レヴァイン学園 入学式編
朝がやってくる。ナギは必ず決まった時間に目が覚める。それは日が上がってくると同時刻。
『よく寝れなかったな…。』
ナギは体を起こそうと体に力を入れる…。
ちょっと待て…。なぜか隣に用意してもらっていたベットで寝ているはずのルナが何故俺の寝ているベットで寝ている…。そして俺の右腕を枕がわりにして動かすことができない。これはかなりまずいのではないか…。これは色々緊急事態発生だ。
どうしようか考えている暇もなく、彼女は目を覚ました。
『おはようございます。ナギ君』
妙に距離が近いがまあそれはよし。ナギの冷や汗が止まらない。どう弁明しようか考えている。
次の瞬間彼女は顔を真っ赤にして謝ってきた。
『ごめんなさい。なかなか寝付けなくて…。色々試してたら横で寝てしまっていたんです…。』
ナギは思う。いくらなんでも無防備過ぎて何もいえないと。
『そうか…。ちょっとビックリしたけど自分だけ寝れないと考え込んでたからお互い様だったんだね。』
とりあえず二人とも朝食をとりにいき、レヴァイン学園の集合場所に一緒に向かうことにした。
レヴァイン学園の集合場所であるグラウンドには沢山の生徒達が続々と集まっていた。
『うわー。人が沢山集まってますね。』
ルナはそのようなことを言って周りをキョロキョロしている。その様子を周りの新入生が彼女を見てはヒソヒソ話をしている。大抵想像はつくがルナはかなりの美少女で言動も可愛いからすぐに人の目を引くのだろうと思う。
そうしている内に疫病神が姿を現す。
『ナギ見つけたー。探すの苦労したぞ。』
いや探さないでくれ。お前なんでわざわざ探しにきてんだよ。と感じているが本人にはその思いは届かない。ルナはというとギルが来たことによってどうするか悩んでいたのでこっちに来ることはないだろうと思っていたが、数分後ギルもいるがナギがいるからか近づいてきた。
『この前はすいませんでした。』
ギルがルナに向かって謝罪する。ルナは驚きを隠せなかったが、すぐにナギが手を回してくれたことを理解した。そしてお互い名前を知り、ナギとルナはギルがここまで来るのに苦労した武勇伝を聞かされそうになった直後、入学式が始まった。
入学式終了し、ナギは寮に入る為にギルと寮を訪れていた。寮長の女将は物凄く優しい人柄だったのですぐにナギは仲良くなった。
入学当初は2人1部屋という割り当てらしく、仕方なくギルと同じ部屋で暮らすことになった。ナギとしてはなんとか避けたい一心だったがその願いは儚く砕け散ったのである。
『俺は運を使い切ってしまったのかもしれない。』
一方、ギルはというと
『ライバルと共闘って悪くはないよなー。俺達2人ならどんなことでもヘッチャラだぜっ!!』
なんてことをぬかしてやがる。
そして俺達2人は買い出しに出かけることにした。
出かけてすぐにギルとは離れ離れになっていた。というのもギルもこんな都会に来るのは初めての経験だったからである。市場に出て数分で自分の横からいなくなっていた。探すのは面倒だったのでそのままにしておくのが得策だろうと判断した。しばらく歩いているとナギが探していたお目当てのお店があったのでその店に立ち寄る。ナギが探していたのは自分が扱えそうな武具。そしてこのような都会でしか売られていない物を探していた。店内に入るとそこにルナともう一人の美少女が武具を眺めていた。
その美少女は赤みがかった髪をしており、ルナと同じくスタイル抜群ではあるが胸はルナよりは少しだけ小さい。腕には近接格闘用の武具が装備してあるので、なんらかの拳法を習っていたことは間違いない。
あまりに二人とも真剣に見ているので声をかけないようにと思っていたのだが、ルナがナギに気が付いた。
『ナギ君!ちょっとこっちに来て!』
なんだかわからないがそっちのほうに向かうことにした。そしてルナは言う
『ナギ君!この剣私にあってるかな?』
唐突のことだったのでわからなかったのだが、どうやら彼女は武器を買おうとしているのだが悩んでいるらしい。もう一人の美少女は言う。
『ルナ。とりあえずどんどん買って試したらいいと思うんだけど。』
『白蓮ちゃんそれはお金に余裕がある人なら出来るかもだけど私は貧乏だからそんなことできないよ…』
どうやらこのルナの隣にいる彼女は白蓮というらしい。多分お金持ち。そしてかなりテキトーな性格のようだ。
そしてナギは言う。
『ルナはどんなスキルを持っているんだ?スキルによってまた選ぶ武具が変わってくると思うんだけど…』
『長剣のスキルになんだけど…。普通のみんなが使ってる剣だと剣を振る速度が遅いからダメなんです…。だから軽そうな剣を探してるんですけど軽いものってないじゃないですか…。』
まるで自分の恥ずかしいことをバラすかのようにルナが話している。
『とりあえず自分に合いそうな物を探すしかないと思う…。これとかはどう?』
そうやってレイピアを試しに渡してみる。
『確かに振りやすいんだけどスキルが使えないです…。』
ルナは色々なレイピアを持って振ってみたときであった。その中で一つだけレイピアの刀身が少し光ったのだ。これはスキルを発動した際になる現象である。ナギはその瞬間を見逃さなかった。
『そのレイピアがいいと思う…。』
あまりに唐突にナギが言い出したので彼女達は固まる。
『どういうこと?』
白蓮はナギに問いかける。
『そのレイピアでリナがスキルを使用したのが見えたからだけど…。』
『そんなの目で分かるわけないじゃない。魔眼でもない限りその予兆すらわからないのよ…。』
『魔眼』とは生まれつき魔法を行使するための詠唱や魔法陣なしで魔法を行使できる特殊な目。その存在自体が非常に珍しい。その目の力は死後も残り続ける。魔眼は全ての魔法に応用することができ、魔力の流れをみることができる。そのような力があるが為に無理やりその目を取られてしまったり迫害を受ける対象になるケースも存在する。現在は各国ともに迫害•略奪の禁止条例が出されている。実際、人工的に魔眼を作らないのかという実験もしているが成功に至ってはいない。
確かに白蓮の言う通り普通の人には区別がつかない。なぜならそれが凪『ナギ』のスキルでもない特殊な力『魔眼』の持ち主なのだから。
最終的にルナはレイピアを買って大満足していた。
後日、そのレイピアがスキルを本当に扱えたのは言うまでもない。
そして改めて白蓮と自己紹介を終えた後、夜食がてら3人で食べて白蓮とも仲良くなり、ルナと白蓮と別れて寮に帰ってきた。
ギルが何か机に向かって熱心に何かを吟味している。
『ギル何してるんだ。お前にしては珍しく机に向かって勉強でもしているのか?』
ギルは一瞬こっちを見てニヤニヤしながら答える。
『馬鹿野郎。そんなことするわけねーだろ!!今年の新入生で可愛い子がどこにいるか現状把握してんだよ!! あっ! この白蓮ちゃんって女の子可愛くね?!マークして唾付けとこー!!』
『あとカッコいい決め台詞の練習もしとかなくちゃっ!!『ここは俺に任せろ!!』的な感じのやつ』
おい。このゲスやろう。しかもなにそのセリフすごくダサい。言ったら一発逆転ホームランになっちまうぐらいの破壊力だぞ。
『ナギも見たいなら素直に言えよ。まぁ見せてやんないけどなっ!!フハハハハ!!』
こいつ、今から第三次世界大戦でも起こさせるつもりか!?もはやムカつく通り越してなんも思わなくなってきたわ。
『ん?待てよ…。白蓮って赤髪の女の子のこと…じゃ……いやなんでもない。夜食は食べたし俺はもう寝る。』
ギルの動きがピタリと止まる。そしてロボットのように凪の方を見る。
『イマナンテイッタ?ハクレン?ドーユーコト?』
『いやなんでもないからなっ!?』
しまった。地雷を踏んでしまった。ラグナロクが始まってしまう。
ギルが凪の上に跨がりマウント状態になった。
『今日は寝かさないぞ。凪。』
こうなるとギルは止まらない。だが抜け道がある筈だ。思考回路を巡らせる。そして作戦行動を開始した。
『わかった正直に話す。だから退いてくれ。』
ギルが退いた瞬間ギルの体を椅子に縛りつけて逃走する。
『あっ!このやろう!待ちやがれ!だが流石俺のライバル!絶対に探し出して血祭りに上げてやる!!』
ナギは脱走しようとして辞めた。どちらにしても逃げられないことは確実だからである。
『縄は解いた。もう逃げ場も退路もないぞ。洗いざらい履いてもらおうか!ナギーーー!』
唐突に寮の部屋の玄関が開く。救世主の登場である。そこに現れるは寮長の女将である。
『コラー!!何時だと思ってんだい!!どいつもこいつもバカ騒ぎしやがって!!ってあら 凪チャンちょうどいいじゃない。言い訳でも聞こうかしらね』
なぜか女将はウキウキ気分である。ただし、右腕に持っているドンキにはまだ新しい血が付いたようなものが携われている。これはやらなければヤラレル。ナギはそう直感した。
『女将。この度は騒いでしまい、誠に申し訳ありません。ですがギルが新入生の女子の写真を集め、舌舐めずりするだけでなく、自分の知り合いのルナを悪用して良からぬことを企んでいた為、問いただしていたところ口封じに合いそうになったので騒ぎを起こしてしまいました。それがこの録音したテープでございます。』
女将はそれを聞き取ると2人共説教は食らったが、そのあとすぐに凪だけの1人部屋を手に入れることに成功した。
後日、ギルはヨボヨボになっていた。風の噂によるととある生徒に秘密を寮長にバラされて知られてしまい、追加で制裁を加えられたらしい。