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31話目 死神の滅び

私たちは礼拝堂を出て、教会本山の転移魔方陣の施設に向かっている。

辺りはもうすっかり暗くなり、マントをしっかり羽織っていないと風が体を刺す様に痛い。


傀儡Gちゃんは、称号が一文字増えて良かったわね、大精霊様の贈り物かしら。

こいつも寒そうに身を縮めていたので、そっと、私のマントを開いて中に・・・・・・、入っているカバンから、激辛もりもりの瓶を取り出して、ちらっと見せたら、一瞬でシャキッと背筋を伸ばして、たったか歩き始めた。


飲む前に見ただけだシャキッとするなんて、さすがはバートリ家の秘薬だけあるわねぇ。


「ねぇ、傀儡Gちゃん。」

「できればGは取ってほしいんだが。」

「わかったわ、我がままねえ、Gちゃんは。」


「げっ、傀儡の方を取るなんて。止めてくれよ、Gの方を取ってよ。」

「もう、傀儡Gちゃんは本当に我がままね。お仕置きが必要かしら。」

私はまた、ちらっと、例の瓶をひけらかした。


「あっ、Gちゃんでいいです。傀儡GちゃんでもOKです。」

「あら、やっと素直に自分の名前を受け入れたわね。

やっぱり素直なGちゃんが好きよ。今度からじいちゃんと呼んでいいかしら。」


「うううっ、なんてお優しいご主人様なんだ。俺は幸福だ。じいちゃんて呼ばれて。」


私はこいつの幸福の基準がG並みに低いことに心底驚いた。

今日の大精霊様のお話よりも驚いたかもしれない。


「じいちゃん。」

「「なんですか。」」

お約束か。マンタ爺さんまで返事したぞ、それもハモってたぞ。

まあ、いいや。


「私のやりたいことは、今日の大精霊様の願いとずれているのかしら。」

「大精霊様たちは闇の使徒であるエレンにその力を人類とエルフ族、そして魔族のために使ってほしいと言っていたね。

エレンの願いは人類の不幸な人たちを救済し、再出発させることだよね。」


こいつは肝心なところは良く整理して理解しているな。

傀儡Gをちょっと見直したわ。


「もっと褒めてもいいよ。」

根は近所のガキんちょと変わらんな。


「私の期するものと大精霊の願いがずれていないかってことを聞きたいの。」

「じいの考えとしては、人類の不幸な人々を救うことも大精霊様たちは願っていると思うよ。

なんだろう、救済の対象が小さくて具体的なのか、大きくて漠然としているかの違いじゃないのかな。」


あっ、こいつG枠から何とか守役枠にしようと必死だな。

やることがせこいな。相変わらずこいつは甲斐性なしだな。

そこに私は惹かれてしまうのだ、何故かきゅんとするところだ。

甲斐性のない男は好きだ。お世話し甲斐があるし。


「じいが思うに、いきなり全種族を救うなんてことはどうしていいかわからないよ。

だからまずは自分のできることをやっていくのが良いと思う。

小さくても具体的な目標をひとつづく達成していくことがね。」


「そして、救済の対象を広げるきっかけと方法がわかってきたら、迷わずにより大きなものまで救済するということかしら。」


「その通りだよ。

そして、ご主人様がすごいとこのじいが思うところは、救済だけでなく、その先、再出発まで考えているところだと思う。


先ほどの大精霊様たちの話では、特に前回の輪廻の対応の仕方では、種族同士の争いは沈められたが、その後どう各種族が関わって共存するという観点の対処がなされていなかったと思う。


前回の輪廻の会合に集いし者共には、命を賭してまで種族間の争いに対処してくれたことには感謝したいが、やはり場当たり的な措置或いはとりあえずの措置だったと言われても仕方がない部分があると思うよ。」


「Gが言う場当たり的なところを大精霊様は実験的なと言っていたわね。

実験的な、場当たり的なところをなくすために、使徒と巫女、そしてアーティファクトを新たに輪廻の会合に集いし者どもに加えたのだと。」


「Gじゃなく、じいでおね。


きっといろいろな考えを様々な措置法を考え出してほしいとの期待からかもね。

多くの考えと方法をみんなで出し合い、そして、これはと言うものをシュウ君が判断し、今度はみんなで実行する。


ということは、何もご主人様がすべの種族の救済方法と再出発の方法を一人で考え出す必要はないと思うよ。

それを避けたいがために五つの魔法属性にそれぞれの使徒、巫女、アーティファクトを生じさせたんだから。

ひとり一つの案でも前回の措置の候補案よりもはるかに多くの案が出てくると思うなぁ。


だから俺たち闇の使徒と巫女は、まずは、人類の不幸な人たちの救済と、再出発を行うことで実績を残して、その上で、全種族の救済と再出発の方法を考えてみるということでも遅くはないと思うよ。」


「そうねえ、同じ闇の巫女のGさんとシュリちゃんでも考え方が全く違うだろうし。能力的にもGさんと強力な呪詛を扱う者では比較にならないし。

あっ、Gさんをやるのに呪詛はやりすぎね。スリッパで十分ね。

今度一緒にスリッパでGさんをたたきまくりましょうか。

良いレクリエーションになりそうねぇ。

シュリちゃんとは仲良くしたいわ。」


「俺とはどういう関係なの。」

「Gとスリッパを振り被る者の関係よ。わかっているでしょ。そんなこと。」

「・・・・・・・」


「まぁ、きっとシュウ君たちも救済と再出発の方法を探して、エルフ領を旅したり、風の大精霊に会いに行ったりしているのかもしれないわね。

今度いろいろ話をしてみなきゃ。基本的に甲斐性なしが私の好みだし。」


「そんなことしたら、エリナさんが大般若に変身するよ。

光の公女対闇の使徒。

これが全人類の滅亡の原因だったって、魔族の歴史書に書かれてしまいそうだ。」


「Gは何を楽しそうに言っているのかなぁ。

エリナちゃんとシュウ君を取り合って戦う前の戦勝祈願に、Gよ、お前を生贄にささげる。」


「えっ、誰に俺をささげるっていうの。」

Gの自覚が出てきたな。哀れな奴。


「ん~っ、私の仕えることになるという月の女王かしら。

そうそう、月の女王とも話がしたいわ。伝言をもらった魔将とも。

彼は人類のことをどう考えているのかしら。

他の魔族と同じように人類を滅ぼしたいと考えているのかしら。

ちなみに月の女王も甲斐性がないと嬉しいわ。」


「ぶるっ、君は男でも女でも、人類でも魔族でも甲斐性なしは自分のものにしたいのか。」

「あらいいじゃない、私の使命は、不幸な者と甲斐性なしを救済し、幸福な者やもっと甲斐性がない者として再出発させることよ。」

「げっ、甲斐性なしをさらに甲斐性が無くなるようにするの。

それじゃ、君に絡めとられたシュウ君は一生オオカミになれないってこと。」


「それはエリナちゃんが頑張ればいいんじゃない。私はその後は知らない。」

「それって、前回の輪廻の会合の措置と根本に流れているものが同じじゃないの。

後は知らないって。」


「そうねぇ、やっぱり、甲斐性なしの再出発までは面倒は見切れないわ。

絡めとって、お世話して、愛でるだけね。


でもね、人類、エルフ族、そして魔族の不幸な人々の救済と再出発の手助けはやってみたいと思うわ。」


「なるほど、甲斐性なしにとっては君は狩るだけの死神、不幸な人々にとっては君は死神を超えた再生の神ってとこかな。」


「私は神ではないわ。でも再生人ならなりたいと思うわ。あくまで人よ。

これからは狩る者から再生を手助けする者へ変わるって、決心したのよ。」


「狩るだけの死神が滅んで、再生の神が降臨したということだね。」

「だから神じゃないってば、私は。」

「まぁ、いいじゃないの。これで死神は卒業するつもりってことには変わりはないんだから。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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もちろん、聖戦士のため息の本篇の方への感想、評価などもよろしくお願いします


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