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ウタウタイ隊紀行  作者: 積木
閑章
9/17

閑話

「咲、わたしがいない間に何かあった?」


「……特に何もない。三葉これ今日中にチェックして神様に持って行って。」



どすううぅん………


(書類多すぎじゃない?ていうかよく持てたな。)


優馬より小さい少女、三葉が神のお付きと言っていた咲という少女は自身の身の丈以上の書類の束を、山を軽々と持ち上げていた。


「……?誰、その子?私の補佐役?おいで、おいで。」


おいでと言いながら優馬に近寄り背を目一杯伸ばして優馬の頭を撫でようとする咲。


(ぷるぷる震えてる……大丈夫か?)


何も言わず咲が撫でやすいように腰を落とす優馬。どうやらその一連の動作が咲の琴線に触れたようで、優馬の頭を慎ましい胸に抱えこむ。表情はわからないが咲が放つ雰囲気はとても穏やかである。


「君。お名前は?」


「ふっ…ぷぅ…佐藤優馬です。よろしくお願いします咲さん。」


「…ん。モゾモゾしちゃめっ。」


なら一旦離してくれないかなー、と優馬は思ったがそれは野暮というものだろう。


「……まあ咲ならそうなるとは思ってたわ。その優馬ちゃんが神様が言ってた転移候補の子よ。ちょっと事情があってわたし達の仕事を150年ほど手伝ってもらうことになったわ。ほらあなた達もそんな隠れてないで出てきて優馬ちゃんに自己紹介なさい。」


三葉に言われ、ぞろぞろと何故か優馬と三葉が家に入って来た時に隠れていた天使達が出てくる。


「あっじゃああたしからするわ。あたしの名前はシルビ。エンジェル荘の6人の中だと1番古株だからまあ6人のリーダーみたいなことしてるわね。」


シルビと名乗った三葉と同年代と思われる見た目の女性。均整のとれたプロポーションで胸は三葉に及ばないが、かといって小さいわけではない。


「じゃあ次うちねー。うちはケフィリア。ケフィって呼んでいいぞー。」


ケフィリアは優馬と同じくらいの背丈で活発そうな、いたずらっ子そうな少女だ。ちなみにケフィリアとシルビはさっき三葉に仕事を押し付けようとしていた2人である。聞かれてないと思ってるだろうが三葉にはばっちり聞こえてたようで2人を静かに睨みつけている。


「次は私ですね。私の名前はユリシズ。6人の中で1番働いているのは間違いなく私です。分からないことがあったら私にどんどん聞いてくださいね。」


と言いドンと自分の豊かな胸を叩いたユリシズと名乗った少女。優馬より少し背丈が大きく、その豊かな胸から日本のグラビアアイドルのような見た目だ。

なお、優馬はもちろんグラビアなんて見たことはないが………


(ケフィとシルビが実質働けてる2人だな。ユリシズは自分がドジってことを気付いてないみたいだし危険だ……)


3人の自己紹介を聞いて優馬は冷静に判断していた。

ケフィリアとシルビは何だかんだ働いていることがわかる。

だがユリシズはさっき備品を盛大に数え間違っていた。1番働いてるのではなく、よくミスをする為二重に仕事をしているだけだろう。


(まあ今から改善していけばいいだけだな。……ん?もう1人いるはずだけど…?)


この場にいるのは三葉、咲、シルビ、ケフィリア、ユリシズ。そしていまだに優馬、男の子だってよショックから抜けられず三葉の背に隠れてこちらをチラチラ伺っているシイルの6人。そしてさっきからずっと寝ている女の子。その子を起こそうとしていた少女がいたはずだったが…


「あー……ムイはちょっと気が弱くてね。男の子だからとか関係なく初対面の人は怖がっちゃうのよ。ほら、ムイ出ておいでー。怖くないよー。」


「…………」


(ん?)


優馬は自身を見る視線に気づく。どこから見ているかわからないが伺うような怯えているようなそんな視線だ。


(………)


優馬はその視線の元を辿ってみた。

視線の主に近づくにつれ、相手が警戒している気配を感じる。


(ここか…)


どうやら視線の主、ムイは襖で仕切られた向こう側からこちらを覗いているようだ。よく見ると隙間から2つの目が見え隠れする。優馬は襖の前まで行きしゃがみこみ、少女の目の位置と高さを合わせた。少女の表情はわからないが怯えているような、今にも泣きだしそうな目だ。


優馬はそっと襖に手をかけそっと開く。

そこには咲ほどの背丈でつぶらな瞳のくりくりした美少女がいた。


…そして、その小さな背丈には似つかわしくないとても大きなものをお持ちだった。


「僕は佐藤優馬。よろしく、ムイちゃん。」


そうして微笑む優馬。


三葉はあまりの出来事に愕然としていた。優馬はあまり表情が変わらない。ここに来た当初からほとんど表情を変えていなかった。

だが今、優馬が微笑んだとき

警戒していたムイも

自分の視線に怯えていたシルビとケフィリアも

半ば自我を失いかけていたシイルも

未だに寝ているあいつも

あいつといっしょに寝ようとしていた咲も

そして自分自身も


優馬の微笑んだ顔を見たとき、1つの念に囚われてしまった。




「「「「「「「……かんわいいぃ〜〜」」」」」」」「…………」


優馬はかわいい。

そのことで500年ほど8人で過ごしてきた天使達は初めて思いが1つになるのだった。

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