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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第一部 王家の子どもたち編
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閑話 アルノルド・マイヤーの独白

 私の名前は、アルノルド・マイヤー。二十二歳。旅をしながら気に入った場所を見つけては絵を描いている。


 私がクリスタリア国に来てから、そろそろひと月になるのか。

 それにしても、なんだか最近いろいろと面倒なことに巻き込まれている。それもどんどん深みに嵌って行っている気がするのだが……うん。気のせいでは無いだろうな。



 まずはこの国の第三王女と街中でばったり出くわしたのだ。と言うべきか、むしろ向こうから積極的に声をかけて来たと思う。

 あの王女様。なんと言うか……あれで王女として大丈夫なのか? と心配になる位には警戒心が無い。

 それだけこの国の治安が良いのだとは思うが、護衛付きの外出だとしてもせめてもう少し……まあ、私がどうこう言うことでも無いな。

 王女との出会いの後、どうやら私は王宮から『不審者認定』をされたらしい。

 あの日以来騎士がちょろちょろと私の周辺を彷徨き、なにやら私の身元を調査しているようだ。



 次に出会ったのは、まさかの第三王子。

 姫様に教えてもらった “収穫祭” とやらを見に行ってみれば、人気(ひとけ)の無い狭い路地裏からなんだか激しく争う声と、剣を交える音が聞こえてくるではないか。

 気になって駆けつけてみれば、大人数での斬り合いの真っ最中ときた。

 戦いに加わっている面子の中に、姫様の『お忍び街歩き』に付き従っていた護衛騎士たちが数名混じっていることに気付いて「おや?」とは思ったが、まさか例の姫様が巻き込まれた誘拐事件に私自身が首を突っ込む羽目になるとは……その時、誰が想像するだろう。

 もちろん私はしていなかった。

 はっきり言うが、私は()()()()()面倒ごとに関わりたいわけでは決して無い。



 その後、手を貸して貰ったお礼がしたいと王子殿下に乞われ、私としては丁重にお断りしたつもりだったのだが、結局王宮まで行く羽目になった。

 そしてそこで侯爵様から半ば取り調べに近いものを受けた。

 取り調べとは大袈裟過ぎるかな。そこに嫌な態度や悪意は全く感じられなかったのだから。

 が、あのディールス侯爵という方は恐ろしく冷静沈着で思考が深く鋭い。こちらの頭の隅々まで覗かれているような感じがして、一瞬たりとも気が抜けない恐怖感を覚えた。

 それにしても……あの時助太刀に加わった女性は誰だったのだろうか?



 今日になって、今度は私の滞在している宿に、わざわざ伯爵様が訪ねて来た。

 なんと例の王女様が、私に絵を習いたいと父王に頼んだらしい。お姫様とは全くもって困ったものだ。

 バルマー伯爵と名乗った妙に愛想の良い御仁は、私が教えるのは例の姫様だけでなく、兄の王子殿下と、ついでに当の伯爵の三人()()()()だと言うではないか。

 これはどう解釈すべきか……。

 伯爵がそこに加わるのは、大方私への監視が目的だろう。身元のはっきりしない男を王家の子どもたちに安易に近づける筈は無いのだから。

 (はなは)だ面倒ではあるが、とても断ることは出来そうにもなかったので、一応「お引き受けします」と答えておいた。



 私が国を出て、もうじき三年になる。

 すでに十以上の国を巡ってきたが、未だに私の求める結果を得ることは叶わないままだ。受け取ったリストにある残りは二カ国……。

 まだ時間は残されているのか? それとも、もう既に何もかも手遅れなのか?

 

 最早急ぐ旅ではないのだ。もう暫くこの面倒ごとに付き合うとしよう。


お読みいただき、ありがとうございます。

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