覚悟
父上の部屋に向かう最中に、今の現状を混乱する頭の中で考えていた。
俺が小さい頃から見ていた景色はだだっ広い艶やかに飾られた部屋だった。その言葉だけを取ればなんで裕福で素晴らしい家庭なのだろうと思うだろう。だが、その部屋にはなにかしらのものが欠けていた。俺はあの時はなにも考えず愚鈍で悟らないように生きてきた知らないふりをしていた。けど今はいえる、愛情が圧倒的に欠けていた。兄のギルバートの部屋には父上と兄上が微笑んでいる写真がいくつも飾られるが俺の部屋にはそんなものは1つもなかった。兄がイエスといったら全てがイエスだった。ただ兄のイエスのサインでも覆せないものがひとつだけあった。それは俺に関することだった。父上は俺を愛していなかった。全てが兄中心、才能も人望も父の愛情すらも、、その中でも俺は努力しようと足掻くわけでもなく、現実から目をそらし現状に甘んじ兄とシルヴィの加護の下で無力なままただ守られてきた、、。
昔のことを振り返っていたらあっという間に父上の寝室の前までたどり着いていた。父上の側近、あの時俺の胸を刺した男ともう一人が護衛している。額からは大量の汗が滲み出て心臓は痛いぐらい速く動いてもう自分の心臓の音しか気にならなくなる。護衛の一人が俺に気づき武器を掲げる。
「ここは国王陛下の御寝室である。何用か。」
思わず笑いそうになる。一応は第2王子でまだ約6歳であるはずなのにこの扱いなのかと。その笑いを堪える。
「ヨシュア・デ・ナガルだ。国王陛下に明日の会合のことでお伝えしなければならないことがあるため参った。ここを通してもらえないか。」
護衛の一人が寝室の中に入り、父上に伝えにいく。すぐにでてきた護衛は
「ヨシュア・デ・ナガル。国王陛下がお許しになられた。入るが良い。」
許しの言葉がでて護衛二人の間を通り抜け、とうとう父上の寝室に入った。広い広い空間のベッドに隣接している机に父上はいた。俺を殺せと命令した時白髪だった髪はきらきらと輝く金髪に彫りの深い目鼻立ちに鋭い眼光目の色はまるで深い深い闇を背負ったサファイア。一瞬父上の顔を見て止まった俺を真っ直ぐに見
た父上の顔は憎悪をまとっていた。
「明日の会合のこととはなんだ。用件を早く言え。」
あぁ、、。なんて嬉しいことなんだろう。俺のことを見てくれている例え愛情がないとしても、。あの時は見てくれさえもしなかったのに。こんなことで一々喜ぶ自分に嫌気がさして言葉を発する。
「国王陛下、。貴重なお時間をとらせ申し訳ありません。明日の会合、体調が優れないので悪い影響がでることを防ぐために辞退させていただきたくぞんじあげます。」
父上の眉毛が不愉快そうに歪んだ。
「体調管理もできないとは愚かしい。明日の会合、貴様はでなくていい。そもそもその程度の話だったら私の護衛に伝えればよいものを、、。」
俺がずっと黙り続けていると父上は本当にもう限界だというように
「用件が以上ならはやくでていけ。」
父上は瞳に俺をもう写さなくなった。そのことに気づきながら俺はタブーをおかした。俺だけの用事で父上に話しかけるというタブーを。もう何も後悔したくないから。
「父上、、なぜ私をそこまで忌み嫌うのですか、」
次回デルメスの過去が、、