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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第一部 王家の子どもたち編
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閑話 アスール・クリスタリアの独白

 僕はアスール・クリスタリア。九歳。この国の第三王子という立場だ。

 三の月の学院入学式に向け、はっきり言って忙し過ぎる毎日を送っている。僕の一週間の主な日程は、


   風の日 午前中算術、午後はディールス侯爵による剣の鍛錬

   火の日 午前中音楽

   水の日 午前中地理、午後はディールス侯爵による剣の鍛錬

   氷の日 午前中マナー

   雷の日 午前中歴史、午後はディールス侯爵による剣の鍛錬

   地の日 午前中ダンス

   光の日 やっと休日



 音楽とマナーとダンスのレッスンは妹のローザと一緒に受けている。

 音楽は中型の竪琴だ。先生は元王立学院の音楽教師で、もうこれ以上太ったらそろそろ自力で歩くことが困難になりそうなほどの体型だ。あんなにお腹が出ていては演奏し難くないか気になるが、そんな心配は全く必要ないようで、先生の演奏はちゃんと素晴らしい。

 貴族の嗜みの一つと言われて小さい頃からずっと練習はしてきたが、竪琴は正直に言ってしまうと得意ではない。と言うか、むしろ苦手だ。

 僕とは違い、ローザには音楽の才能があると思う。出来るならローザの演奏を聴いてるだけでレッスンが終われば良いのにと毎回思うが……そう都合良く済むはずもなく「殿下はもう少し練習を」と言い残し先生は去って行く。

 学院でも二学年次迄は音楽の授業は必須科目らしいので、それ迄はなんとか耐えるしかない。


 マナーとダンスに関しては問題は無いと思う。

 これらも小さい頃から家庭教師が来ていたし、先生方にも「学院でも合格点は頂けます」とお墨付きを貰っている。


 算術、地理、歴史は二学年次迄の分はすでに習得済みだ。立場上高得点での入学試験通過と定期試験合格を要求されるので、気は抜けないがそれほど心配はいらないと思う。



 週に三回もあるディールス侯爵の剣術指導は正直辛い。

 侯爵が同い年の二人を連れてきてくれてからは、一人で指導を受けていた頃に比べればずっと()()になったが、相も変わらず三人まとめて鬼のしごきを受けている。でもその辛さを分かち合い、愚痴をこぼし合える友人が居るというのはすごく心地良い。



 剣術指導のない日の午後は、図書室で過ごすことが多い。城の図書室は僕のお気に入りの場所だ。最近はルシオとマティアスも一緒に図書室で過ごすこともある。


 城の図書室は一階と二階が吹き抜けになっていて、天井まで本がぎっしりと並べられていて、その天井には『知識の女神の神話』に基づいた美しい天井画が描かれている。本棚には可動式の梯子がかけられているので上の棚の本を取る時はその梯子を使えば良い。


 僕が好きな魔道具関連の本は二階に置いてある。

 二階に上がるには是非左右の螺旋階段の利用をお勧めする。

 二階には、人が三、四人並んで歩けるくらいの廊下のような通路がぐるりと一周張り巡らされている。

 一階から図書室を見上げるのも良いのだけれど、二階の通路から手すり越しに見渡す図書室は本当に素晴らしい。ただあまり身を乗り出して手すりから落下することの無いように、特にルシオには気を付けてもらいたい。

 一階の中央、天井付近にある窓から光が差し込んでくる場所に大きな読書用のテーブルが置かれている。

 僕らは大抵その場所で本を読んでいる。たまにぽかぽかと差し込む日差しのせいでついつい居眠りをしてしまうこともあるが、そこはお互いに見て見ぬふりをすることにしている。



 そう言えば、ローザが習い事を増やしたいらしい話を母上としていた。

 もうすでにローザのところには “刺繍” と “カリグラフィー” と “ピアノ” の先生が来ていたはず。この上まだ増やすだなんて……本当に気が知れない。


 これ以上僕がローザに巻き込まれることが無いことを心から願っている。

お読みいただき、ありがとうございます。

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