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戦いの神に愛されし兎(おとこ)

 ヨロヨロと広場に戻ってくる裏王パンダ。ですが、すぐさま攻撃態勢に入り、サンゲツに飛びかかります。

 ブン、ブブン、ブオオンッ! と、(じょう)(じん)には見えないスピードで剛腕を振り回しますが、サンゲツは鼻歌交じりにひょいひょいとかわします。


『クソッ! ()()()タラン!?』

(どん)(がめ)のテメェが(おれさま)の速さについて来れる(わきゃ)ねェだろうが。馬鹿じゃねェのか?」


 ブオオン! ブオオオオンッ! と、裏王パンダは竜巻のような暴乱さで攻め立てますが、サンゲツは前宙、側宙、バック宙と羽毛のような素軽さで跳ねまくります。


『クソッ、クソッ、クソーッ! ()タリサエスレバ、ウヌガ(ゴト)キナドーッ!』

()ァった、()ァった。そんじゃ、俺様ァ何もしねェから当ててみやがれ」


 サンゲツは片手でチョイチョイと招きながら、裏王パンダを見下ろすような構えで挑発します。


『グ……、グオォーッ!』


 それに乗った裏王パンダは、猛烈なダッシュから灼熱した金棒のような赤い腕を振り下ろしますが。


 バキッ! ドバキャーッ!


 サンゲツはその剛腕を右回し蹴りで弾くと、隙ができた顔面に左後ろ回し蹴りをおみまいしました。

 鼻血を吹きながら、すっ飛んで行く裏王パンダ。


『ブオオオオオーーーッ!?』

「黙って殴られる奴が()()()んだよ。テメェはマジもんの馬鹿だなァ」

「あなたは本当に底意地が悪いですね」

「ハッ、騙される奴が悪りィんだよ」


 呆れるミミコに、サンゲツはぬけぬけと言ってのけます。


『グッ……、オノレガアアアーーーッ!』


 手玉に取られて怒り心頭の裏王パンダは、ガパッと大口を開けて、先ほどの森をも貫くエネルギー波を放とうとします。

 ですが、サンゲツは余裕の表情で微動だにしません。


「えっ!? サンゲツさん!?」


 ゴアアアアアアアアアアッ!


 撃ち放たれた極太のレーザービームが赤黒い邪龍のように、暗黒ウサギを喰らい尽くそうとします。

 しかし!


 バギイッ!


「だらあァッ!」


 気合い一閃!

 サンゲツは右脚を振り上げると、まるでサッカーボールでも蹴るかのように極太レーザーを蹴り上げ、邪龍はあっさり天へと昇って行きました。

 愕然とする裏王パンダに対して、サンゲツは堂々無傷の立ち姿。その右脚からは黄金の輝きを放つ闘気が立ちのぼっています。


『ソ……、ソンナ()鹿()ナ……』

「ギャッハッハッ! どうやら持ちネタが尽きたようだなァ、オイコラ、テメェよォ」


 ニヤニヤと悪い笑顔を見せて、どうブッ殺そうかと算段しながら、舌なめずりをして近づいて来るサンゲツ。

 裏王パンダは捕食される小動物のような、うそ寒さを背筋に感じました。

 が。


(ワレ)、『()(クウ)(シン)メビウス』ノ()()ケテ、(ダン)ジテ()ケル(ワケ)ニハ()カヌ……』


 ゴゴゴゴゴと、裏王パンダは全身から赤黒いオーラを噴出すると、バキッ、メキッ、ゴキゴキッと背中から巨大な(こう)(もり)の翼を生やし、あたかも悪魔のような姿へと変貌していきます。


『グウオオオオオオオオオオーーーーーンッ!!』

「おおォ、最終形態って奴か? バトル物のお約束だな」

「そんな、のんきな事言ってる場合ですか!?」


 裏王パンダが見せる異形にミミコは焦りますが、なぜかサンゲツはのんびり構えて(たの)しそうに笑っています。


『ウヌラハ(ワレ)ニ……、(ワレ)(タオ)サレルベキナノダーッ!』


 バヒュンッ! と翼を羽ばたかせ、裏王パンダはあっという間に上空へと駆け上がって行きました。

 逆さ虹の森を遥かに見下ろす高さに到達すると、裏王パンダは赫黒(しゃっこく)のオーラで球体を形成します。そのシルエットはまるで、(しき)(そう)を反転した太陽のようです。


 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


「おォ、すっげェな。強えェ波動をビンビン感じるぜェ」

「何を喜んでるんですか! あんなエネルギーを地上に放たれたら、逆さ虹の森が消し飛んでしまいますよ!」

『サンゲツさーん! 巫女様ーっ! 助けに来ましたよー!』


 そこへ、村に避難していたはずの逆さ虹の森の(むら)(びと)たちが駆けつけます。

 くま村長さんを始めとして、それぞれ頭に鍋をかぶり、手に手にフライパンやおたまを持って現れました。

 そして、赤黒く染まった空を見上げると、異様な光景にみんな度肝(フォアグラ)を抜かれました。


「な、何だ、あれは……?」

「あれが裏王パンダなの……?」

「おーう、親愛なる俺様の舎弟ども!」

「誰が、いつ、お前の舎弟になったんだよっ!」


 憤慨するアライグマのらすかるさんに、サンゲツはギャッハッハッと笑いながらおちょくります。


「ちょうど良い時に来たぜェ、今からあのクソ野郎をド派手にぶっ飛ばすところだからよォ」

「ぶっ飛ばすって……、あれを?」


 裏王パンダが発するあまりのパワーに地球が呼応するかのように、稲妻が轟き、大地が鳴動しています。

 そして。


『コレガ『(サカ)(ニジ)(モリ)』ノ(サイ)()ダーッ!!』


 ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!


 ついに放たれた裏王パンダのエネルギー波!

 今までとはまるでケタが違い、空を覆うほどの光の波がサンゲツたちの頭上に迫って来ます!


「き、来たあーっ!!」

「どうすんの? ねえ、どうすんの?」

「も、もう、おしまいだーっ!!」

「ガタガタうっせェ! 今が一番面白れェところだ、目ん玉かっぽじって見てやがれェ!」

『目ん玉はかっぽじれないよ!』

「ミミコ、今からすっげェカッコいい所見せてやっから、惚れんなよ?」

「いいから、早くしてください!」

「早くシてだァ? そのセリフは今度ベッドの上で聞かせろよ」

「あー、もうっ!」


 慌てふためく村獣たちを一喝しつつ、ミミコに軽くセクハラ発言をすると、ズオオオオオッ! とサンゲツは全身から黄金のオーラを発します。

 そして、その闘気を集中的に右脚に纏わせ。


「だらあああァーーーッ!」


 月面を宙返りするようなサマーソルトキックを放ち、黄金の弾丸を発射しました!


 ダッガアァーン!!


 砲撃音を轟かせ、金色の満月が光芒を描きながら、赤黒い空に向かって行きます。

 ですが、闘気の弾丸は裏王パンダのエネルギー波に比べ、見るからに大きさで劣っています。

 しかーし!


「小さいからってナメんなよォ、俺様の(きん)(たま)はハンパねェぜェ!」

『言い方!』


 二つのエネルギー体が接触すると、サンゲツの(きん)(たま)はグイグイ赤黒いレーザーを押し返して行きます!


『ソ、ソ、ソンナ……』


 そして、自らのエネルギー波と闘気の(きん)(たま)が相乗された超エネルギーの光波が裏王パンダに直撃し、その肉体、その野望、そしてその全てが吹き飛ばされていきました。


『ゾンナ()鹿()ナアアアアアァァァ……!』


 カッ!! 

 ドッゴオオオオオオオオオオーーーーーン!!



 *



『うわあああーーーっ!!』


 ゴウッとうなる上空からの爆風にあおられ、飛ばされないように木にしがみつく(むら)(びと)たち。

 ようやく嵐が過ぎ去ると、それぞれの安否を確認します。


「みなさん、大丈夫ですか?」

「な、なんとか……」

「オレたち、勝ったのか……?」

「い、いや、あれは……」


 だれからともなく空を見上げると、おそらく裏王(ネガ)パンダと思われる、黒焦げの身体がブスブスと煙を上げながら空から墜落して来ます。

 だらしなく大口を開けたまま全く動かないようですが、ここからその生死を判断する事は難しいように思われます。

 ですが、サンゲツは両足を地面に踏ん張ってタメを作ると。


「そんじゃ、ちょっくら行ってくるぜェ!」


 え? どこへ? と、村獣が疑問を唱える間もなく。


 ドンッ!


 サンゲツは大ジャンプをすると、ひゅるるーと落下中の裏王パンダに向かって突っ込んで行きます。


「オラオラオラオラオラァーッ!」


 空中で飛びヒザ蹴りの初撃を加えると、ドガバキズゴバゴッと機銃器(マシンガン)のような蹴りの散弾を浴びせます。


「ドラァーッ!」


 回し蹴りで裏王パンダをぶっ飛ばし、自身はボンッ! と空気を蹴って先回りをすると、さらに反対側に蹴りとばします。


「ドラドラドラドラーッ!」


 ボンドカ、ボンドガッ! と、幾度もそれを繰り返し、(ふた)()はジグザグジグザグと上昇して行きます。

 裏王パンダの黒焦げた身体と、空を自在に飛び跳ねる暗黒ウサギの姿は、まるで空へ昇りゆく黒い雷のように見えます。


「終わりにしようぜェ……」


 ドバキャーッ!


 サンゲツは前方宙返りからのカカト落としで裏王パンダを下方に蹴り落とします。

 これで終わりかと思いきや、それを音速(マッハ)で追い抜き、サンゲツは黄金のオーラを脚に纏わせながら着地すると。


「月まで飛んで、行きゃがれェーッ!!」


 ドッゴオオオオオーーーーーンッ!!


 裏王パンダをサマーソルトで蹴り上げると、盛大な爆音を轟かせて空の彼方へ飛んで行き、キランッと星となって消えてしまいました。


「おっしゃあァーッ! 俺様の完全勝利だァーッ!」


 うおーッ! ◎△$♪×¥●&%ーッ!! と、何をわめいているのか分からない雄叫びを上げるサンゲツを見て、うわあ……と村獣たちはドン引きです。


「いやいや、いやいや」

「やりすぎ、やりすぎ」

「かわいそう、かわいそう」

「どう考えても、絶対にオーバーキルだよ」


 村獣たちは、改めて暗黒ウサギは凶暴で極悪なのだなあと実感したのでした。

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