蕪島神社攻略戦2
読み方
「」普通の会話
()心の声、システムメッセージ
『』キーワード
<>呪文
アランとユーは魔物の殲滅に行き、茜と葵は蕪島の頂上入り口で休憩していた。ウータン丸とミリアも一緒だった。
「ほなら、ボス戦に備えてお菓子を食べてMP回復しとくか」
そう言って茜は南部煎餅のゴマ味を取り出して食べ始めた。
「シンプルな塩味にゴマの風味があって、うまいやんけ」
「私も食べてみたい」
「ええで」
そう言って茜は葵に南部煎餅を葵に渡した。
「すごいね。この食べ物、シンプルな味だからこそ、飽きることが無い。何枚でも食べれるよ」
「そやろ?食べすぎに注意やで」
「うん」
葵は茜からもらった煎餅を1枚食べ終えると、ジュースで喉を潤した。
「次は酒のしずくを食べてみるよ」
「お、あの綺麗なお菓子か?うちにも分けてな?」
「当然だよ」
そう言って、葵は宝石のような半透明で水色の正六面体の干菓子を取り出して口に運んだ。
「お姉ちゃん。これは、見た目と触感に騙されるよ!触った感じはとっても硬いんだけど、噛んだ瞬間、外側が崩れて、柔らかい内部が口に広がるよ。しかも、これ、たぶんお酒の味だ。すごいよ、美味しいよ」
「そんなに凄いんか?うちにも分けてくれ」
「いいよ。はい、お姉ちゃん。あ~ん」
そう言って、葵は茜の口に酒のしずくを一粒持って行った。それを、茜は食べた。
「ほんまや、酒っぽい味がするで、これはうまいな」
茜と葵のMPは全快した。そのやり取りの間に、神社を囲んでいた不法投鬼はアランとユーによって殲滅されていく。アランは刀で斬り、ユーは小手を装着した拳で粉砕していた。
ウータン丸は、茜と葵がお菓子を食べ始めたので、フヨフヨと浮きながら、茜と葵に近づいた。
「おいちそうでしゅね」
よだれを流しつつ、ウータン丸は愛くるしい目で茜を見た。
「おいしいで、ウータン丸も食べてみ」
「あかねしゃん。ありがとでちゅ」
茜が南部煎餅を差し出すとウータン丸は、ポリポリと煎餅を食べた。
「おいちぃでちゅ」
(ウータン丸、ちょっとづつ煎餅かじっとる。かわいい~)
茜はウータン丸の愛くるしい姿にほっこりしていた。
「ウータン丸、こっちのお菓子も食べてみる?」
葵が酒のしずくを差し出すと、ウータン丸は煎餅を食べるのをやめて酒のしずくを食べた。
「こっちのおかちもおいちぃでちゅ」
(『おかち』だって、かわいい~)
葵もウータン丸の可愛さにほっこりしていた。
「ミリアさんも、どうですか?」
葵はミリアに酒のしずくを1個差し出した。
「遠慮する。MP減ってないと太るから……」
「そうなんですね」
(やっぱり、ただの大食いじゃないんだ。そうだよね。じゃなきゃ体型を維持できないもんね。私も食べすぎには気を付けよう)
茜と葵がお菓子を食べている間にアランとユーが魔物を殲滅したので、神社を包んでいた赤いオーラが消えた。
「これで、中に入れるはずです」
アランが神社に入ろうと神社に近づいた時、不思議な事が起こった。前に進んだはずのアランが、何故か前に進めなくなっていた。正確には一歩神社に歩き出したと同時に一歩分後ろに瞬間移動していた。なので、進んでいないように見えるのだ。
「アランさん。今のは何ですか?」
葵は自分が見た光景を信じられなくてアランに聞いた。
「これが、さっき言っていた人を迷わせる効果ですよ」
「なるほど、どうすればボスの居る場所に行けるんですか?」
「それは、この場所を詳しく調べる必要がありますね。どこかにヒントのような言葉が書かれているはずです」
「なんで、ヒントが書かれているんです?」
「それは、神の御加護です」
「さっき、迷宮には神の加護は届かないって……」
「ええ、神の御加護は届かないと言いましたが、全く届かないのではなく、大きな影響を与えることが出来ないというのが正しいですね」
「なるほど、ヒント位はだせるんですね」
「そういう事です」
「なあ、アランさん。ここに何か書いとるで」
茜が見つけた看板には『3周せよ、されば道は開かれん』と書かれていた。
「なるほど、島を3周しないと中に入れないみたいですね。魔物は殲滅しましたし、みんなで3周しましょう」
こうして、全員で島を3周した後で神社に近づくことができた。神社の正面には賽銭箱が置いてあり、その左側にはヒョウタンの像が右側にはカブの像が置いてあった。
「なんや、このカブの像、台座に何か文字が書いてあるで」
台座には『道開かれしものは3回撫でよ、さすれば加護を得ん』と書かれていた。
「なでればええんか?」
茜が興味本位でカブの像を撫でると、茜は金色のオーラに包まれた。
(茜が状態『金運アップ』を獲得しました)
「おお!なんやこれ?」
「茜さん。おめでとうございます。それは神の御加護ですよ。システムメッセージが言ったように金運がアップします」
「じゃあ、こっちのヒョウタンを撫でたら何が起こるんや?」
茜は金色のオーラに加えて、水色のオーラに包まれた。
(茜が状態『無病息災』を獲得しました)
「無病息災ってどんな効果や?」
「状態異常無効だと思ってもらえれば良いですよ。さて、カブの像もヒョウタンの像も良い効果をくれるようなので、みんなもらって置きましょう」
全員がカブとヒョウタンの像を撫でてプラスの状態を獲得した。
「さあ、みなさん準備は良いですか?行きますよ?」
「た」「プロテイン」「大丈夫」「大丈夫やで」「大丈夫です」
全員がアランに返事をした。ちなみに『た』はウータン丸が使う略語で『了解ちまちた』を縮めて『た』と言っていた。
神社の境内に全員が入ると、空間が歪み、巨大な四角い白い部屋に転送された。そこには、バイクの形をしたバイクではない妖怪が居た。前輪と後輪はタイヤの代わりに円形の炎があり、車体は白い骨で出来ており、運転手は車体と同化し、白い骸骨の手と頭が炎をまとっていた。顔の部分には眉と目の部分に炎があり、それが表情を現していた。それは、妖怪火車だった。
「クケケケケケ、また獲物が来やがった」
妖怪火車は、骨だけの顎をカタカタ鳴らしながらそう言った。
「初めまして、そして、さようなら」
アランは、軽い調子で妖怪火車に答えた。
「大した自信だな、出来るならやってみろ!」
そう言って、妖怪火車は、バイクを走らせて先制攻撃をしてきた。バイクは炎を上げて真っすぐ前進してきた。
「危ない!ウータン丸様!お願いします!」
「ぼうりょくは、メッ」
アランの言葉を受けてウータン丸が『汝かわいいに触れる事なかれ』を発動する。ウータン丸と茜と葵が光り輝く球形の魔方陣に包まれた。だが、アランとユーとミリアには魔方陣が出現しなかった。
ユーは純白の天使の翼を出して飛んで妖怪火車を避け、アランとミリアは漆黒の翼を出して飛んで避けた。だが、妖怪火車の炎は天高く燃え盛り、3人を飲み込んだ。
(アランの状態『無病息災』が、状態異常『燃焼』を無効化するために消失しました)
(ミリアの状態『無病息災』が、状態異常『燃焼』を無効化するために消失しました)
(ユーの状態『無病息災』が、状態異常『燃焼』を無効化するために消失しました)
「葵さん!作戦通りにお願いします!」
そう言って、アランは闇の宝珠を刀にして、正眼に構えた。
「分かりました」
<水鎧守連>
葵が作戦通りに魔術を使うと、味方全員に水の鎧が出現した。
(味方全員に状態『水鎧』が付与されました)
「ミリア・クリシェラルの名において願い奉る。世界の法則を司る神よ。今、僅かの間だけ、あなたを無視します。あまねく生物に完全なる凍結を……。『アブソリュートゼロ』」
ミリアは妖怪火車に向けて魔法を撃ち込んだ。だが、妖怪火車は炎を噴き上げて魔法を打ち消した。
「ハハハハハ、俺の情熱はその程度の魔法では消せねぇぜ!」
妖怪火車は走行したまま勝ち誇っていた。そこへ、ユーが空中から妖怪火車に突っ込んでいく。
「プーロ・テイン!」
ユーは両手を頭上に組み、ハンマーの様に打ち下ろした。だが、妖怪火車は素早く攻撃を避けた。
「遅いぞ!ノロマ!」
妖怪火車は蛇行運転しながらユーを挑発した。
「ミリア、ユー、私が動きを封じます。そこから連携を!」
「分かった」「プロテイン」
「葵さん!私が動きを封じたら、水矢貫をお願いします!」
「分かりました」
「ミリアは、葵さんの後でアブソリュートゼロを、ユーは止めにホーリーウェイブを!」
「分かった」「プロテイン」
アランは作戦を伝えると即座に魔術を発動させた。
<闇鎖縛>
漆黒の鎖が地面から湧きだし、妖怪火車を縛り付けた。
「うげぇ」
走行中に捕縛されたため、妖怪火車は変な声を上げた。
<水矢貫>
葵が魔術を発動させると水の矢が2本妖怪火車に命中した。
(妖怪火車の状態異常『永久燃焼』により、攻撃が無効化されました)
(妖怪火車に状態異常『永久燃焼』が一時的に消失します)
(妖怪火車に状態異常『水濡れ』が付与されました)
「ミリア・クリシェラルの名において願い奉る。世界の法則を司る神よ。今、僅かの間だけ、あなたを無視します。あまねく生物に完全なる凍結を……。『アブソリュートゼロ』」
(状態異常『水濡れ』の効果により、氷属性のダメージ倍増しました)
妖怪火車は一瞬で氷、粉々に砕け散った。
(妖怪火車は死亡しました。状態異常『不死』が発動します)
システムメッセージの後で、砕け散った妖怪火車の破片が一か所に集まりだした。そこへ向けて空中から拳を開いて両手を前に突き出したユーが吼える。
「プーローテイン」
ユーの両手から純白の光の束が、妖怪火車の破片に命中する。
(妖怪火車は『浄化』の効果により、状態異常『不死』を消失しました)
妖怪火車の破片は光に包まれて消滅し、後には灰色の魔石だけが残った。そして、白い空間が消えて神社の境内に戻った。
「これで、迷宮攻略ですか?」
「いいえ、まだですよ。葵さん。本当の戦いはこれからなんです」
「ええ?どういうことですか?」




