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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第三部 王立学院二年目編
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閑話 イリーザ・ファイスの独白

 私の名前はイリーザ・ファイス。今年王立学院に入学したばかりの十歳です。

 私の家は王都から馬車で一週間程かかる、小さな村にある小さな宿屋です。村に学校はありません。子どもたちは皆、村にある教会で文字を習い、計算を教わります。



 私の魔力は地属性です。そのことが分かったのは私が八歳の時でした。

 たまたま村の教会に視察に来ていた魔法師団の人が私の魔力の質が他の子たちとは違うと気付き、近くの町まで魔力量と属性を調べに連れて行ってくれたのです。

 私の育った村には魔力量を測る魔導具も、属性を調べる魔導具もありませんでしたから。


 結果は地属性。魔力量は六でした。

 この時、魔法師団の人は私にこの国の王都にはクリスタリア王立学院という学校があること、魔力量が五以上あれば王立学院を受験できること、地属性はとても珍しくので学院に合格する可能性が高いことを教えてくれました。



 ですが、私の家は前にも書きましたが小さな宿屋です。弟と妹も居る我が家には、王都へ私を行かせる余裕などある筈が無いのです。私は、両親に学院へ行きたいとはとても言い出せませんでした。


 でも、魔法師団の人は更にもっと凄いことを私に教えてくれたのです。

 それは、王立学院は学費も教材費も無料だということです。その上、平民のための学生寮は寮費も食費もかからないというではありませんか。これには本当に驚きました。もしそれが本当なら、両親に金銭的な負担を掛けずに上の学校へ行くことができるのですから。


 ただし、入学するためには算術の試験と魔力量測定、それから面接試験があり、最低でも五以上の魔力量これはクリアしていますと、学院で今後必要とされるレベル以上の算術能力が必要だと言われました。

 私は教会で読み書きと簡単な計算は習いましたが、それが学院の求めるレベルに足りているのかが全く分からず、その後の二年間ひたすら勉強に励みました。



 学院に入学して四ヶ月。

 寮での生活にもだいぶ慣れてきました。私の寮の部屋は四人部屋で、他の三人は私よりも年上ですが、皆さんとても良くして下さって、とても楽しく過ごしています。

 授業も何もかも目新しいものばかり。魔力操作や魔法薬の作成など、知らなかった知識に触れることができ、毎日ワクワクしながら学院生活を送っています。とても幸せです。



 実際に学院に入って分かったことですが、地属性の人が少ないというのは本当のことでした。

 魔導実技基礎演習という授業があって、その授業は属性別に行われるのですが、私のクラスには私を含めて三人しか居ないのです。同学年の学生は百人も居るのにですよ。

 三人のために一つのクラスができて、三人のために先生が一人来てくれる。それって凄くないですか? なんだか得した気分です。


 その上、私以外の二人のうちの一人はなんと、この国の第三王女のローザ・クリスタリア様なのです。王女様と一緒に授業を受けることができるなんて……夢のようです。


 ローザ様は色白でとても可愛らしいお顔に美しいグリーンの瞳、ふわりと揺れるプラチナブロンドの髪、背は私よりもお小さくて、とても表情豊かで何にでも興味を持たれる方です。


 もうお一方は私と同じ地方出身者の男の子で、実家は大規模農場を親戚が協力しあって運営しているそうです。地属性を使いこなせるようになれば、きっとお家の役にたてますね。



 学院も授業もとても充実していますが、学院に入学してから分かったこともあります。

 地属性は珍しいので優遇される面がある一方で、目に見えてはっきり効果や変化が分かるようなものではないため、他の属性の人たちからは下に見れれることが多く、はっきり言ってしまえば()()()()()()()()()として扱われることすらあるのです。


 流石にローザ様に対して露骨な態度を取るようなそんな不遜な人は居ませんが、もしもローザ様が王子であったら肩身の狭い思いをしたかもしれません。

 やはり人は目に見える形で成果を上げることを良しとしますからね。まあ、私は誰に何と言われようが気にもしませんけど。



 話は変わりますが、ローザ様はとても動物に好かれる性質のようです。

 前に一度、学院内にある小さな泉の近くまで行って、自然の中にある魔力を取り入れようという授業を受けたことがあります。

 実際私には先生の仰っていることが難しくて、その授業自体余り理解できませんでしたが……。

 三人がバラバラに座って魔力操作を始めると、いつの間にかローザ様の周りにリスやウサギが集まって来ているのです。座るローザ様の膝の上にのっているリスまでいたのには驚きました。

 当のローザ様は然程驚いた様子も見せず、ニコニコと笑っていらしたので、もしかしたらローザ様にとっては珍しいことでは無いのかもしれませんね。



 私は “園芸クラブ” に入部しました。ローザ様ともご一緒です。

 その他にも私は院内雇傭システムに登録して “美味菜倶楽部” のお手伝いもしています。そうすれば実家から仕送りをして貰わずともお小遣いを得られますからね。


 これからの五年間の学院生活、私は私にできる精一杯の努力を続け、沢山のことを吸収していきたいと思っています。

お読みいただき、ありがとうございます。

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