プロローグ
人の記憶など曖昧なものだ。
時が経つうちに起きた事実は、その当人の都合の良いものへと歪曲されていくことも少なくない。それが “人” というものなのだと言われればそれまでなのだが。
十年以上前の話だ。
とある国で、その国を揺るがすような大事件が起きた。王城内に暴徒が侵入。当時の国王夫妻と一歳になったばかりの第一王女、それから王城に内に居合わせた多くの貴族たちの尊い命が奪われた。
その惨劇の中、亡くなった第一王女と双子だった第一王子、たった一人、彼だけが無事に救出された。
一瞬にして国の根幹を失ったその国は、その後に起きるであろう国内の混乱を抑えるためと称して国を閉じた。
そのまま、誰の上にも平等に時は流れる。
一人ぼっちの王子は、次なる王になる日を、偽りだらけのその国でずっと待っている。
また別の国の話。
生まれる筈だった一つの小さな命の灯火が消え、代わりに別の二つの小さな命が海を越えて運ばれて来た。
殆ど消えかかっていた二つの命は、大きな大きな秘密を抱えたまま、新しい家族の中でゆっくりと育まれていく。
遠く離れた二つの国。
隠された過去。偽りだらけの現在。まだ誰のものでもない未来。
既に運命の歯車は動き始めている。
眠れる獅子が目を覚ます刻が近付いている。
大切に大切に隠された秘宝は、己れの価値を未だ知らない。
第6部 学院五年目編 スタートです。
いよいよアスールが最終学年生になります。学院には新たな留学生が登場し更なる騒動が?!
楽しんで頂けたら幸いです。
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