それぞれの登校日
ナギの初日の登校『少しの期待と不安』
寮から学園の道のりには綺麗な桜が咲いている。ナギはゆっくり歩いて考え事をしていた。
今日からナギは孤児院から離れてレヴァイン学園の中等部に配属される。ナギにとっては期待と不安が渦巻くファーストコンタクト。失敗だけはなんとしても避けたいとそう考えていた。
もしスキルの発現が早い場合は国家審査の下にそれ専用の施設等に入らなければならない。もしくは座学ができる年頃なら飛び級という制度も実在する。
そのため、スキルの発現が早かった者や貴族での者は自信過剰になってしまう傾向が強い。実際、権力を振りかざし学園の実権を握ろうとしている者も中にはいるらしい。中等部までの話にはなるが…。
突然、背中を押されるような風のふわりとしたものを体に感じる。まるでガンバレと言われているような力強く。そして温かい風が。
『知ってる人がいたらいいな…。あいつは勘弁だけど。』
そう一言呟く。そうして歩いていると後ろの方からおぞましい速度で迫ってくる『疫病神』の姿が見えた。ナギは急ぎ足で学園に向かうことにした。
『俺のライバル達が俺を待っているー!!おっ!ナギを発見!!』
気のせいだろうか…。そしてこいつはクラス全員をライバルと思いながら入学後も過ごすつもりなのか…。これは絶対に俺の存在を悟らせるわけにはいかない。これほど離れているにもかかわらずやつの声が聞こえるのはどういうことなのだろうか…。ナギはついに急ぎ足からランニングする速度に変更することにした。
ギルの初日の武勇伝『伝説への第一歩』
俺は朝、寝坊した。
寮長に俺の努力の結晶を暖炉で焼かれただけでなく、我がライバルのナギと別々の部屋。しかも、かなり俺の部屋と遠い場所に配置されてしまったからである。
『くそっ!!ナギがいれば毎日起こしてもらえるのに!!』
渦巻く欲望を口にしながら昨日買ってきた。カップラーメンと麦茶を飲み食いしている。
なぜカップラーメンを食べているのかというと昨日はしゃぎ過ぎてお金を使い過ぎた事が挙げられる。
『あんなもの見せられたら溜まったもんじゃない!!』
そして、彼はなぜ麦茶を飲んでいるのかというと、ある人物がこの麦茶を朝に必ず飲んでいるという情報を耳にしたからである。
後でその情報がガセ情報だったということは後々知ってしまうことになるのだが…。
そうしている内にどんどん時間が迫ってくる。
もし遅れるような事があればシスターに情報が漏れるよう寮長の女将が対策していた現場を目撃してしまった。
『まずい!マジで遅れるかもしれん!!俺のライバル達が待っている!!』
彼は勢いよく学園に向かって走り出す。
気のせいだろうか?遅れそうになっているにもかかわらず、周りの新入生達はまだ身支度を整えている。なら俺のする事はただ一つライバル達を出し抜く為に先回りする。そう彼は誓った。
『俺のライバル達が俺を待っているー!!おっ!ナギを発見!!』
唐突に見知った人影を発見。追撃開始。全力で彼を追う。彼は俺にまだ気づいていない。チャンスだ。だがいくら追っても彼には追いつかない。
『どうしてだ!?なぜナギに追いつかない!?出力が足りていないのか?!』
そうしている内にあることに気づく。ナギが走り出したからだ。
『くそっ!!気付かれたか!だが、まだだこんなところで終わってたまるかー。』
彼はさらに速度を上げて彼の背中を追う。彼が認めた最大のライバル。果たして追いつく日はやってくるのか否か。
ルナの初日の登校『温かな日差し』
ルナは目覚ましの音で目覚める。
『今日が初登校。気合入れないと。』
それと同時に彼との宿のことを思い出す。急に恥ずかしくなり顔がとても火照っている。もしかするとリンゴよりも赤くなっているのではないかと感じるほどに。
横を見ると白蓮はまだスヤスヤと息を立てて寝ている。そろそろ起きる時間だというのに…。
『白蓮ちゃん。起きないと遅刻するよー。』
そのルナの言葉で白蓮は目を覚ます。
『おはようー。ルーチャン。昨日はよく眠れた?』
そのような親しみを込めた挨拶にルナは心躍っていた。そのような呼ばれ方を孤児院ではされていなかったためである。大抵言われるのは、『天使ちゃん』と言われるだけで孤児院の外に出ようとしても周りの子供達に引き止められてばかりだった。
そういえば、男の子と長く話をしたのは、ナギが初めてだったかもしれないと思う。そして、またリンゴのように赤くなっていくのがわかった。
気がつくと何故かナギの事ばかり考えてしまっている。とりあえず、初登校の為に張り切って身支度を整える。そして白蓮と共に朝食を取る。孤児院時代からかかさず食べているのはパンとジャムとヨーグルト、そしてルイボスティー…。
朝食を取った後、ついに登校する時間になる。
近くには桜の並木道が広がっている。
『とてもいい1日になりそう…。』
彼女はそう呟きながら親友と共にその道のりを歩んでいく。
その近くには追いかけっこをしている2人がいるのだが…。彼女達はその事は知るのはまた別のお話。
白蓮の初日の登校編『悲しみのさきに』
少女は夢を見る
白蓮はとある子爵家の三女である。彼女はスキルホルダーとわかったのはつい最近。魔法に火の属性に特化したスキルの持ち主だ。そして彼女は入学式の広場で友達作りをしようと張り切っていた。
『今日こそは…。』
確固たる信念を露わにする。だが逆に信念が強すぎるせいか誰も近く気配がない。そもそも彼女のオーラが強すぎるのだ、心の声が悲鳴を上げる。
『うわーん。なんで誰も話をかけにやってこないの?!他の女の子達は初対面なのにあんなに楽しくお話をしているのに…。子爵家のでだから?!容姿はそれなりに自信があるつもりなんだけどー?!』
そうしている内に虚しくなってきてどんどん会場の隅に自分を追いやっていく。
『みっみじめだ…。こんな筈じゃなかったのに…。』
心の中でシクシク泣いていた。もう諦めようと思ったその時だった。初めは間違いか何かではないかと思った。自分に話しかけてきた人物がいるなんて…。
『あ…あのぅ〜。だっ大丈夫ですか?』
その声がする方に目を向ける。そこには銀色の髪をしたスタイル抜群の美少女が立っていた。
私は神でもすがる思いであった。そして彼女と話していく内に自分と同じような気持ちで隅に追いやられてきていたことを知った。
『あなたは名前はなんていうのですか?』
『私の名前はルナです。孤児院から来ました。』
『私は白蓮。子爵家の三女なんだけど…。』
まずい。そのことは伏せておくつもりだったのに話してしまった。彼女はひどく後悔した。
だが彼女は初めこそ強張っていたが、話していく内に白蓮は思う。彼女はものすごく優しいのだということを。
『よければこれから私。寮生活になるんだけど…一緒に同居してくれませんか?』
彼女は快く引き受けてくれた。それが白蓮にとってものすごく嬉しかった。
『あなたは孤児院出身という話だけど、知り合いはいるのかな?』
いつのまにか敬語で話していた口調も柔らかなものとなっていた。
『はいっ!いるんですが…ちょっとその人の近くに同じ孤児院出身の『疫病神さん』がいるので…逃げてきました…。』
余程、その疫病神とは話したくないか何か悪いことでもあったのだろうと悟った。
しばらく経ってその知り合いを2人で探してみることになった。
ひときわ人が多くなってきたところにその知り合いは立っていた。
『あの人です。ナギさんというんです。』
そこには黒髪をして顔が整っているスタイルが良い少年が立っていた。その際で少し萎縮してしまった。何せ男の子と話をした経験がないからである。
『わっ私はちょっとトイレに行ってくるからっ』
そういうとトイレの方向にまっしぐらに逃げていった。そして彼女は後悔していた。
『ああ〜。やっちゃったよー。ルナから離れたら最後もう2度と会えないかもしれないのに…。』
トボトボ白蓮はトイレから出てくる。
そうすると当然のようにルナは白蓮が出てくるまで待ってくれていたのである。白蓮はその時な誓ったのである。彼女を裏切る事がないようにすると…。
そうして夢の中からルナの言葉が聞こえて朝を迎える。心地よい雰囲気に包まれて言葉が自然にこぼれ落ちる。
『おはようー。ルーチャン。昨日はよく眠れた?』
彼女はどこか嬉しげだった。そうして、彼女が毎日同じ孤児院時代から食べていると言われているものを一緒に食べる。
今があるのは自分と彼女が神様が与えてくれた祝福なのだと…。
その喜びを噛みしめながら初の登校日を2人で歩いていく…。