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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第一部 王家の子どもたち編
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閑話 リリアナ・オルケーノの独白

 私はリリアナ・オルケーノ。年齢は……まあ、秘密ってことで良いわよね。私は元々はスアレス公爵家の長女なんだけど、海賊団の跡取り息子と駆け落ちしちゃったものだから、外聞が悪いっていうこともあって、表向きは死亡したことになってるの。

 現在の職業は、オルカ海賊団頭領の妻ってところかしら。



 私の父親のロベルトは、前国王のフェルナンド様の弟なの。つまりフェルナンド様は私の伯父様に当たるわけ。

 父のロベルトは “クリスタリアの良心” と呼ばれるほど立派な人だったわ。優しく誠実で常に正しい人。

 私の三歳年上の兄ニコラスも真面目で正義感が強く真っ直ぐな人。

 五歳年下の妹のスサーナは容姿はもちろん性格も本当に可愛いくて、誰にでも愛されるとっても良い子。


 我が家は公爵家。私は何不自由の無い暮らしをさせてもらっていた。でもね、正直私はそんな家族の中でずっと息苦しさを感じてたわ。

 なんとなく自分だけが異分子のように思えたのよ。


 だからかな、豪快で開けっぴろげなフェルナンド伯父様や従兄弟のカルロの方が、むしろ自分に近い存在なような気がしていた。

 ただし、カルロは自分に対して言いたい放題言う年上の私なんかより、カルガモの雛のように自分に付いてまわる年下のスサーナを溺愛していたけどね。

 まあ、それはさて置き、私には少しの間家族と距離を置きたいと思ってしまった時期があったの。反抗期って言うのよね、きっと。

 私は家庭教師の隙を突いては屋敷を抜け出してヴィスタルの街に出ていたわ。もちろん護衛など無しでね。


 街へ行ったからといっても、別段特別なことをするわけじゃ無いのよ。ただ何となく市場を歩いたり、広場で行き交う人を観察したり、時には海岸を散歩したりね。

でも、ある時人通りの少ない路地に間違って入り込んでしまった私は、ちょっと人相の良くない感じの人たちに遭遇してしまったの。

 今だったらそんな人たちなんて蹴り倒してさっさと逃げるところだけど、当時の私は一応お嬢様だったものだから簡単に囲まれちゃったわけ。

 そこに助けに入ってくれたのが今の旦那様。

 ミゲルが颯爽と現れて、数人の男どもを一瞬で捻り上げたのよ。そりゃあもう有り得ないくらい素敵だったわ。当然恋に落ちるわね。そして当然周囲の猛反対にあったわけ。



 紆余曲折あって、私たちは結婚したんだけど、私は家名を捨てたわ。

 まさか公爵令嬢が海賊団の跡取り息子と結婚だなんて……どう転んでも許されるはずは無いものね。

 フェルナンド伯父様の計らいで、公には私は不慮の事故で死んだことになってるのよ。



 それからは実家とは縁が切れてしまったけれど、フェルナンド伯父様が間に入ってくれて、ずっとお互いの近況くらいは知らせ合っていたわ。

 スサーナがロートス王国に嫁ぐ前にはちゃんと見送りも出来た。

 その後にまさかあんな悲しい知らせを受け取ることになるとは夢にも思っていなかったけどね……。



 今日も伯父様からの定期連絡のホルクが飛んできて、ローザとアスールが私とミゲルの扮装をするって言うじゃない。そりゃあ見に行くわよ。まさかあんなことになるとは、またしても夢にも思わないでしょ。

 小悪党のお陰(?)で、思いがけずアスールとローザにも会えたし、ましてや親戚だと名乗れたのは嬉しい誤算。


 それにしてもローザ。ローザよ!

 私には三人息子がいるの。揃いも揃って皆やんちゃ坊主で、本当に手を焼いた記憶しか無かったから、女の子があんなに可愛い存在だったなんて初めて知ったわ。

 カルロが溺愛してるって噂には聞いていたけれど、まあ納得したわ。


 そうね。また会いに行かなくちゃ。

お読みいただき、ありがとうございます。

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