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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第四部 王立学院三年目編
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閑話 マイラ・バルマーの独白

 私の名前はマイラ・バルマー。十歳。バルマー侯爵家の次女です。

 私には兄が二人、姉が一人居ます。



 上の兄のラモスは、昨年王立学院を卒業したばかり。今は王宮府副長官でもある父フレド・バルマーの下で働いています。

 長兄は、小さい頃からこの国の第二王子のギルベルト殿下(当時はシアン殿下と呼ばれていました)の幼友だちとして、殿下と共に学び、共に過ごし、本人も周りも、兄こそがギルベルト殿下の側近の最有力候補と思っているようです。

 実際、きっとそうなるのだと思います。兄は妹の私が言うのも何ですが、とても優秀なのです。



 二番目の兄ルシオは、現在王立学院の第三学年生です。

 次兄もたぶん優秀なのですが、こちらの兄はとても変わり者です。(念のため言っておきますが、悪い意味ではありません)

 次兄はアスール第三王子と同学年で、二人も幼友だちです。長兄がギルベルト殿下の側近候補なのに対して、次兄はあくまでもアスール殿下の友人、いえ、親友といった感じです。

 次兄は “アスール殿下が王子様だ” ということを全く気にしている様子も無く、いつも殿下に対してビックリするくらい自然な態度で接しています。

 殿下の方も余り気にされていないようなので良いのですが、近くで見ていて本当にヒヤヒヤする程の距離感なのです。

 そんな兄なのですが……兄も間違い無く、アスール殿下の側近になるのでしょう。



 その下は姉のカレラ。王立学院の第二学年生です。

 姉は学力的な点では、上の二人の兄たちの遥か上を行くのではないかと思わせる程の才女だと、私は密かに思っています。

 学院入学時は女子学生として初めて入学式での代表挨拶をしています。つまり入学試験の成績が、その年の受験者の中で最も良かったということです。

 それ以降も姉は、ずっと主席をキープしています。

 ここ十数年で、入学時から卒業まで一度も主席の座を手放さなかったのはシアン殿下だけだそうです。(アスール殿下も今のところ主席キープ中)

 姉上には、是非とも学院史上初女子学生による “入学から卒業まで完全主席” の栄誉を勝ち取って貰いたいです。

 因みに姉は第三王女のローザ様と同級生で、学院入学少し前から良い関係を築いているようです。



 そんな()()()の兄と姉の下に、同じバルマー侯爵家の子どもとして生を受けてはいますが、私はとても()()()人間です。

 成績も普通。魔力も(貴族としては)普通。見た目も普通。

 優れている点と言えば、父親の地位と家格くらい。私個人の資質で言えば、自慢できる点は今のところ見当たりません。実は……これが私の今最大の悩みなのです。



 先日。私は同じクラスの友人(と私は勝手に思っていたのですが)お二人が、学年最後の休日を利用してリルアンに遊びに行く計画を立てているのを偶然知りました。

 ですが……私はお二人から一緒に行かないかとは誘って頂けませんでした。

 凄くショックでした。


 もっと悲しかったのは、その事を打ち明けたのにも関わらず、次兄のルシオ兄さんは “さもどうでも良い事” の様に私の悩みを笑い飛ばしたのです。


 確かに、兄さんがご友人のアスール殿下とマティアス様を家にお誘いになった “お泊まり会” に、私が邪魔だったのだろうとは思います。

 でも「なんだ。そんなことか!」は流石に無いと思うのです!



 そんな兄とは違い、アスール殿下もマティアス様も、凄く優しく私に接して下さいました。

 アスール殿下は普段からとてもお優しい王子様なのは分かっていましたが、意外だったのがマティアス様です。

 マティアス様はオラリエ辺境伯家のご次男で、騎士になるために王立学院に入学し、常に厳しい剣の鍛錬を欠かさない! と兄から聞いていました。

 実際いつも、兄とは対極の様な真剣な表情でアスール殿下の横に立たれている姿しかお見受けしたことはありませんでした。

 ですが話をしてみると、とても心優しいお方だったのです。

 辺境伯領についてのお話もとても興味深かったですし、いつか機会が有れば、マティアス様のお話に出てきた、雪深い辺境伯領を自分の目で見てみたいと思いました。



 そうそう。話は変わりますが、最後の休日を終えて私が家から兄たちと共に学院に戻ると、とても素敵な事が私を待っていたのです!


 同じクラスの友人二人が、私の為に東寮の談話室で “お誕生日のお祝い” をしてくれたのです。

 実際の私の誕生日は三の月の終わりで、まだまだずっと先で、その頃は学院は冬期休暇中。だから早めのお祝いだと言われました。


 夕食後、突然お二人から談話室に呼び出された私は、その場に準備された焼き菓子やプレゼントを前に、驚きと、喜びと、戸惑いと、いろいろな感情が入り混じり、たぶん一番は嬉しさで、不覚にもその場で泣き出してしまいました。

 だって、本当に嬉しかったのです!


 この冬期休暇中、私はお二人を我が家にお誘いしました。丁度私のお誕生日の頃、我が家で三人で “お泊まり会” をする事になっています。

 凄く楽しみです!

お読みいただき、ありがとうございます。

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