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20話目 新たな町

「もう、大丈夫そうですね。今、町の職員を呼んでもらいます。

ジュラ、ジュルジュ兄さんに連絡をお願い。

子供たちの父親は町の住民課か福祉課の迎えを丘の上の墓標で待つと。」


「わかった。そう伝えるけどそれでいいのかい。

一人でいて怖気づいて、また、逃げないかな。」


「何を言っているんだ。俺はもう逃げない。

せっかく、この方に、この町に再出発のチャンスをもらったのに。

逃げるわけがないじゃかいか。」


「ジュラ、良いのよ、例え逃げても。

逃げても、子供たちはここに残るでしょう。子供たちだけでも再出発できればいいのよ。

二度も逃げた大人まで面倒を見ることはできないわ。


でも、きっと逃げるなんてしないわよね。」


「ああっ、もう逃げない。

これまでは逃げてばっかりだけど、今回は逃げない。


丘の天辺で待っているだけなんだろ。

何で逃げる必要があるんだ。」


「わかった。ジュルジュに連絡を取るよ。丘の墓標まで迎えをよこす様に。


・・・・・


了解。

執政官の秘書官がもう迎えに来るそうだ。」


「お父さん、それでは一旦お別れね。

頑張ってね、きっと家族が一緒になる日が来るわよ。」


「ありがとう。俺もその日が来るのを信じて、頑張るよ。生き直すよ。

それじゃあな。」


「がんばってね。」

「がんばれよ。」


私たちは背筋をピンと伸ばしたお父さんの背中を見送った。

そんなに緊張しなくてもいいのに。

お迎えは私の秘書官だ。


「ご主人様。」

「ジュラ。そんな呼び方して何か企んでいるの。

激辛もりもりの瓶は上げないわよ。

私は辛いの嫌いだから。」


「ちぇっ、ばれたか。

じゃなくてな、今のような感じで不幸な人たちを受け入れ続けたら、町がパンクしないか。


エレンの考えに賛同している住民が不幸な人たちの面倒を見ていくにしても、どんどんその手の人たちが町に入ってくるんだろ。

住む場所とか物理的に問題が出ないか。

例の第1083基地名物のタコ部屋3段本棚倉庫ベッド宿泊施設に人を入れこむわけにもいかないだろ。


もっと、大きな問題としては仕事だな。

大人を遊ばせておくわけにもいかないだろ。」


「場所はあるのよ。不幸な人々を救い、再生する静かな場所が。

そこでしばらくはゆっくりとした時間の中で心の傷を癒して、再出発のための英気を養ってもらいましょうよ。

そう、私たちだけの新しい町を作ればいいのよ。」


「バートリの周辺には確かに土地はあるけど、場所があればいいと言うものでもないでしょ。

新しい町と言っても、町ができればいろいろな人たちが出入りするようになるので、不幸な人々を集めた町が静かに暮らせるかどうかは怪しいよ。」


「わかってないわね、だから傀儡ちゃんなの。傀儡ちゃんから私の彼になりたかったらもう少し頭を使わないとね。

あなたはこれから何になるの。」


「唐突になんになると言われてもね。

まずは、明日式を挙げて結婚する。」


「わかってないわねぇ。そんなんだから、第12師団が3方から魔族師団に包囲されるまで、気付かなかったのよ。

傀儡ちゃん、反省しなさいね。


それにしても、傀儡ちゃんは本当に夜のお仕事が好きなのねぇ。まずそこに考えが行くとは。

安心しなさい、今日の昼はサッちゃんにお願いして激辛マーボ豆腐定食でいいかしら。

昼から頑張れるように。」


「激辛は止めてくださいご主人様。

でも夜に食べるよりは昼の方がいいか。

いろいろ発散することもできるし、走るとか。」


「それより何になるの。早くしないと傀儡ちゃんがお待ちかねの夜になっちゃうわよ。」


「えぇっと、結婚した後は旅団で働くか、ここバートリの行政官として君の留守を守るか。」

「あら、ここの行政官となってもいいと思っていたんだ。

それでもいいけど、夜は寂しいわよ。夜のお仕事が大好きな傀儡ちゃんとしては。」


「じゃぁ、旅団の仕事をするよ。君の側で。」

「私の側だなんて,やっぱり、夜が好きなんだ。

昼は激辛マーボ、夜は激辛エビチリね。


まぁ、傀儡ちゃんの趣味についてはもういいわ。

旅団に入って、なんの仕事って何をしたいの。」


「それは・・・・、俺が得意なのは作戦立案と後方支援だよ。

第2軍団でも作成参謀長と事務総長を兼任していたぐらいだから。


でも、まずは後方支援を充実させたいかな。

君たちが旅団を一時的なものでなく、軍団並みに軍の中核としたいと考えているなら、まぁ、魔法協会の軍として、軍司令部から独立するのもいいかもね、」


「漸く頭が働いてきたようね。

軍司令部からの独立は今のところはないとしても、軍団並みの機能と権限は持ち続けたいわね。

そう言うことで、後方支援の充実とはどうするの。」


「まずは旅団の各基地の運営が現状は各軍団に委託しているから、できれば旅団が直接運営したいかな。

ただ、中隊とはいえ今の旅団は小隊ぐらいの人数しかいないし。


あっ、・・・・・・・。


まさかとは思うけど、旅団の基地を新たな町として運営するつもりじゃ・・・・・・。」


「漸く頭がまわりはじめたわね。もっと刺激を与えた方がいいわね。

夜食に激辛ワインを一気飲みね。どうなるか楽しみね。

逆噴射は厳禁ね、もったいないから。


そう、第1081基地を旅団で運営したいの。

職員は町の希望者と新たに増えてくる住民ね。

軍属扱いとするから、町民として基地にいるだけでだけで軍から給料も出るしね。

実際は農業や酪農でもやりながら、心を癒して、再生の道をじっくりと探してほしいわ。」


「でも戦闘地帯に、子供たちや町の人を入れるのは危なくないかい。

確かに余計な人は来ないし、旅団の直接支配地にちょっかいを出してくる高級軍人もいないだろうから静かに暮らせることはわかるけど。」


「今朝、教会本山経由で旅団のシュリちゃんから連絡があったわ。

シュウ君たちがまた魔族一個師団を壊滅させ、新たに社を解放して第1085基地としたと。


その旅団が守る一番奥にあるのが第1081基地よ。

絶対とはとても言えないけど、他のどの基地、もしかしたらどの緩衝地帯に近接した町よりも安全かもね。」


「確かに、旅団が守る町か。

バートリから第1081基地、そしてその先の各前線基地に道が繋がるか。


それにしても、相変わらず、第3小隊の戦力はすさまじいな。今まで人類軍は何をしてきたんだろうか。俺を含めてだけど。」


「そう、道が繋がるの。私たちが守るべき道が明確になるわ。

今までの旅団はただ魔族を攻めるだけの軍団だった。

それが今言った道を繋げることで守るべきものを持つ本当の軍になれると思うの。


20年前のバートリはただ軍の補給基地でしかなかった。

そして、その補給基地からは物資と人を丸ごと持って行かれたのに、人類領は守ることが出来なかった。


旅団が取り返した領土は旅団で守りたい。

確かに第1082基地より前線では今まで通り第2、第4軍団に駐留してもらうことになるけど、行く行くは旅団が運営していくようにしたいわ。


もう、バートリの住民を愚かな軍人たちの元に送る愚は侵さない。

私たちの町は私たちで守りたい。そして、住民には安心して暮らしてほしい。


まずはバートリと第1081基地ね。

2つの町を繋ぐ道を守りながら、第1081基地の町で人を癒して再生していくことが私の、そして、私の夫になる人のこれからの仕事だと思ってちょうだい。」


「君の目指しているところがわかったよ。俺もそこで働くよ。」

「傀儡ちゃんはちゃんと私の言う通りに働くのよ。昼も夜も。」

「やっぱり夜もか。」

「当然でしょ、傀儡ちゃんなんだから。うふふふふっ、」


胸の渇きが癒えてきた。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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もちろん、聖戦士のため息の本篇の方への感想、評価などもよろしくお願いします


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