7話目 執政官の資質
「次期執政官はあなたとジュラ兄さんの子供がなると決まっている。
それがバートリ家とそして、共に歩んだ来たペーチ家の決まりだ。
その決まりがあるので、バートリ家の者、もちろんペーチ家の者もより良い執政官であろうと努力することが出来る。」
「そうねぇ、それがしきたりよね。
しかし、一番大事なのはより良い執政官であることなのではないかしら。」
「もちろん、エレンの長子が執政官としてふさわしくないとみれば、住民はエレンの別の子に切り替えることが出来る。
それでもだめならば、執政官を廃止して執政官代理の派遣をペーチ家に要請することが出来る。
その間にエレンの孫をペーチ家で執政官として養成するというシステムだね。
当然、ペーチの場合は逆になるけどね。」
「半年に一度しかここに戻らない執政官なんて、その地位にふさわしいと思わないのだけれど。ジュルジュ兄さん。」
「私はそうは思わない、それにその資格を問えるのは私じゃない、住民だ。
住民である秘書官諸君はどう思うかな。」
「今の時点ではエレオノーラ様以外このバートリの執政官は考えられません。」
「私が秘書官をやめるときがエレオノーラ様が執政官をやめるときです。
私は秘書官を絶対やめたくありません。よぼよぼの婆さんになっても秘書官を続けます。きっぱり」
「エレン、住民全員に聞いても答えは同じだと思うよ。
ちなみに私も今はここの住民だよ。」
「私はこれまで何かのため、誰かのためと言って、それに流されて生きてきたわ。
執政官になったのもそう、旅団を設立したのもそう、あれは軍の理不尽さに振り回された職校生を救うためと言っても良いわ。
これまでの生き方に後悔はないけど、これからこのまま進んで行ったら後悔するような気がしているの。
まぁ、教会本山では好き勝手に生きていると思われているので、何を言っているのと言われそうですけれどね。」
「私たちの期待が重荷になって来たのでしようか。
それならば負担を掛けないように、思い切ってこの執務室に入るのは年に一回でもいいです。
その間は私が執政官の席でふんぞり返って、執政官のふりをしています。」
「それって、いつものことよね。」代理の秘書官は執政官の秘書官をよく観察しています
「うぐっ、」
「まぁ、秘書官が執政官席でふんぞり返って、さぼれるぐらい町政は順調と言うことだ。
順調な町政なのに執政官を代えたり、辞任する必要はないと思う。
この時期に執政官が変更される方が住民にとっては迷惑な話だと思うが。」
「町政を順調に導いたいるのはあなたと議会だわ。
だから、ジョルジュ兄さん、代理を取って執政官になるつもりはない。
バートリ家に養子に入れば元々はペーチ家の人だもの問題はないと思うの。」
「いやいや、それは大いに問題だろう。
エレンと言うバートリ家直系がいるのに、養子に入って私が執政官になるのは。
君がどうしようもない悪政を敷いているならともかく、住民と議会、そして代理が認める執政官がいるのに交代はないでしょ。
養子に入るのは、父やペーチ家で相談すれば可能かもしれないけど。
それも二人の兄次第だな。
あっ、俺を首にして、ジュラ兄さんを執政官代理にした方が夫婦で執政官をできるのでいいんじゃない。
旅団は誰かに任せて。
そろそろジュラ兄さんも軍を引退して、行政の方に携わってもいいころだよ。
代理を首になった私はここで行政官として雇ってもらうか、ペーチに帰って父と兄の手伝いをするよ。」
「そういえばモーリツ兄さんはどうしているの。確か軍人のままじゃなかったかしら。」
「第6軍団にいるよ。父さんもいい加減帰って来て、執政官を継がせたいみたいだけど。
そうそう、先日ふらっと帰ってきてね、何でもエレンの旅団に入る前の聖戦士職校の入試のために修行していたシュウ君とエリナさんと話をしたとかと言ってたな。
彼らがそのあと数カ月して人類の英雄になったけど、その英雄にアドバイスをしたとか言って自慢してたな。」
「そうですわ。代理の執務室にわざわざ来て自慢してきましたわ。
うっとおしいから、私言ってやったんです。
アドバイスなら、まずはと祠の解放の呪文を教えておきなさいって。
例の記憶玉を見ました。ああいう恥をかかないように、指導するのが先輩軍人の役目でしょ、てね。」くだらない記憶玉もリサーチする優秀な代理の秘書官
「だからかぁ、引きつった顔でそそくさとここを出て行ったわね。モーリツさん。」娯楽として記憶玉を見た秘書官
「人類の英雄としてではなく、ネタとして有名になってしまったわ。シュウ君。
本当はあれが半世紀ぶりの人類の勝利の瞬間になるはずだったのにね。」
「あっ、ちょっと違いますよ。執政官。
少なくてもここバートリでは彼を笑うものはどんな小さな子供だっていません。
彼は我々の英雄です。執政官ほどではないですが。
20年前、ここの住人が無為に散って失った領土を取り返してくれたのですから。
それを指揮した執政官は彼以上の英雄と化しています。
この町を大防衛戦のどん底から引き揚げて、さらに、その時失った領土を取り返した。
以上の貢献はありません。
そんなエレオノーラ様を執政官としていただく我々バートリの住民はそれを誇りにしています。」
「あなたはずっとペーチの日陰にいた我々バートリの住民を日向に出してくれたのです。
それなのにあなたが執政官を降りるという。
また、私たちはペーチの日陰者になってしまいます。」
「私も元々はペーチの人間だけど、ここで数年間代理をしていて自分ではすっかりバートリの人間だと思っている。
しかも、母がバートリ家の出だからバートリの養子になるのは別に構わないけど、英雄の代わりに当主として執政官になるのは絶対お断りだな。
エレンには悪いけどね。」
「は~っ、なかなか思い通りにはなりませんわね。
ジュラとの結婚を機に2人で別の道を歩もうと思いましたのに。
取り敢えず、帰ってジュラと相談しなければね。
ジュルジュ兄さんに執政官就任を断られたら、ジュラがバートリ家の人間にならなければなりませんから、バートリの執政官の体制をどうしていくのか2人の意見をまとめなくては。」
「父さんはジュラ兄さんにはペーチに帰ってきてほしいと思っているところがあるけど、エレンの立場を考えるとバートリの家に入った方がいいな。
モーリツ兄さんが帰ってこないと、ブル、私が引き戻されちゃうな。
せっかく頑張ってこの町を良くしようとしてきたのに。バートリからペーチに戻るのは嫌だな。」
「だからここの執政官にならないかと誘っているのに。
あっちも嫌こっちも嫌は通用しませんよ、ジュルジュ兄さん。」
「まぁ、とりあえずここにいる4人はバートリ命と言うことですね。
では結婚式はバートリの教会ですね。時間は11時と言うことで。
そのまま、12時30分よりバートリ家の私邸で披露宴。この手配も完了しています。
もちろん披露宴で歌う歌も今日練習します。
サッちゃんにも連絡しなきゃ。
披露宴で配るケーキを作ってくれるそうですよ。
感激して泣かなきゃいいけど。」こんな時だけ妙に優秀な秘書官に変身
「もう、地味婚は諦めたわ。好きにして頂戴な。
取り敢えずペーチに帰ってジュラと話をしなくては。
・・・・・・傀儡ちゃんだから頷くだけだと思うけど・・・・ボソ」
「エレン、何か言った?」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
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