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重い音が体の中へと。それと同時に私は天を仰いだ。黄昏時の空色は何処か美妙に私の網膜に張り付いた。反転した街並みと自動販売機がそれを助長するかの様に景色にいろいろな暈しを加えていくのであった。
「危ないじゃないですか。」
少し怒気を含んだ、普段よりも抑揚が激しい口調が吐露した。なんでだろうか。私がこういったものの、千鳥足でさえ、まだ良く見える程の酔いどれには私の声は届いていなかった様で。長く麗しい黒髪と少し襤褸ついた自転車は何も答えなかった。まったく。
流石に女性を道端に置いて行くのは気が引けたから近くの公園まで引きずって行くことにした。はっきりと言ってしまえば、この姿を見られるのは気が引けた。どの写真家もこのワンシーンをおさめようとはしないだろうし、どんな奇抜な画家だってこんな世界の一部分をデッサンしたり額縁に入れたりはしないだろう。五分ほど歩いてもうすぐ目的地に着くころ、そんな芸術性の欠片もないままをふっと現われた青い野良猫にじっとりと見られてしまった。その時の私の表情はたぶんどぎまぎして猫が鼠に噛まれてしまった感じ。胸中、とても恥ずかしかった。慙愧。