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駄々っ子  作者: 崎 陽太
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大分、歩いた。包まれていく日の暖かさに私は綺麗な思いを抱く事はないのだが、それでも融銅はてらてらてらてらヘリウムをせっせこ創っている。ばさりばさり。急に目の前を何者かが通って行った。黝い外套だ。どうやら忙しく忙しく太陽の光をパクパク食べている。美味しいのだろうか。私にはわからない。大きく体をくねらせて沢山沢山空気を吸ったのを見ると外套は十分に光を食べたようだ。満腹の外套はぱんぱんの綿菓子になり、柔らかな上等な綿の織物のようにも見えた。いや、そんなはずはない。彼は、きっときっと外套だ。

 それから外套は気だるげに道を歩いて行く。そのすがたはまるで懐かしい物に見えた。ふと空を眺める。もうじき日も暮れるだろう。そう気づいた私は気持ち少し歩調が少し早まった。急ぐ必要は別段ありはしないが、拍動も心なしかどきどきし始めてたから、その身体状況に体の動きを委ねてみることにした。いつもと変わらないリズムだ。刻む心が些か違っても、私が私であることはどうやら変えることの出来ないこの世の理屈に思えた。俄かに電燈が灯る。

 チャイムの音が聞こえる。大体五時くらいだろうか。最後のチャイムだろう。響く電子音がほのかに耳に残る。その余韻がとても心地良い。色んな建物に跳ね返りながらその通過点として私の身も貫いていく。今はこの、この響きだけを愛すことにしよう。いまは。覚束ない音にもついに終わりがきたようだ。すうっと波が引いて行く様に、残響もどこか果てにあるいていってしっまたようだ。満足に音の響きをいただいた。今日はもうこれでいいのかもしれない。とは思えなかった。

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