プロローグ
あるべきはずの未来が足元から音を立てて崩れ落ちていく。
ほんの少し前までの現実が一瞬にして目の前から全て消え去っていったあの時、私は何ひとつする術を知らず、ただただ呆然とそこに立ち尽くすことしか出来なかった……。
突然の爆発音。鳴り止まず響き渡る砲弾の音。不気味な大地の揺れ。
轟音のした方を振り返ると、数時間前まで友と笑い、語り合い、一緒に過ごしていたはずのキール城からは黒い煙がもうもうと立ち上り、その煙の間からは火柱までもが見え始めていた。
広場で祭りを楽しんでいた人々は突然のこの惨事を全く理解出来ておらず、皆同じその一点をあっけにとられたように見つめていた。
だが、立て続けに起きた数回の爆音に呼び覚まされたかのように一斉に騒ぎ始め、出来るだけキール城から遠ざかろうと我先に走り出し、混乱の中でぶつかり合い、広場は混沌の渦に一気に飲み込まれていった。
「若。早くこちらへ!」
そう叫ぶ声の主に腕を強く掴まれて、その渦の中で、まるで夢でも見ているかのようにただ呆然と立ち尽くしていただけの私は、その衝撃で一気に現実へと引きずり戻された。
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