聞かされた時は、本当に驚いたわ。


 それに近いくらいに驚くような話を、実はさっき聞かされたのよ。

 その義両親の三男のレイフ(レイフは実母の兄、スアレス家の養子になったのよ)が連れて来た、ロートス王国の友人が探しているっていう “絵本” の話なの!

 どうやら彼が探しているっていうその絵本の “元話” がクリスタリア国の話だっていうんだけれど……。

 私は好きで、いろいろな絵本を息子たちに読み聞かせてきた方なので、絵本にはちょっと詳しいと自負しているのよ。でも、そんな絵本の存在は今まで一度も聞いたことがないの。

 レイフと友人は、明日テレジアの書店を回って探してみると言っていたけれど、おそらく見つからないでしょうね。


 ただね。気になるのは……どう考えても、その話、義両親(ミゲル船長とリリアナ嬢)のことなんじゃないかと思うわけ。確証はないのだけれど、そうとしか思えないのよ!

 いったいどういうことなのかしら?


 取り敢えず、義母に問い合わせた方が良いと思って、ホルクを飛ばそうとしたのだけれど……。

 うっかりしていたわ! うちのホルクは全羽、島の鳥小屋に移動させているんだった。レイフとその友人たちがテレジアの宿に滞在している間、彼らのホルクをうちの鳥小屋で預かるために、うちの鳥小屋を空にしたのよ。

 明日の朝、島からの定期連絡便(ホルク)が来るから、それを待ってから義母には手紙を書くしかないわね。


もし本当にそんな絵本があるのだったら、是非とも私も読んでみたいわ。

お読みいただき、ありがとうございます。


GW中は多忙につき更新をお休みします。次話は5月8日(月)にup予定です。

楽しみにしていて下さった方がいらっしゃったらごめんなさい。


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