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悪獣(あく)の対価

「何で、俺様がテメェらの用心棒なんぞにならなきゃなんねェんだよォ?」


 松明の明かりが灯す洞窟の中、(むら)(びと)たちは逆さ虹の森が今にも山賊団に襲われそうである事を伝え、協力を願ったのですが、洞窟の闇より黒い身体。暗黒ウサギのサンゲツはまったく聞く耳を持ちません。


「わたくしからもお願いいたします。もし、助力いただけるのなら、その両手両足の(かせ)も外して差し上げますが……」


 美しい白ウサギの、巫女のミミコも交換条件を示しますが。


「興味ねェな」

『!?』

「第一、俺様が村で暴れた時は、『()()()()()』をけしかけて来たくせに、今度は俺様を利用しようってのかァ? 虫が良すぎんだろテメェらァ!!」

「言われる事はごもっともですが、そこをなんとか……」


 二百年前の事なのに、自分たちの非のように責められるくま村長さんでしたが、誠意を持って頭を下げます。

 ですが、サンゲツは不機嫌そのままに、くま村長の頭にペッとつばを吐きかけます。


「もう、あったま来た! 村長、もうこれ以上こんな奴なんかに頼む必要はないぞ!」


 暗黒ウサギの傍若無人な態度に、正義感の強い暴れん坊、アライグマの荒岩らすかるさんの堪忍袋の緒が切れました。


「さっきから聞いてりゃ、何だよお前! こっちが下手に出てりゃ、つけあがりやがって!」

「あァ? 何だテメェ、なに逆ギレかましてんだ、コラ」

「どんなに強かろうが、お前みたいな(やから)と手を組むなんて、こっちから願い下げだね!」

「ハッ! それならそれで、こっちも願ったりだがなァ!」


 らすかるさんはギャハハハハと哄笑を上げる暗黒ウサギを睨み付けますが、くま村長は。


「らすかるさん、私たちだけでは山賊どもには(かな)わないのですから、何としてでも彼を味方に付けないといけません。ここは一つ穏便に……」

「だったら……、オレが力ずくで従わせてやる!」


 言うが早いか、らすかるさんは暗黒ウサギに突撃をかけました。


「左腕を関節ごと左回転! 右腕を関節ごと右回転! 闘技! 『二槽式(ダブル)洗濯機拳(スクリューブロウ)』!」


 二つの拳を高速回転させる事で、圧倒的な破壊力を持った(もろ)()突きを繰り出します!

 ですが。


 バチィ!


 サンゲツは足錠をされたままの状態で、バク宙をするようなサマーソルトキックを放ち、らすかるさんを弾き飛ばします。


「がっ!?」

「ッだらあ!」


 ドゴァッ!


 さらに、サンゲツは前方宙返りからのカカト落としを脳天に食らわし、らすかるさんを地面のマットに沈めました。

 両手両足を拘束されているとは思えない、暗黒ウサギの無類の強さ。

 一瞬の早業に言葉を失う、逆さ虹の森の獣たち。


「誰を力で従わせるってェ?」


 暗黒ウサギは、ピクピクしているらすかるさんの頭を踏みつけながら。


「俺様は誰にも従わねェ! 俺様の自由は誰にも奪わせねェ! やりてェ時にやりてェ事をやって、何が悪りィ!? 何様だよテメェ、ざっけんなァッ!!」


 らすかるさんの頭をミシミシと、頭蓋骨を砕かんばかりに力を込めます。すると。


「どうか、お許し下さい!」


 くま村長は土下座をし、伏して地面に頭を擦りつけます。


「あなたがお怒りになるのは当然でございます! ですが、村が滅びるかどうかの瀬戸際で、私たちも必死なのです! 何とぞ、お力を貸してもらえないでしょうか!」

「ああァ!?」


 くま村長さんの必死の嘆願も空しく、サンゲツは黄金の眼をギラつかせて村獣たちを威嚇します。


「山賊だか何だか知らねェが、俺様には全然関係ねェ話だろうがァ! それを力を貸せだ? 断わりゃ、いきなりケンカふっかけて来るだァ? テメェら俺様をナメてんのか!?」

「そ、それは……」

「だいたい、俺様の力を借りてェなら、三億円ぐらい持って来やがれェ! それならガテンが行くってモンだがよォ!」


 サンゲツが示す法外な報酬の額に、動揺を隠せない村獣たち。くま村長は暗黒ウサギの恐喝に怯えながら。


「しかし、そのような大金、とても私たちには……」

「だろうな。どいつもこいつも雁首そろえて貧乏そうな(つら)ァしてやがるもんなァ」

「それでは……」

「じゃあ、死ねよ」

『!!』

「もともと俺様ァ、逆さ虹の森(テメェら)には恨みしかねェんだ! なんなら、山賊にやられる前に俺様がテメェらをブッ潰してやろうかァーッ!」


 ゴゴゴゴゴと洞窟が落盤するのではないかという程の怒号を上げるサンゲツ。それを聞いて、ひいぃと後退りをする村獣たち。

 村の長であるくまさんは、暗黒ウサギに恐れおののきながら。


「わ、わ、わ、分かりましたっ! さすがに命を差し出す訳には行きませんが、我々が『命と同じくらい大切にしているもの』をあなたに差し上げるという事でどうでしょうか?」

「ほォ……?」


 その言葉にわずかながら心を動かされたサンゲツは、凄みを利かせつつも交渉に乗って来ました。


「言うじゃねェか、テメェ。そこまで言うんなら、俺様を満足させるような『お宝(モノ)』ァあるんだろうな?」

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