シフィ姉ちゃんの深層思考の考察⑦
「提案するのは、大きく分けて3つの案を同時進行で進めていく内容ですから、話が少し長くなります」
「ほう、軍師が考えそうな小難しい案を、幼き君が語ると言うのか?」
今まで自分の提案を悉く足蹴にしたラスレちゃんに、次は立場が逆転し自分が足蹴にできるのが、よっぽど嬉しいらしく、ニヤニヤして気持ち悪い笑みを浮かべている。
「はい、コスタドル様、なるべくご理解頂けるように努めますので、暫くその話を聞いていただけないでしょうか?」
ラスレちゃんは、グランさんを1度チラ見してから、コスタおじちゃんに物怖じせずに話し始めた。
「うむ、わかった、話し終えてから質問するとしよう」
ご機嫌斜めなコスタおじちゃんは、お手並み拝見と言わんばかりに、横柄な口調で返事を返した。
「はい、ではそのようにお願いします」
「それでは、最初の提案ですが、これは、私の家が大きく関わります」
ラスレちゃんの顔がマジかるラスレちゃんの顔になり、しっかりとコスタおじちゃんの機嫌の悪そうな顔を、正面から見据えて話しだした。
「そして、その提案には、私の家も大きく関わります」
ラスレちゃんの後ろに控えていたセルディさんが、ラスレちゃんの発言の後を引き続き、さらに言葉を発しながら、少し前に歩み出てきた。
「先程までのコスタドル様の立ち振る舞いの様子や、私達とやり取りする話の内容から想像したのですが、どうもコスタドル様は、私共の家柄の話を伺っていないご様子でしたので、改めて当家の名乗りを含めて、まずは2人の自己紹介から始めますので、そのままお聞きください」
ラスレちゃんは、コスタおじちゃんに「貴方が部下からの報告を、もっとしっかり受けていないから、話がややこしくなるのよ。さっき交渉してた、やさしいお姉さん騎士と、交渉も妥結して、一緒にいたグランさんといい雰囲気でお話してたのに、なんで、今更しゃしゃり出てくるのよプンプン!!」と、いう思いを言葉の裏に滲ませて、提案をするための前準備の説明をしようとしていた。
「すまん!家柄だと!」
「あの交渉官め!報告はどうした!」
「間抜けが!!聞いてないぞ!!」
家柄というキーワードに激しく反応したコスタおじちゃんは、今さっき約束した内容を早くも破ってしまう。
「唐突に話の腰を折るようで悪いのだが、暫く私の後ろに控えているグランドと話をさせてくれないか」
「はい、私は構いません。どうぞ、お話しください」
ラスレちゃんとグランさんは、お互いに目線でパチパチと合図を送りあっている。
2人共にコスタさんに対して心が通じあうのだろうね。
「すまん」
コスタおじちゃんは、ラスレちゃんに簡単な謝罪をして、後ろに控えていたグランさんに詰め寄っていく。
「どういうことだ!!私は報告を受けていないぞ!!」
コスタおじちゃんは、激怒プンプンのようだ。
「はーあ、父上、よーーーく聞いてください!!」
そのコスタおじちゃんと対面しているグランさんは、深い吐息を吐いて、コスタおじちゃんに2人の目が注目している状況でも、全く全然知ったことかとお構いなしに、コスタおじちゃんを相手にくどくどと説教を開始した。
「父上が命じた最初の交渉者が、交渉の途中経過の報告をしていると、父上が突然話の途中で頭が切れて、交渉者の話を途中で遮ったのを覚えていますか??」
「いやっそれはだな........」
コスタおじちゃんの目線がふらついた。
あーあ、そういう事か、わたしの思考の海を漂う間に2人と最初の交渉した人がいたのね。
「報告を最後まで聞くように、私を含めた全員が進言したのを覚えていますか??」
「うぐっそれは........」
コスタおじちゃんの頭もふらついた。
「そして、交渉者の命令を取り消して、生意気な冒険者の分際で私の提案を蹴った代償を払わせてやると、威勢のいい言葉を我々に吐き捨て、父上の見栄を貫き通す為に、勇み勢いをつけて、そこの2人と交渉に入るから、報告者がその内容を正確に報告する暇がなかったのですが、父上は、理解できていますか??」
「うぐっ........」
コスタおじちゃんの足もふらついた。
「つまりは、父上が報告者の話の腰を何回も折って、全く聞く耳を持たないのが原因です」
「うぐっ........」
コスタおじちゃんの身体もふらついた。
「そして、更にこの際だから、言わせてもらいますが、なんでも直ぐに出しゃばるから、結果としてこのような醜態を晒すことになるのです」
「うぐっ........」
コスタおじちゃんは、ふらつきながら、心を痛めたのか胸を抑える。
「私は父上が部下をもっと信用して、最後まで話をしっかり聞くように進言します」
「今度こそしっかり、胸に刻みつけてください」
「ぐはっ........」
コスタおじちゃんは、もう立っていられないのか、その場でしゃがみこんでしまう。
「更には、是非とも、1度立ち止まり頭を回転させ、しっかりと検討してから、行動するように進言します」
「今度こそしっかり、頭の脳に刻みつけてください」
「ぐふっ........」
コスタおじちゃんは、しゃがみ込む事すら敵わず、両手両膝をついてリアルOZの体勢に移行してしまう。
「父上、今回は目撃者もいますので、この辺で終わりとしますが、今回のように家臣団の諫言にまったく聞く耳をもたない行為が続くようなら、今度は、大勢の民衆が詰め掛ける前で、醜態を晒すように手配しますので、早急に性格改善をなさってください」
プルプル..プルプル...プルプル..
コスタおじちゃんは、リアルOZの体勢から、ぷるぷると震えだしてしまう。
「これを、本日最後の進言とします」
「ですから、よーくご自分を見つめ直してください」
「それでは、父上、交渉相手側が、首を長くして待っていますので、どうぞ交渉の場にお戻りください」
グランさんは、考えなしのコスタおじちゃんの愚行を諌め満足したのか、満面の笑みを浮かべている。
そして、最後まで責任を持って部下から奪った職務を全うさせようと、コスタおじちゃんに再び交渉の場に戻るように進言した。
そのコスタおじちゃんは、すっかり牙が抜け落ちて、震えた子犬のようになっちゃった。
コスタおじちゃんは、人の話を全く聞かない人で、戦いの時もそうだったけど、直ぐに最前線に出たがるタイプなのね。
つまりは、シフィ姉ちゃんと同じく脳筋筋肉んタイプで、シフィ姉ちゃんとは、凄く気が合いそう。
「うむ、わかった」
気の抜けた返事を返して、コスタおじちゃんは、元の場所にフラフラと戻っていく。
「すまん、話を続けてくれ」
とぼとぼと元の交渉の席にたどり着いたコスタおじちゃんは、弱々しい声で再開を促していた。
グランさんは、ラスレちゃんに向けて目線をパチパチさせて、合図を送っている。
「はい、それでは話を再開しますので、お聞きください」
ラスレちゃんは、グランさんの目の合図を確認し、グランさんに向けて満面の笑顔をプレゼントしてから、ふんすと気合を新たにして、提案のお話を再開させた。
「それでは、私達2人の自己紹介から始めます」
「まずは、最初は、私から.......」
「私は、ラスレシア・ハク・アルスレグス、アルスレグス宮廷魔法伯の家の3女です」
因みに、ラスレちゃんの伯爵家は、私の家と同じく3男3女だよ。
ジェマス婆ちゃんがたまに学校に来て授業してくれるんだけど、授業内容が超わかりやすくて、優しいくて、放課後に個人授業も私の為だけに開いてくれるから大好きなんだ!!
「宜しくお願いします、コスタドル様」
そう、自己紹介の言葉を終えるとラスレちゃんは、貴族の令嬢がよくする会釈をしてから、少し後ろに下がる。
コスタおじちゃんは、その自己紹介を聞いて、なんだか、急にお顔が赤くなった気がする。
ラスレちゃんが後ろに下げると、同時にセルディさんが、少し前に進み、自己紹介を行おうとする。
「次は、私ですね」
「私は、セルディアス・ダン・ハルツブルト、ライツブルク辺境男爵家の次男です」
セルディさんのお家は、学校からかなり遠いって聞いて、可哀想だと思ったからさ、アヴィちゃん特戦工房隊のみんなにお願いして、セルディさん家とセルディさんの下宿先に転移門設置したら、大喜びしてくれたよ。
それから、月に1回、セルディさんのお父さんのゲオルおじちゃんと、知り合いのバグラおじちゃんが魔導戦術訓練の授業をしてくれるようになったんだ。
私の作った魔導兵器を、いつも心から褒めてくれるから、二人共大好きなんだよ。
「宜しくお願いします、コスタドル様」
セルディさんも自己紹介の言葉を終えると、貴族騎士のお堅い挨拶動作をして、後ろに下がる。
コスタおじちゃんは、その自己紹介を聞いて、お顔が茹で蛸のようになって、茹で具合に耐えられなくなったみたい......
コスタおじちゃん、大爆発しそうな雰囲気!!
こりゃあ、汚い唾が、飛び散りそう。
「待て待て待て待てー!!」
見事、大爆発したコスタおじちゃんは、周囲に唾を吐き出し、ついでに言葉も一緒に吐き出した。
コスタおじちゃんは、2人に何が気に入らないのか、わからないけど、いちゃもんをつけたいお年頃なんだよ、きっと.......
「父上!」
グランさんは、コスタおじちゃんを諌める言葉をかけるが、全然効果がなさそう。
「君達、身分を偽るにも、程があるぞ」
コスタおじちゃんは、大爆発させた感情を隠そうともせずに、2人を問い詰め断罪させようと、キレキレな言葉で叫ぶように、声を振り絞り言葉を吐き出した。
そんなコスタおじちゃんだけど私には、おじちゃんが2人が嘘をついたと勘違いして、から騒ぎしているようにしか、見えないんだけど.......
しかも、前の交渉人と報連相が全く出来てないみたい。
「食うに事欠かない、立場も我らとは天地の差がある名門貴族家の御子息が、何故魔物の餌になるしか能のない冒険者として参加しているのだ」
「今回は、学校で冒険者として腕の立つ者達を集めたのだぞ」
「身分の高い名門貴族の御子息は、このミッションを外すように事前に通達が来ているのだ」
コスタおじちゃんは、意外とまともな意見を口走る。
原因は、うちのシフィお姉ちゃんでした。
御免なさい。許してっCHU♡!!
オエッ!☆・*:.゜∵。ゲホッ!☆・*:.゜∵。
その我が家の迷惑お姉ちゃんは、元気なわんぱく小娘のように、目をキラキラさせて、もふもふ素材目掛けて走り回ってるよ。
すっかり童心にかえり、無邪気に走り回っているね。
ここに魔導写真機があれば、貴重な収入源の販売品が大量生産できるんだけど、つくづくこの世界は、使えない世界だよ。
まったくモー!モー!モー!
あのエロチビデブ王族からなら、かなりの大金をむしり取れるのに.......
「おかしいであろう」
コスタおじちゃんの茹で蛸具合が少しずつUPしてるよ。
血管も浮き出てきて、私みたいな純粋な乙女には、耐えられない表情をしてるから、誰でもいいから、その茹で蛸を水につけて冷やしてあげてほしい。
私が側に居たら、超速攻で神水ぶっ掛けてあげるんだけどな。
「父上!!」
グランさんは、コスタおじちゃんを諌める言葉をかけるが、まったく効果がないよ。
「このダンジョンは、既に魔境とかしている」
「このような危険な場所に、名門貴族家の子息が、家来もつけずに最前線で戦うのは、そもそもありえないのだ」
コスタおじちゃんは、更にまともな意見を口走る。
原因は、またまたうちのシフィ姉ちゃんでした。
御免なさい。許してっCHU♡!!CHU♡!!
オエッ!☆・*:.゜∵。ゲホッ!☆・*:.゜∵。
「君達はそれを理解した上で、そんな虚言を吐いているのか?」
「父上!!!」
グランさんは、コスタおじちゃんを諌める言葉をかけてるけど、寧ろこの言葉がコスタおじちゃんに力を注いでヒートUPさせてるように感じちゃう。
「身分を偽ると、その場で貴族に処刑されても文句は、言えないんだぞ!!」
「君らの話している妄言は、冗談では済まないんだぞ」
「私の話を聞いて同情した君らを切り捨てるのは、流石に気が引ける」
「今なら、聞かなかったことにしてやるから、素直にその発言を取り下げろ」
「「父上!!!!」」
グランさんは、諌める言葉を叫ぶように声を張り上げ、コスタおじちゃんに訴えかけた。
声デカッ!!ビックラしたっCHU♡!!
「グランド、これは、どういうことだ!!」
もう、絶妙な茹で蛸具合のコスタおじちゃんは、漸くグランさんの声に反応したけど、今度は、グランさんを問い詰めようと迫ってきた。
「交渉者が、あのような戯言を、そのまま野放しにするとは、一体全体何がどうなっているのだ」
コスタおじちゃんは、なにやら、パクパクしていて、パニクっているみたいに感じた。
もう、いい年したおじちゃんなんだから、もう少し落ち着いたらどうかな?
いい年したおじちゃんだから、パクパクしたいお年頃なのかな?
若いグランさんの方が、若いのに落ち着いていて、コスタおじちゃんよりも頼りになりそうに見えちゃうよ。
「「父上!!声が大きいです」」
コスタおじちゃんより、大きな声で叫ぶグランさん。
「「話を最後まで聞いてから、質問してください」」
「うぐっ」
またまた、やり込められたコスタおじちゃん。
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