愚かな自分
読んでくださる皆さんに感謝を。
また呆然としていた俺を心配そうに眺めていたツキタチは、ゆっくりと真剣な瞳で俺に向かって口を開いた。
「明日はラグノー王家第一王女シルヴィア・フォン・ラグノー様がおいでになります。ヨシュア様の体調が優れないようでありましたら、明日の会合はヨシュア様が出る必要はないかと思われますがどういたしますか?」
その言葉を聞いて、俺の瞳が最大限まで見開いた。そう明日はシルヴィと俺が出会う日なのかと。その日のことはなぜだか曖昧で俺の中に記憶はない。ただその次出会った時にシルヴィと結婚の約束をしたことだけが記憶の中にあった。
「、、、ヨシュア様?」
数分間フリーズしていたのだろう、ツキタチがさらに心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。ツキタチの顔がさらに心配そうな顔になる前に明日シルヴィに会おうと答えようと口を開いた。
「体調に問題はな、、」
その言葉を口にした時、頭がずきっと痛み父上の言葉が思い出された。
『あのものが死ねばシルヴィアは死ななくて済んだものを』
胸が苦しい。吐き気がする。どんどんと俺の顔は青ざめていく。その間に俺の思考の中である1つの結論がだされた。俺とシルヴィが出会わなければシルヴィは死なないのではないか、そう思いなんとか言葉を絞り出してツキタチに告げる。
「すまない。体調が優れないんだ、。明日の会合は、、厳しい、。」
「了解致しました。国王陛下に申し上げて参ります。」
ツキタチが恭しく俺にひざまづき、部屋を退出しようとする。国王陛下、その言葉をきいて思わず声を上げてしまう。
「あっ、」
ツキタチの動きが止まり俺に目線を向ける。その目線をみつめ、俺は気付いてしまった。どうしても俺は国王陛下であり父上であるデルメス・デ・ナガルに会いたいと。あんな目にあっても直接聞かなければ納得できないという愚かな自分の気持ちに。
「ツキタチ、俺が国王陛下に報告しにいく、。」
俺の言ったことに驚いたのだろう。ツキタチは切れ長の目をまん丸と見開いた。それでも落ち着いた物腰のまま
「失礼ながら、ヨシュア様は今体調が優れない御身でございます。私が申し上げて参ります。」
「いや、いい。ツキタチ俺がいく。」
「いえ、、」
「なんだ、お前は私の命に従わないと言うのか?」
そう話した瞬間、ツキタチは黙り込んだ。黙り込んだツキタチの横を通り抜ける。その瞬間ふと不思議なことに俺は思った。彼はきっと気付いているのだろう。俺が父上に愛されていないことに。いや、彼だけではないこのナガル王家に仕えているものはたぶん皆知っているのだろう。過去の俺が気づかないふりをしていただけで。あぁなんて愚かなんだろう。まだ青白い表情のままにふっと笑いが漏れでる。
そのまま俺は父上のいる場所に向かった。