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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第五部 王立学院四年目編
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閑話 グスタフ・ハイレンの独白

 なんなんだ! なんなんだ!! なんなんだ!!!

 あいつら、揃いも揃って、いったいなんだって言うんだ!


 失礼。

 僕の名前は、グスタフ・ハイレン。十六歳。ハイレン侯爵家の嫡男だ。

 現在は王立学院の最終学年 “分科コース” に在籍している。それから王立学院執行部を統括するのが役目の “部長” を任されている。


 王立学院執行部というのは、第四、第五学年の貴族から二名ずつ、平民から五名ずつの計十四名で運営されている組織だ。

 平民に関しては、第三学年終了時の成績上位五名が自動的に選出されるらしい。

 王族(特に王子)が学院に在籍している場合は、執行部に名前を連ねていることが多いようだ。まあ、お飾りのような物だろうけどね。

 今年度は第三王子のアスール殿下がそうだ。


 学院執行部の部長としての最大の見せ場は、新入生が入学してすぐに行われる委員会と部活の紹介だろうか。

 期待に胸を膨らませてこの学院にやって来た新入生たちに、まず入学後に学院ですべきことを教え、彼らを導くと言うとても大事な仕事だ。

 注目度も半端ない。

 これに関しては、過日、無事に終了した。


 執行部の集まりは、毎回、執行部専用の部室で開催する。

 週に一度、僕の都合の良い日を選び、前の週に日程を伝えて集合をかける。今のところ特に決めるべき重要な議題も無いので、毎回、次回の日程を連絡して解散することが多い。



 僕以外の貴族の部員は、第五学年は、エイミー・ルクラン。ルクラン公爵家の……次女だったか、三女だったか。まあ、どちらでもたいした違いは無いだろう。


 第四学年は、アスール殿下と、もう一人、バルマー侯爵家のルシオ・バルマー。彼は、ぱっと見た感じ、とても可愛らしい顔をしているが、その中身はかなりの曲者だと僕は思う。

 使っている言葉は柔らかく聞こえるが、言っている内容はたいてい辛辣だ。あれは相当底意地が悪い人間に違いない。


 後の平民の十人は……。まあ、頼んだことさえきちんと終わらせられる能力が有れば、それで良いと思っている。



 先週までは、僕を含めたこの十四人で上手く行っていた。いた筈なんだ!

 なのに、今日の集まりにアスール殿下は、自分の代わりの貴族枠にと、レイフ・スアレスを突然連れて来た。

 彼は先日、いきなりスアレス公爵家に養子に入ったアルカーノ商会の息子だ。


 このレイフ・アルカーノ、いや、レイフ・スアレスは、どうやって取り入ったのかは知らないが、やたらとアスール殿下と仲が良い。

 殿下は「今後は全権をレイフ・スアレスに」とまで仰る程にだ。部長である僕を差し置いて、全くもって信じられない。


 その上、レイフ・スアレスは僕のやり方に真っ向から反対意見をぶつけて来るじゃないか。

 さらに、僕を無能扱いし、部長をエイミー・ルクランに変えた方が良いみたいなことまで彼は言った。ふざけるな!

 こともあろうに、平民どもまでエイミーを支持するなんて言い出した。なんたる侮辱!



 余りに頭に来たから、やれるもんならやってみろと思い「勝手にしろ!」と言い残して部室を後にした。

 すぐにでも追いかけて来て「戻って来てほしい」と頭を下げるだろうと思ったからね。

 だが、どうしたことか、誰も追いかけては来なかった。



 まあ、明日にでも泣きついて来るに決まっている。

 エイミー・ルクランが執行部を率いるなんて、どう頑張ったところで、所詮無理に決まっているのだから。

 極めて不愉快だが、まあ、その時は僕も広い心で皆の謝罪を受け入れよう。それが高位貴族というものだからな。

お読みいただき、ありがとうございます。

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