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クロスロード 〜眠れる獅子と隠された秘宝〜  作者: 杜野 林檎
第一部 王家の子どもたち編
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閑話 マリオ・カステルの独白

 私の名前は、マリオ・カステル。十九歳。カステル男爵家の三男だ。


 我がカステル家はこれと言って特出すべき点が無い、極々小さな地方貴族のうちの一つである。そんな弱小男爵家の三男ともなれば、受け継ぐべき所領が有るはずもないだろうことは既に学院入学前から気付いていた。

 そんな訳で私は、家族には申し訳ないと思いつつ早々に領地と家とに見切りをつけた。


 当時の騎士団長であられたイズマエル・ディールス侯爵への憧れが非常に強かったこともあり、私は学院卒業と同時に騎士団に入団した。

 騎士団での訓練は、それはそれは辛く厳しいもので……。まあ、とにかく我武者羅に騎士団で鍛錬の日々を過ごしたものだ。



 そんな私が一年程前、他の五名の騎士と共に “王族担当騎士” に任命されたのだ。素晴らしく名誉なことである。

 自分と年齢的にも近い第一王子のドミニク殿下(当時はまだモラード王子と呼ばれていたのだが)に仕えるものだろうと、すっかり浮かれていた私は正式な辞令を受け取り愕然としたものだ。

『第三王女ローザ姫の護衛騎士に任ずる』

 正直、我が目を疑った……。




「マリオ。バルマー伯爵から呼び出しが入っているぞ!お前、何やらかした?」


 いつもの騎士団服に着替え終え、休憩所に戻ってそれ程経っていないのに、再度呼び出しを受けたらしい。

 伝えにきた同期の悪友は、私の動揺を期待するかのようにほくそ笑んでいる。


「思い当たる事は何も無いぞ!」

「どうだかな。姫様のご機嫌でも損ねたんじゃないのか? 出頭場所は王の()()()だそうだ」




 思い返してみるが、今日の任務にさして問題は無かった。至っていつも通りだったはず。


 ローザ姫の護衛騎士と言うのは、ある意味では特殊任務なのだろう。

 まだ学院にも通っていない幼い姫なので、公式な行事への単独での参加等は皆無だ。当然護衛騎士など基本的には必要ない。では、なに故の護衛か?


 我らのこの辞令と時を同じくして、ローザ姫は天気の良い日の午後の数時間だけ城下に出ることを許された。月に一回有るか無いかの頻度だが、商家の娘に見える服装で、それらしく街を歩く。時には住人と会話をしたり、ちょっとした買い物をしたりもする。当然我ら護衛もそれぞれに城下に溶け込む服装で街へ出る。


 当然王女が自由に歩ける範囲は治安が良いと言われているヴィスタルの中でも更に安全な場所だけに限られているので、正直言ってしまうと楽な任務だ。

 姫様はあの愛らしい見た目なうえ、人懐っこく、誰にでも気軽に声をおかけになるので、はっきり申し上げて、街の人々からの人気は絶大である。

 御自身ではお気付きでないようだが、この界隈の大人たちのほとんどが姫様の()()()()()()に気が付いている。敢えて知らぬ振りをし、遠くから生暖かい目で王女の成長をそっと見守っているといった具合である。


(いつもと違ったことと言えば、姫様が絵描きに声をかけ、しばらく談笑していたこと位だな……。それにどうやら絵描きは姫様に自分で描いた絵を差し上げていたようだ)


 今になって思い返してみると……あの絵描きはちょっと気になる。

 そうだ。一度ならずあの男とは目が合っているのだ。男は私たち護衛の存在を認識していた可能性がある。

 絵描きという割に身なりは小綺麗だったし、立居振る舞いも洗練されてると言えなくも無い。


(何か大きな見落としをしてしまったのではないだろうか……)


 王からの呼び出しを受けて、私は己の失態を考えずにはいられなくなった。


お読みいただき、ありがとうございます。

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