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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第三部 王立学院二年目編
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閑話 ルイス・レントの独白

 俺の名前はルイス・レント。七歳。

 家族は俺と、父ちゃん、母ちゃん、爺ちゃん、婆ちゃん、それから妹の全部で六人。俺たち家族は小さな島で暮らしている。



 爺ちゃんは「俺は昔は腕の良い船大工だったんだぞ!」って口癖のようにいつも言ってる。

 本当かどうかは分からない。船の事故で足を怪我してから、爺ちゃんはもう船には乗ってないからだ。

 ちょっとした大工仕事ならしたりはするけど、普段爺ちゃんは畑で野菜を育てている。

 爺ちゃんの作る野菜は美味しいと島では凄く評判が良いって、婆ちゃんはいつも嬉しそうにそう言ってる。



 今は父ちゃんが船大工だ。爺ちゃんの跡を継いだんだって。

 父ちゃんの普段の仕事場はオクルタ島だけど、海賊船が長いこと港を出る時は、父ちゃんも必ず船に乗る。航海中にどこか船が壊れたら直すのが仕事だからな。

 海賊船って言っても、オルカ海賊団は悪い海賊団じゃ無いぞ! 略奪や誘拐なんて絶対にしない。人殺しなんて以っての外だ。


 俺は大きくなったら商人になりたいと思ってる。いろいろな町やよその国にも行ってみたい。まあ、たまには船大工になっても良いかなって考える時もあるにはあるけど。

 でもさ、俺はまだ七歳だし、商人になるか船大工になるかを今すぐに決めなくたって良いよな。



 妹のキアナは三歳。

 母ちゃんはアルカーノの屋敷で料理人をしているし、爺ちゃんと婆ちゃんは畑仕事で忙しいから、キアナの面倒はいつも俺が、親友のシモンにも手伝って貰いながらみてる。

 はっきり言って面倒だ。


 キアナはまだ小さくて俺の言うことは余り聞かない。なのにいっつも俺とシモンの後を付いて来たがる。

 そうなると、釣りに行こうとすると「海はキアナが危ないから駄目」裏山にキノコを取りに行きたくても「キアナが迷うと困るから駄目」じゃあ、いったいどこなら行っても良いんだよ!



 この夏、アスール兄ちゃんがまた島に遊びに来た。

 今回はルシオ兄ちゃんは一緒じゃなくて、アスール兄ちゃんの兄ちゃんと妹が一緒だ。


 シアン兄ちゃんは凄く頭が良いし、めちゃくちゃカッコいい! 勉強部屋でも教えるのがすごく上手い。レイフ兄ちゃんやアスール兄ちゃんとは比較にならない。

 その上、魔力が凄いんだ!

 ルシオ兄ちゃんと同じ氷の属性なんだけど、シアン兄ちゃんは氷を()()とかそういうレベルじゃないんだぜ。


 実はこの前のこと。

 俺とシモンの二人でキアナに内緒で裏山にキノコを取りに行った時、俺たちはでっかいイノシシに襲われた。

 そのイノシシに追い詰められて、俺たちはもう死ぬかもしれないと半分諦めかけた時、シアン兄ちゃんが俺たちを助けに来てくれたんだ。

 シアン兄ちゃんは俺たちの目の前で、剣のように鋭く尖った氷を何本もいっぺんに飛ばして、あっという間にイノシシをやっつけてくれた。


 後で聞いたんだけど、俺たちに置いていかれたキアナが、裏山の方を見てずっと泣いているのを見つけたシアン兄ちゃんが、不審に思って裏山まで様子を見に来てくれたんだって。


 母ちゃんにはこっ酷く怒られた。

 命が助かったのは、シアン兄ちゃんとキアナのお陰だから感謝しろって、母ちゃんに泣きながら言われた。もちろん反省してる。


 その後、そのイノシシはどうなったかって?

 シアン兄ちゃんが仕留めたイノシシだったら、屋敷の厨房で母ちゃんが調理して、皆で美味しく食べたよ。



 見ていて気づいたんだけど、シアン兄ちゃんもアスール兄ちゃんも、妹のローザ姉ちゃんを凄く大事にしてる。

 ローザ姉ちゃんは十歳なのにちょっと、いやかなりふわふわしていて頼りないんだ。(お嬢様だから、もしかするとあれ位が普通なのかもしれないけど)

 そんなローザ姉ちゃんに、兄ちゃんたちは常に気を配っているし、側でいつも守っている。でも、それは凄く自然にさりげなくなんだ。

 それがまたカッコいい!


 俺もあんな風にキアナを守ってやるのも良いかなと、最近はちょっと考えてる。


 もうすぐ三人は王都に帰っちゃうんだけど、また来年もこの島に遊びに来たら良いな。どうせならルシオ兄ちゃんも一緒にさ。

お読みいただき、ありがとうございます。

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