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22話目 もう一つの墓標

彼の20年前の誓いを聞いてしまった。

それは今でも有効だという。


"エレンの願いや夢がかなうように一緒に手伝う"って。


なんかかっこいい。

王国時代の騎士のようだ。

じゃぁ、私は姫か。死神の衣装を着た姫。


ないな、想像してみたけどきもくなってきた。


そう言えば、朝食のオムレツが少し苦かったような。

まさか、傀儡ちゃんのくせにご主人様の私に盛ったとか。ほれ薬を。


私が寝ている間、一晩中、起きていたらしいし。

やっぱ、盛られたわ。


でなきゃ、傀儡ちゃんを一瞬だけど騎士と考え、私がお姫様だなんで、普通に考えたらきもすぎてありえない。

この仕返しはさせてもらうわよ。

きっとその内に、いや、今がいいかしら。

首を洗って待ってなさい。


「もう墓陵を2ヵ所回ったけど、これからどうする。

町役場に行って、昼食をとってから、執政官として執務をするなら手伝うけど。」


「傀儡ちゃん何を言っているの、まだ、一か所しか墓陵を回っていないわよ。

丘の天辺のやつは数に入れないで頂戴。」


「数に入れないでって、バートリ家のご先祖様、お許しください。

俺がもう少し気の利く子に育ててみせます。」


「何を言っているの、私はもう成長しないわよ。

とっくに成長期は終わっています。


それより次にちゃっちゃと行くわよ。

昼食は町役場で、やっぱ、止めましょう。

明日のことで何かと引っ張られるともう一か所に行けなくなってしまうわ。」


「次の墓陵って、どこにあるんだい。」

「あなたは黙ってついてくればいいの。

途中で昼食は食べさせてあげるから、辛いのがいいわよね。

今は何でも辛くなるけどね。」


「黙ってご主人様に付いて行きます。願わくは辛くないものが食べたいです。」

「傀儡ちゃんは辛い物を食べときゃいいの、文句は言わないの。」


そう言って、石の墓標の前から後ろの鉄格子の扉の方を向いた時に、胸の上のダイヤのペンダントがふわりと揺れた。


傀儡ちゃんのくせにご主人様にプレゼントをするなんて、なんて生意気なの。

お仕置として、辛苦キャンプ飯を唇が腫れるまで食べさせよっと。

私は頬を緩めながら洞窟を出た。


「ご主人様、どこに行くのかこの哀れな傀儡にご教授願いませんか。」

「全然哀れでないので教えない。」

「そんなぁ、教えてもらわないと迷子になったときにバートリに帰ってこれなくなるよ。」


「大丈夫よ、私と12時間以上離れると土に還る魔法を掛けておいたから、ちゃんと帰れるわよ、土に。

埋葬いらずの便利な魔法ねぇ。」


「ちょっと待って、それマジ。マジじゃないよね。

エレンは黒魔法が使えるから常識では測れないことが本気で起きそうなんですが。」


かわいい、本気にしてる。

生意気な傀儡ちゃんにプチ復讐。


「土に還るのが嫌なら、私についてきて。

離れないようにお尻タッチしてても良いわよ。」


あっ、赤くなっている。

何をいまさら。お尻タッチぐらいで。


それでも彼は土に還る脅しがきいたらしく、私の手を握っていたいと真剣なまなざしでお願いされちゃった。

接触していないと離れているとみなされると勘違いしたらしい。

お尻タッチの話も効いているな。


私は彼を思いっきりからかいながら、教会まで丘を降りてきた。

この甘い時間は胸で揺れるペンダントのお礼ね。


私は手を繋ぎながら、教会の転移魔法陣を使うために司祭様に一言ことわっておこうと思ったら、誰もかれも忙しそうに走り回っていたので、昨日と同じように勝手に転移魔法陣を使うことにした。


「傀儡ちゃん、魔力充填する?」

「どこに行くかわからないのに、帰ってくる魔力がないのは怖いからやめていいですか、ご主人様。」


これは土に還る魔法の脅しが効きすぎた。もうビビりすぎ。

もう、帰ってくることに必死だわ。

可愛い。


「もう、そんなにビビってどうしたの。

いいわ、あなたのご主人様の私が魔力を充填するわ。」


私は魔力溜めに必要な魔力を充填し、そして、教会本山に転移した。

私が行きたい場所は、たまたま、バートリの転移魔法陣と同じ魔力が必要な場所だったので、そのまま、魔力溜めに魔力を充填し、目的の場所に転移した。


バートリからここまで、時間は3分ほど。


傀儡ちゃんはどこに連れてこられたか全くわからないようで、びひって、両手で私の片腕を握り締めていた。

そんなに強く握っていなくても、逃げないから。

まだ激辛で試したいことがいっぱいあるもの。


あと、ここはあなたの方が良く知っている場所だから。

きっと目を閉じていても這いずり回れる場所だから。G様のようにね。


「ここはどこだ。知らないところだ。ご主人様、ここがどこか教えてくだされ。」


こいつは本当にここがどこだか知らないと言い張るつもりだろうか。

呆れたやつだ。もう二十年近くも通っている所じゃないのか。


そう、かの大防衛戦の後からずっとここに通っているはずだわ。

そこの転移魔法陣の部屋の様子を忘れたなんて、

本当かしら。ボケたの、まさか。


昨日から辛い物を食べさせ過ぎてボケたの。

逆に私がビビってしまった。


これからボケ傀儡の世話をしていくの、この私が。

別にいいわよ。お世話するの好きだし。

飽きたら地下19階の倉庫に放り込めば煩わしくなくなるし。


「傀儡ちゃん、よく見なさいな。

あなたが一番使っている転移魔法陣じゃないかしら。」

「えぇぇぇぇっ、そうなの。俺が良く知っているとこなの。良かったよ。

迷子になって、土に還されちゃうところだったよ。」


呆れた。本当にわかっていなかったのここがどこか。


その時、転移魔方陣の部屋に誰かが入って来た。


「あれ、元事務総長。今日は仲良くお出かけですか。

いいですねぇ、婚前旅行。

さすが実績のある旅団は違いますね。

たんまり休暇があって。


俺たちはこれから42時間の野戦の訓練ですよ。

あ~ぁ、いいなあ。俺も旅団に入れてくださいよ。元参謀長殿。」


「ぐげっ、ここは第2軍団の基地か。それも第22基地だな。」

「漸く分かったようね。全く何を慌てているのやら。

困った傀儡ちゃんねぇ。子供みたいで可愛いけど。」

「ぷぷぷっ、元事務総長が子供だって、奥さんに言われている。ぷぷふっ。」


「くっそう。覚えてろよ。きさまら。」

「負け犬の遠吠えを間近でみたわ。貴重なシーンをありがとう。傀儡ちゃん。」

「・・・・・、ご主人様、やつらに天罰をお与えください、私と同じ土に還る魔法を掛けてあげてください。」


「ゲッ、死神様の黒魔法。

ごめんなさい、もう職務中にふざけたりしませんので、今日のところはご勘弁を。」


傀儡ちゃんの元部下は走り去ってしまった。

何を慌てているのだろうか。

もっと傀儡ちゃんをいじって良いのにね。

見てると面白いし。

元部下との漫才。

ドツキ漫才の方が私は好きだけど。


私たちは転移魔法陣の部屋を出て、一応ここの責任者に挨拶をすることにした。

素通りでもいいけど、一応、ご挨拶。

決して、脅かしに来たわけではない。


今日のここの司令官は第322連隊長とのことだった。

第32師団長ではなかったのね。


師団長とお話する方が楽しいのに。下っ端じゃぁ、私のことをよく知らないので、遊びがいはないわね。


師団長クラスだと私に椅子をすすめて、自分は床に正座するのが普通ねぇ。

これが軍団長クラスになると、最初から土下座して。地下19階だけは許してくださいと

おでこが擦り切れるくらい這いつくばる輩もいるから。

さすが軍団長は礼儀正しいわね。


私たちは、私にビビりまくり、彼に恐縮しまくる連隊長に、お昼にキャンプ飯をいただくことと、その後に基地の郊外に少し出てくることを告げた。

あぁ、キャンプ飯でいいのよ。

門前町からわざわざ出前を取らなくても。冷めちゃうでしょ。

冷めると辛さが落ちるのよねぇ。


私たちはキャンプ飯を基地の食堂で取った。

もちろん彼には目の前でブツを掛けてあげました。

顔が引きつるほど喜んでいたわ。

私っていい奥さんになれそうでしょ。旦那好みの。


そうして、2人で手を繋いで第22基地の門を出て、第23基地の方に向かってゆっくりと歩き始めた。

私は手なんて繋ぎたくなかったのにね。

まぁ、傀儡ちゃんが泣いてせがむから、主人としての務めね、これも。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


感想や評価、ブックマークをいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


もちろん、聖戦士のため息の本篇の方への感想、評価などもよろしくお願いします


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