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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第五部 王立学院四年目編
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閑話 ミリア・クランの独白

 私の名前はミリア・クラン。六歳。

 ミリア・クランになったのは今から三年くらい前。

 その前は、テレジア街の港の近くのゴミ捨て場みたいなところで、お兄ちゃんのフェイと二人でこっそりと隠れながら暮らしてたの。

 そのもっと前は、キルキアっていう国に居たらしい。けど、それは、あまり覚えていない……。



 三年前にいろいろあって、フェイと私はクラン家に引き取られることになったの。

 最初は知らない大人ばっかりで、凄く不安だった。叩かれたり、叱られたりするんじゃないかって思って、いつもフェイの背中に隠れてたんだ。

 でも、この家に連れて来てくれたジルさんがお兄ちゃんになってくれて、ジルさんのお父さんとお母さんが私たちの新しい両親になった。

 新しいお父さんとお母さんは、私が間違ったことしても、怒らなかったよ。何が駄目なのか、どうしたら良いかを、優しい口調で教えてくれた。


 フェイと私は、ジル兄ちゃんのお姉ちゃんが前に使っていた部屋を、二人で一緒に使ってるんだ。

 そのお姉ちゃんはもう結婚して、今は別の町で暮らしているんだって。

 ジル兄ちゃんには、お姉ちゃんだけじゃなくて、妹も居るよ。ヒルダお姉ちゃんって言う名前。

 ヒルダお姉ちゃんは、私たちがこの家に引き取られて時はお仕事で他の国に行ってて、初めて会った時は私たちを見てビックリしてた。

 でも、私とフェイをギュッて抱きしめてくれて、私たちはすぐに仲良しになったよ。

 お姉ちゃんはテレジアの街にも部屋を借りているから、たまにしか帰ってこないの。それはちょっと寂しいかな。



 フェイはホルクが好きみたい。私も好き。だってホルクはとっても頭が良いから。

 リリアナ先生のところには、ホルクが三羽いる。

 フェイは勉強部屋が終わると、時々、そのホルクを眺めてるの。たぶんフェイもホルクを育てたいんだと思うな。

 でもね、ホルクってとても珍しい鳥だから「お金がいっぱいあっても普通の人には買えないのよ」って母さんが言ってた。


 アスールお兄ちゃんとルシオお兄ちゃんは、ピイリアとチビ助が赤ちゃんの時から育てているって言ってたから、たぶん二人は普通の人じゃないんだね。どんな人かな……。

 王都に住んでいて、頭が良くて、カッコイイよ。あと、とっても優しい。だから、フェイと同じくらい大好き。



 おとといの夜ご飯の後、フェイはお父さんとお母さんに「クリスタリア王立学院に行ってもっと勉強がしたい!」って言ってた。

 勉強だったら、リリアナ先生のところでもできるのに……。

 お父さんもお母さんも、すぐに「いいよ」って返事をしてた。

 そしたらフェイは、私にも「行っても良い?」って聞くの。


 王立学院って、アスールお兄ちゃんたちの学校だよね? この家からは通えないよね?


 お母さんは「フェイは、レイフお兄ちゃんみたいに寮に入るのよ」って教えてくれた。寮っていうのは子どもがいっぱい一緒に暮らすところなんだって。

 お父さんが「フェイは、夏と冬のお休みには島に戻って来るんだから、ちっとも寂しくないよ」って言ってた。


 私は、フェイと離れて暮らしたことが一度もないんだから、離れて暮らして本当にちっとも寂しくないかなんて……まだ分かんないよ。

 だから、私はフェイに返事をしなかったの。


 きのうの夕方、テレジアからヒルダお姉ちゃんが帰って来た。

 私がフェイに「行っても良い?」って聞かれたけど、まだ返事ができないって言ったら、ヒルダお姉ちゃんは「いっぱい考えてから返事をしたら良い。まだずっと先の話なんだから」って言ってた。

 それから、お姉ちゃんは「フェイが学院に行ってしまっても、家族なんだからフェイとミリアはずっと繋がっているんだよ」って教えてくれた。そうなのかな?



 フェイが居なくなったら、絶対に寂しいよ!

 でも今は、前みたいにフェイと二人っきりじゃない。お父さんと、お母さんと、ジル兄ちゃんと、ヒルダお姉ちゃんが、私たちの家族になってくれた。

 リリアナ先生のところに行けば、島の友だちもいる。


 だから、明日はちょっと無理だけど、七歳くらいになったら、フェイに「行っても良いよ!」って言えるかもしれない。

 そうしたら、フェイは喜んでくれるかな?

 喜んでくれたら嬉しいな。

お読みいただき、ありがとうございます。

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