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午後の終わり。真夜中の朝間に生きるように。誰かを守る事が出来たのなら、沈み行く私の心情とともに切っ先の鈍いペティナイフが奈落の底に落ちていく。壊してしまった、あの朝の様に。気後れしたくはないのだが、どうしてもどうしても心にお化けが憑いているような。嫌いに嫌いになっていくのだ。何れ誰が何であろうとも。
希望はあるのか。涙を嗅ぐのは他人で有るというのに。つつましい生活もすべて捨て去って生きてきたというのに、あんまりに酷いじゃないか、救いも誇りも誉れもあってないようなものじゃないか。どれだけ償いをしたって、どれだけ贖ったとして、自分の思いに嘘はつけない。一頻り、いろんなことをやってはみたんだ。
二千百五十年。二月某日。暈が繋る。烏は一匹も鳴いていない。なぞかけが好きなお道化た子供たちのけたたましい声だけは聞こえた。それくらいだろうか、おぼえていることは。
夕暮れも近くなった。私はふらりと出掛けてしまった。これが悪夢の始まりである。続く続く我が道がどれ程苦痛なものなのか、少しだけ知ってしまって。大きく悲観した。辛さもなにもかもふっとんでしまった。余りにも衝撃だったからだ。ああ、なんて悔しいのだろう。悔しさのもとを知れないことが。
ぼさぼさ、見知った道を歩いた。何も変わらない喧噪弾くジャズハウスの中。それとほんの鳥渡苛立ちも。歩く。歩く。すれ違うひとの表情もだいぶ変わっていく。進むにも勇気がいるのによく動かす。壊れかけた自分に掛ける言葉もない。滑稽だ。