エピソード群01
◆型◆
■要約
・
; 視点: 一人称<刃沼>
; 場所:
結界魔法と魔道具
■要約
・
魔道具
「魔道具って、魔法が使える道具のこと?」
「ざっと云えば、そういうことですね」
「なるほど、なるほど、作った」
「……え!? 作った!?」
「これこれ」
取り出したのはコルク栓
「これに、私の結界魔法を詰めた」
「な…なんで、よりによってコルク栓なんかに……」
「目の前にあったから」
「さぁさぁ、使ってみて」
シャノンは使ってみた。
「本当に、ハヌマさんのものと、同じ結界が張れますね。これは使い切りの魔道具ですか?」
「魔力の残量がある限り、繰り返し使えるよ」
「魔力の残量?」
「このコルク栓から、結界を出したり、そして、戻すこともできる。結界に込めた魔力は、結界を張っているときに消費する。結界が攻撃されたときは、なおさら魔力を消費する」
「ああ、はい。使い切りではなく、再回収ができるのですね」
「そういうこと。そして、魔力を全て使い切ると……」
「使い切ると……?」
「普通のコルク栓として使える」
「それは分かってます」
*
「ほら、シャノンが云ってたじゃん。私の結界魔法は、他人に見せない方がいいって。そこで考えたんだけど。
その魔法は、魔道具のおかげってことにすれば、いいじゃない、なんて」
*
「ちなみに、魔道具開発の過程で、こんな危険物が出来ちゃったりして」
差し出したハヌマの手にあるのは、見るからに危険色の赤色で点滅する缶詰。
「な、ななな、なんですか!? このビカビカ光っているのは」
「私の魔力を極限まで詰め込みました。名づけて、『ほしはかいばくだん』」
「この星ごと滅ぼす気ですかっ!?」
「それほどの威力はない」
「どれほどの威力があるんですか……?」
「お国を一つ、消し飛ばすくらいなら……」
「なんて、物騒なモノ、作ったんです!?」
「冗談冗談。本当は、爆発させてみないと、どれほどの破壊力か分からない」
「絶対、爆発させませんからね!?」
「じゃ、やる。プレゼント」
ほい、と缶詰渡す。
「ひえ、は、ふ」
シャノン、汗、ダラダラ。
「さぁさぁ、誤爆誤爆」
シャノン、首をブルンブルン振る。
「んじゃ、さっさとアイテムボックスに収納しておくことだね。異空間に放り込めば、とりあえず安全さ」
シャノン、すぐさまアイテムボックス展開。そっと、『ほしはかいばくだん』を入れる。
「ふうううぅううう……」
「落ち着いた?」
「……」
「ちょっと来て」
シャノンの手を引く。
ある一室のドアを開けると――
シャノンはうつむいて、ぐったり倒れてしまった。
部屋の中には、缶詰が山積みになっていた。もちろん、危険サインを赤く点滅させて幻想的だった。
「おや、まぁ、シャノンには、まだ刺激が強すぎたか。――鬼さん〜!」
「はっ、なんでしょう」
「これ全て、鬼さんのアイテムボックスにしまっといて」
「分かりました。……つかぬことをお聞きしますが、この、見るからに おどろおどろしい代物は、いったいなんでしょうか?」
「聞きたいなら教えよう! これは『ほしはかいばくだん』と云って、私の全身全霊の力を詰め込んだ――」
鬼さんは、私の解説を聞いているうちに、ウキウキしたのか、手を震わせながら、缶詰を回収していった。
鬼さんの顔は、笑顔で固まっていた。
いいプレゼントだ。
結界魔法は
発生させた結界は、ダメージを受けないと長持ち。
ワーム戦のときにハヌマが作った結界は、丸一日持つと云ったが、それはワームたちの攻撃を受け続けた場合。
攻撃を受けなければ、もっと長く持つ。そもそもが尋常ではない結界だったので、半永久的に持つ。
楽園へ行きたかった
■要約
・
; 視点: 一人称<コウ>
; 場所: 現実世界
現実世界が嫌いだった。現実逃避がしたかった。
私は、毎晩、願った。
楽園に、天国に、生きたい、と。
楽な、楽しい、世界に、行きたい、と。
眠る意識の中、何度も祈った。
娘様の力の確認
■要約
・
; 視点: 一人称<コウ>
; 場所: 覇王城跡?
「娘様、一応、ご自身の力の確認をした方が良いかと、進言させていただきます」
「力?」
「覇王様と一体となったその力量は、想像をはるかに超えるものと思われます。大いな力は事故を伴うもの。ですからにシミュレーションが大事かと」
「ふうん……そー、ですか。じゃあ、練習試合でもしますか? でも、私は戦闘経験ありませんし、ちょっと怖いですね」
「い、いや、とんでもございません! ワタクシらが娘様の相手にはなりますまい。死んでしまいます! 怖いのはワタクシめの方です」
「そんなにですか、私の力というのは」
「どうやらご自覚がないようで……、ですから、これを」
鬼さんは、太い丸太を軽々と持ってきた。そして立てるように置く。ドシン! と。
その上さらに、鬼さんは金属製の盾を持ってきた。
「これは人族が使う、割と上物の盾です」
それを、丸太にくくりつけた。
「さあ、どうぞ、拳をふるってください」
私は丸太に近づいて、そこにくくりつけられた盾めがけ、思い切り正拳突きをした。
「!?」
その拳は、やすやすと盾を貫き、丸太も貫いた。そののち、盾は、ヒビが広がるようにして、割れて落ちた。自分でも驚いた。
「……その拳を受けては、大抵の者は助かりますまい」
今度は丸太に触れた。そして握りしめる。と、硬い丸太も、千切り取れてしまった。
握力も超人的らしい。さらに拾った石を握り潰してみたが、当然のように粉砕してしまう。
「こんな馬鹿力で……、人の中で生きられますか」
「力のコントロールが問題です。大丈夫です。娘様なら出来ます!」
異世界へ来た。そして旅に出たい
■要約
・
; 視点: 一人称<コウ>
; 場所:
異世界に来た。(娘様の器に戻ったということでもある)
鬼さんと、小鬼さんたち、喜ぶ。
私は聞く。
「何か、私にやってほしいことがあって、連れてきたのではないですか?」
それに対して鬼さんと、小鬼さんたちの返事。
「いいえ、ワタクシたちは、娘様が戻ってくださっただけで、念願が叶いました」
「娘様のご命令に従います! 何なりと」
「私は旅に出たいです。一人で」
「お一人で、ですか……。ワタクシめも同行させていただけませんか? 色々とお役に立ってみせます」
他の小鬼も云う。「自分も!」、「このワタシめも!」
「じゃあ、鬼さん一人だけ、連れて行きます」
「それで、つかぬことをお聞きしますが――、何用で旅立とうと?」
「とくに明確な要件はないです。ただ、私はこの世界のこと知りませんし、興味あるしで……、じゃあ、あちこち行ってみよう、と」
鬼さんと馬車
■要約
・やはり鬼さんは人に恐れられる。
; 視点: 一人称<コウ>
; 場所: 野外
鬼さんを従えて、旅立った。
人の街に行きたいなと思った。
ふと、気になって鬼さんに問う。
「鬼さん」
「はっ! 何でありましょう」
「鬼さん、もしかして、人に怖がられますか?」
「それほどでもないと思います」
それほどでもないそうだ。
まもなく、馬車が通りかかる。それを見て、「止めたいな」、と呟くと、「お任せください」と、鬼さん。
鬼さんは道の ど真ん中に立ちふさがった。その巨体を大の字にして。
馬車は止まり、その中にいる人々が、「魔物だ!」、「それもオーガじゃないか!?」と、どよめきたっている。武装した人たちが出てくる。
そして、私を見かけるなり、助けるように「早く、こちらに逃げなさい!」と、馬車へ誘う。
私は、悠々と馬車へと入りながら云う。
「あの鬼さんも、一緒に乗せてくれませんか?」
馬車の中の人、怪訝な表情をするので、さらに私は言葉をつぐ。
「あれは、私の仲間です」
私は鬼さんに向かって手を振る。鬼さんも同じように手を振り返す。
鬼さんが馬車へと乗り込む。その間中ずっと、馬車内の皆さんは、こわばった表情をしていた。
「まさか魔物使いのお嬢ちゃんだったとは」、と誰かが云った。
魔物使い――とは、魔物を従える人のことだろう多分。そういう理解で、こちらも尋ねてみた。
「魔物使いは珍しいのですか?」
「いんや、それほど珍しくはないがね。ただ、これほどの上位の魔物を従えるのは……、あまり見ないだろうなぁ」
続けて別の人が口をはさむ。
「この魔物はオーガに似ているが、違うな。何なんだ?」
オーガという魔物がいるらしい。
「言葉も使えるようだし、魔族の一種のようだが」
魔族というのは、言葉を使える魔物のことかな?
鬼さんが答えた。
「自分は、ジパング・オーガという種族です」
皆さん、きょとんとした。
「ジパング・オーガ……? 初耳だな、それは」
「オーガの上位種に相当するか、と」そう鬼さんは答えた。
目を見開いた方が云う。
「オーガですら相当の魔物なのに、そのさらに上位種か……。お嬢ちゃん、いったいどうやって、このお方を従えたんだ……?」
私は答えずに微笑むだけにした。
覇王の部下たち
■要約
・覇王の部下たちが話し合う様を試しに書いた。
; 視点:
; 場所: 世界ファンタジアのどこか
豪奢な円卓を囲む、幹部っぽい人々が話している。異形の方々。
「覇王様が消失されてから、この世界も生きづらくなりましたなぁ」
「近頃は、魔王サタンが出しゃばっておられるし」
「魔族を従えるのが魔王ならば、その魔王を従えるのが、さながら魔神様。だが、その魔神様も、今は調子がよろしくない」
「人族は、相変わらず好き勝手やっておるし……」
「覇王様……、あなたはどこへ行ってしまわれたのですかっ」
誰かが叫びながら現れる。
「見つけたぞおぉ! 覇王様を見つけたぞぉーっ!」
「なに! でかした! で、覇王様はどちらに?」
「異世界だ! オーバーワールドの地球とかいう星だ」
「知ってるぞ、地球。しかしまぁ、なんで、そんな辺鄙な所に」
「転生させられたのだ。体も心も弱体化され、無能にされて。早い話、流刑だな」
「弱体化が極められている。生まれた時から生きる力をなくしている。これでは、今まで生き延びていたのが奇跡だ」
「さすが覇王様です……、普通の人間とは違いますね」
「だが! 今の覇王様は、云ってみれば、普通の人間以下なのだ。いつ死んでもおかしくない!」
「は、早く、覇王様の身柄を!」
「うぬ!? これはっ」
「お主も、気づいたかっ」
「覇王様と、覇王の娘様の、魂が、重なっている……?」
「娘様? ――コウ様の魂も……?」
「そうか! 分かったぞ! 覇王様は、娘様に力を託したのだ。二人分の巨大な魂を持つ娘様だからこそ、耐えしのげたのだ」
「だが、今のコウ様の器は、人間の年老いたオスですぞ?」
「神のイタズラか。不一致な器を与え、さらなる弱体化を施したらしい。おかけでコウ様の心が壊れかけている」
残虐な娘様
■要約
・覇王の娘様の残虐非道さを描写。この娘様は、生まれ変わる前の娘様かもしれないし、以前の娘様の性質がよみがえるコウかもしれない。
; 視点: 一人称<コウ・覇王の娘様>
; 場所: 過去のファンタジア
ある強盗団のアジト。
「こりゃ、やめられないな」
金銀財宝をこぼしながら話す盗賊たち。
「覇王の名を借りたら、こんな、仕事しやすくなるなんてよ」
「ははははは」
酒盛りが始まった。
そこへ、戸を打ち破って、紅の髪の少女が舞い込む。
「なんだお前、誰だっ!」
「このガキ! いったい何だって――」
「待て! この方は――っ、は、は、覇王の…娘様」
「覇王の娘だと!?」
その娘様が、口を開く。
「そう怖がんないで。今日は遊びに来ただけだから、さ。――ヌフフッ」
娘様の残像がいくつも見えた。と思いきや、娘様が一人の男を、背後から片手で首を絞めている。
「うぎか、かへ……っ」
まもなく、その男は意識を失う。そして、捨てるように、娘様は男を投げた。
「弱っちいの」
周りの盗賊たちが云う。
「いったい、お前、何をした……?」
「俺らに恨みがあるのか?」
「ここにある財宝の半分をやろう。それで手を打たないか?」
フハぁっ……と笑い声を漏らして、娘様が云う。
「もちろん、宝はもらう、全部もらってくよ。でも、それじゃあ、足りないね」
娘様が盗賊の一人に詰め寄り、そして蹴とばした。蹴とばされた盗賊は、そのまま、天井に体を打ち付けたあと、落ちて、床にも叩きつけられた。
「……化け物だ」
誰かが、そう云う。
「化け物?」
鋭い目つきで、娘様は、そう云った者をにらみつける。
「…………」
相手は顔がこわばる。何も言えず、じっとしている。
「こんな程度で、化け物呼ばわりなんて、ね……」
娘様は、じっと、その化け物呼ばわりした賊の一人に向かい、歩み出す。
「まだ私は、ホコリを払うくらいの力しか出してないのに、さ」
相手となって賊と、間を開けて、娘様は立ち止まる。
そして、相手の方向へ、一撃の張り手をする。
空気は圧縮され、なおかつ衝撃波も出した。しかし、直接攻撃はしていない。にもかかわらず、相手は突然に吹っ飛んだ。
周りの盗賊たち、恐れおののく。
「今のだって、まだ、単なる物理攻撃。――今度は、いよいよ魔法でも使ってみようかぁ?」
「待て。お待ちください。私らが悪うございました!」
盗賊の頭っぽい大男が、土下座した。
「お見逃しください! どうか、この通りで! 宝はすべて差し上げますたい! 今後、あなたの名前をかたることもしませんし、あなたの視界にも入らないように致します!!」
「へぇぇ〜……。でも、もう、私の視界に入っているんだけど、な」
「い、今すぐに――オイ、お前ら、さっさと退散するぞ!」
「いいさ。他の方法があるもんね」
「え? と、いいますと?」
何を云っているんだ、という怪訝な表情で、盗賊のボスが尋ねる。
「あんたらを全員、ぶち殺すんさ。死んでれら、もう何もできない。――私の遊び人形になれ……!」
娘様が飛び立つ。背中に羽根状の黒いモヤを漂わせて浮遊している。
周囲が黒く染まる。それとともに――
「な、なんだこれ。出られねぇ!」
「くそっ、結界かっ! 結界を張りやがった!」
「仕方ねえ。こうなりゃ、ヤケだっ! あいつを殺す」
「だが、奴は覇王の娘だぞ!?」
「関係ねえ。奴をやらなきゃ、俺らがやられる。死ぬ気で戦え! いくぞォ!!」
宙から舞い降りてきた娘様を目がけて、盗賊たちがわらわら群れて襲う。
「楽しくなる」
娘様はゾッとするような笑みを浮かべる。
盗賊たちの悲鳴とともに、ボチリ、ビジリと、相手の体をもぎ取り、千切りとってゆく。