少年は進みたい
「ぐすっ…えっー…君の名前は、佐藤優馬君ね。…とってもいい名だ…」
未だに泣いているおっさんを前に少年、優馬は困惑していた。なんで泣いているのかとか今何も無いところに突然出てきたぞこいつとかそんなことはさておき優馬はひとつだけはっきりさせたいことがあった。
(さっきはアラサーだと思ったけど、結構老けてるな…父さんよりは年齢上か?そうなるとアラフォー……いや、そもそも父さんの年齢わかんないんじゃね?30から数えてないとか言ってたし父さんも実はアラフォーだったとか十分ありえるな。どうしようすごい気になってきた。)
どうでもいいことで悩んでいた優馬だったが、答えはすぐに出てきた。
『その2つのどっちかって言われたらそいつはアラフォーね。まあ私達にはもう年齢とかどうでもいいんだけど。』
今度は女性の声が聞こえてきた。遠くで響いてるような不思議な声だった。
「こんにちは、佐藤優馬さん。私はここの……いつまで泣いてんだおっさんっ!!仕事しろ仕事をっ!!」
突然怒鳴った女性に驚きながら優馬はそちらを向いた。そこにいたのは比喩表現無しに天使だった。なんか羽根生えてるし頭に輪っかあるし。
容姿も……出るとこは出て引っ込むとは引っ込んで…顔も…母さんの次くらいには綺麗だった。今まで見た女性が少なすぎることもあるがまあ美人だろう。
「ふぅ……ごめんね佐藤さん。このおっさんが……男の…娘?」
天使は優馬の容姿を見て困惑しているようだった。優馬の年齢は14歳。14歳の少年にしては背が小さい気がした。そして何より髪が長く腰まで伸びており傷んだところも一切見られない。顔の造形も…整いすぎていた。天使の女性よりも天使らしい顔立ちだ。長い髪も相まって人形のような容姿とも言える。
「優馬っていう名前だからてっきり男の子だと思ってたのに……可愛いから別にいいかしら」
天使は優馬にこちらへ来るように手を振った。誘われるように優馬は一歩一歩近づく。2人の距離がいよいよ触れそうになった時、おもむろに天使は優馬を胸に埋めるように抱いた。
「お持ち帰りで。」
「……息できない…」
「ぐすっ……うぇっ……」
泣くおっさんに、天使に抱かれる自分。
優馬はとにかく話よ進めと願った。