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輪廻に囚われし者  作者: 烈火
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とある孤児院での最終日

とある小さな村の孤児院で少年ナギは暮らしていた。孤児院に預けられる者達は大抵なんらかの理由で預けられる。その中で優秀だと判断された者達は国家の育成機関で学び、その中でも優秀だと判断された者達は軍の組織に入隊が許可されて将来の安泰が約束される。惜しくも入れなかった者達はその国家から別の国家に行く事は原則禁止。だが、一部の裕福な貴族達は入国ができると制限されている。大抵その育成機関に入ることができるのも裕福な者達がほとんどだが、何度か孤児院からも育成機関に入った事例がある。だが実際入れたとしても最終的には冒険者か生産者側にまわるというのが一般的である。

ナギはそんな数の事例の中でもかなり特殊な存在である。スキル1つあれば良いと言われていたものが、何せ2つ持つのだから。2つ持ちのスキルホルダーなど希少。それにまたナギには別の理由も存在する。


ナギは屋根の上から空を眺めるのが好きだ。時間が経過するとその色はあらゆる色に変化する。

『ずっと眺めていられるな…』

そう呟いた時であった。近くの窓が勢いよく開く。

『おーい。絶対ここだろー。ナギー俺の荷物纏まってないんだー。助けてくれよー。』

この少年は『ギル』。ナギの自称ライバルという事らしい。ちなみにこいつと関わるとこれでもかというぐらいのトラブルに会う為、勝手につけている名は『疫病神』である。ちなみに本人に言うと他でもないことになると直感があるので心にしまっている。あと片付けがものすごく苦手。ナギ自身あまり関わりたくないと思っている。なぜかこの度3人孤児院から国家の育成機関である『レヴァイン学園』に入学することとなったうちの1人である。

『なぁ。聞こえてるのかー。そこら辺にいるのはわかってるんだぞー。』

ギルはナギがなにかと近くにいないと落ち着かないらしく、こうして探し回ってはその尻拭いをさせられる。こうなるとギルは誰にも止められない。

ナギはその話を聞く前に窓と反対方向に取り付けてある梯子から静かに脱走する。梯子から地面まで降りて頭上を確認するとまだギルは屋根の上にいると勘違いしている。

ナギは災厄を逃れることができた。とりあえず彼が来なさそうなところに移動しなければと思った矢先の事だった。不意に右腕を誰かに掴まれたのだ。ナギは思った。彼は悟った。やはり退路などどこにもなかったのだと。捕まってしまったのだと。

すると思っていた事とは裏腹に別の言葉が飛び込んできた。

『あの…ナギさんって今時間ありませんか?』

透き通った声でありながら銀色の髪をして目が大きくて美しい美少女が自分の袖を引っ張っているではないか。

ナギは思った。この美少女は何者だと。そしてそのまま答えてしまった。

『確かに俺はナギって名前なんだけど、君は誰なのかな?自分に女の子の知り合いなんていないんだけど…。もしかして人間違いじゃない?』

少女はそれを聞いて安堵の顔をしていた。

『私の名前はルナ。あなたと同じ『レヴァイン学園』に通うことになったものです。…その孤児院から3人も入学するという話があったので同じ仲間が2人もいるといことが嬉しくて…。一度2人のどちらかに会ってみたいと思っていたのです。』

話している内にわかったことだが、彼女は隣にある孤児院で暮らしているらしい。

確かにナギ自身もう1人の孤児院からレヴァイン学園に入学するのは誰かと気になってはいた。そして同時にまともな仲間がいるという安堵に包まれた。

『俺はナギ。こちらこそよろしく。』

2人は握手を交わした。

『実はさっき、もう1人にも挨拶したのですが…そのかなり特殊な人で心配していたのです。そのライバルだという話でしたので…。ですが、まともそうな方だったのでよかったです。』

その時なぜ安堵の顔をしたのかを悟った。おそらく美少女に声をかけられて舞い上がったであろうギルの姿を。

『あいつには関わらない方がいいぞ。いつも災厄な出来事に巻き込まれた挙句、奴の尻拭いをしないといけない。疫病神だからな。』

そう話すとルナはクスクス笑い出す。

『私も同じことを考えていました。』

どうやら馬が合うというのはこのことを言うのだと実感した。

ルナが話し出す。

『そういえばレヴァイン学園の持ち物で聞きたいことがあったのですが聞いてもいいですか?』

そうして2人で話し込んで行く内に日が暮れはじめる。話が弾んでいるせいかあっという間に過ぎ去る。

『今日はありがとうございました。また学園で会えることを楽しみにしています。』

ルナはそう言うと孤児院の方に戻っていった。


自分の孤児院に戻るとギルがシスターにお説教を食らっている最中だった。

こっそり聞いているとやはり荷物をまとめていなかったこと•見知らぬ美少女を困らせていたということだった。

そして、シスターの命令により自分はギルの荷造りの手伝いをさせられている。

『なぜ俺が…ギルの手伝いをさせられているんだ…勘弁して…』

一方ギルはというと荷造りをしながら今日の出来事を英雄譚でも語るように話をしてくる。

話を要約すると、俺を探している途中に美少女に声をかけられ告白されたという話だった。

ルナが困るといけないので本当に告白されたのか名前は聞いたのかなど質問をしていく内に告白されていないことと名前を聞いていなかったという真実が発覚。ギルはかなりの特大ダメージを受けた。

あとトドメに俺もギルに近寄らないようにしようと言った際にかなり泣きついてきたのでとりあえずルナの名前は伏せながら今度あった時に迷惑かけないよう釘を深く差し込んでおいた。


ギルと話していくとルナは俺達の孤児院では名前を聞くことすら叶わなかったらしく、天使ちゃんと言われているらしい。余程周りの子供達のガードが固かったのだということが聞いていてすぐにわかった。


ナギはギルの荷造り作業というなの尻拭いを終え、自分の部屋に帰ってきた。そしてベット横に立てかけてある剣に話しかける。

『俺、両親のようにはなれないと思うけど一緒に頑張って行こうな。相棒。』


そうして少年の長かった1日は眠りにつく。

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