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32話目 最終話 私の力を信じて

教会本山での予期せぬ出会いのため、ペースに帰ってくるのが少し遅れてしまった。


伯父と伯母はすでに夕食を済ませており、リビングでお酒とお茶を楽しんで、くつろいでいた。


彼がリビングのドアを開けて帰宅の挨拶をする。


「ジュラ、明日からは一緒なんだから今日はエレンちゃんを一人でのんびりとさせてあげればいいのに。気が利かないわね。この甲斐性のない所は誰に似たのかしら。

あっ、兄のモーリツね。」


「母さん、エレンは甲斐性なしが大好きだって。特に俺のことが。」

「特にとは言っていませんよ。甲斐性なしは好きですが。」

「甲斐性がないと苦労・・・・、エレンちゃんの場合は自分で稼ぐから問題ないわね。

ジュラはバートリの町役場のトイレ掃除でもさせて、日銭を稼がせておけばいいし。」


「テレーズ、ジュラも一軍団の参謀長兼事務総長だ。

しがない大隊長のモーリツと違って、それなりの稼ぎがあるだろう。」

「父さん実は俺は今、エレンの旅団に転籍になったんだ。

そこで、小隊長をやることになってさ。」


「ジュラ、ずいぶんと降格したじゃない。エレンちゃんを養っていけるの。」

「エレンは黒魔法協会の参議を兼ねているから、自分の分は大丈夫でしょ。

おれはエレンの私設秘書をこなすことで、小銭をもらうさ。」


「しかし、あなた一気に甲斐性なしというかヒモ体質になったわね。

エレンちゃん、あなたのヒモ枠は何本かしら。」

「もちろんゼロですわ。ヒモは認めませんわ。

自分の食い扶持ぐらい自分で何とかしなさいな。」


「えっ、じゃ、俺はどうやって暮らしていけば。」

「毎日、キャンプ飯で。

足りない分はこれ飲んで腹を膨らませてね。あ・な・た。」


私は激辛もりもりをじいさんの前に掲げた。


「それは何だね、エレン。」

「貪り尽くすための飲み物ですわ。」

「食欲がわくのかい。でも食べるものがなくっちゃねぇ。」

「あなたっ。あなたはわからなくていいの。」


じいの顔が引きつってきたわ。相変わらずおかしい人ね。

心配しないで、今晩もお腹いっぱいに食べさせてあげますからね。


私たちは、料理人に遅くなってしまったことを一言謝罪し、夕食を暖めてもらった。

彼がワインを執事長と選んでいる隙に、もちろん、そっとサラダにかけてあげましたよ。たっぷりと。

グラスに注がないなんて、なんて優しいのかしら私って。


*

*

*

*

*


次の日。今日はじいとの結婚式。

私はいつものようにベッドで目覚めたけど、彼は床で倒れ伏していた。


冷たいのが好きなのかしら。

今度の誕生日に地下19階の倉庫に眠っている傀儡ちゃんを抱き枕としてプレゼントしようかしら。冷たくて気持ちがいいわよ。

私は隣の部屋で寝るけどね。冷たいの嫌いだから。


それにしても、寝相が悪いわね。


そろそろ起こさないと式に間に合わなくなっちゃう。

バートリ家とペース家の者だけで式を挙げるのだったら多少遅れてもいいけど、今日はバートリでみんなが祝ってくれるというので、待たせるわけにはいかないわね。


取りあえず、じいを起こすか。

どうやって。


ふっふ~ん。決まっているじゃない。

もちろん口に流し込むのよ。

今日はおめでたい日だから、原液が許されるはずだわ。

そう、私たちの特別な日だもの。

原液でお祝いしましょうよ。じいだけね。この幸せ者。


私はマントの中にしまってあるバッグからいつものブツを取り出した。

部屋に置いておくとじいが自分で勝手に飲みそうで危ないから。

私ってなんて優しいのかしら。


ちゃんと飲ませてあげますからね。

えっと、もうちょっと上を向いてほしいわね。

でも片手じゃ無理、動かない。

そうだわ、足があるじゃない。


私はじいさんを蹴って、上を向かせようとするが、難しい。

5回蹴って漸く上を向いたわ。


5回目でダメだったら、首チョンして首だけ上を向かすとこだったわよ。

残念ね、大鎌の切れ味を体験できなくて。

スパっと行くわよ、スパッと。気持ちがいいくらいスパッと。


私は瓶のふたを開けてじいさんの口に近づけた瞬間。

起きやがったよ。蹴っても起きなかったくせに。

全く、つまんねぇやつだな。期待を持たせておいて、最後の最後に、つまんないやつ。

せっかく原液を飲ませても生きているか試すチャンスだったのに。


「ご主人様、私を抹殺するつもりですか。それも式の前に。

もう、狩るのは止めたんだよね。」


「んっ、狩るのは止めていないわよ。

ただ狩っぱなしじゃなくて、その後は再生も請け負うことにしたのよ。

私って律儀だから。」


「でも、その原液を口に入れられたら逝くから。人生最後の川を渡っちゃうから。

もう戻ってこれないから。」


「だから、きちんと責任を取って復活させますわ。安心してね、じい。」

「信用できない。自分は神じゃないから神のような所業はできないって、生き返らすことはできないって昨日は言ってたから。」


「そんなことはないわよ、ちゃんと生き返らして新しい幸福な生活が送れるように責任をもって、対処しますわ。」

「本当に復活させられるの。闇の使徒の力でか。」


「闇の使徒の力? そんなものは使いません。

じいにあの力を使うのはもったいないというより、それこそ神への冒涜ですわ。そうでしょ。

あの力は不幸な人、不幸なエルフ、不幸な魔族に使うことにしたんです。」


「じゃ、俺は不幸じゃないんだな。

だったら、俺をどうやって復活させるんだ。」

「じいのくせに質問が多いわねぇ。だまって、原液飲んで復活を待てばいいのよ。


もう、どうやってて決まっているでしょ。聞かなきゃわからないの。

黒魔法よ。私の得意な黒魔法。


傀儡を作るの。

安心して、顔が半分溶けちゃうかもしれないけどね。」





P.S.

顔の修復に一週間かりそうなので、式は次週に延期されました。

準備してくれた皆さん、本当にごめんなさい。


未熟な私が悪いのです。

いえ違うわね、あの程度の術に堪えられなかった素材も悪いと思います。

やっぱり、素材が悪いので顔が半分溶けたのだと思います。


今は顔の材料を探してます。

良いものがあったら、黒魔法協会か第1083基地の中隊長の部屋宛てに送付したください。

でも、生のままは送らないでね。ちゃ~んと一次処理はしてね。


お願いします。


お礼は差し上げます。地下19階にご招待ではいかかでしょうか。

ご招待ですので、帰りは保証しかねますがね。うふふふっ。


これでこの別伝は終了します。

最後までお付き合いをいただきありがとうございます。


結婚式の様子は、できるかわからないけど、チャンネルわん・にゃんやノームの懺悔の部屋でご紹介できればと思っています。


無理だと思うけど。

無理だよなぁ、溶けちゃったしね。

溶けたもんなぁ、意外ともろかったなぁ。


本編が進むと、もしかして、できるかも。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


もちろん、聖戦士のため息の本篇の方への感想、評価などもよろしくお願いします


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