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◆ボツ文たち  作者: ワイヤー・パンサー
『ノロ』(現在執筆中の新作)より
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武器屋&村長宅

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;武器屋シーン、ボツ。


武器屋の戸をくぐる。


「こんにちは~」


「あいよっ」


店には、いくつかの武器・防具が並べてあった。


期待してはなかったが、銃器の類は一切、ないようだった。


「何か、要るかね?」


「そうだねぇ……」と言いつつ、肝心なことを思い出した。

「あ、金がない。んじゃ」


金の工面をするために、一旦、店を出ようとしたが、肩をつかまれる。


「ちょい、待ってくれ。アンタ、聞いたぞ。他では見ない代物を持っているって? 何なら、こっちでも、物々交換、やってやるよ」


「ああ、それは助かるねぇ」


私はまた、いくらかの日本硬貨と、決して良質とは言えない装備一式を交換した。


私は剣を構えた。それだけで、店主は察した。


「剣を使うのは初めてか?」


「生まれて初めてさ」


「そうだろうな。んじゃ、こっちで思う存分、試し切りでもしていけ」


店の庭に案内された。そこには、何度も切り刻まれた大木が、それでもなお、堂々と育っていた。

店主は、手で、どうぞ、と示す。


私は、剣というより、斧でも振り回すがごとく、大木に一振りした。

「そらっ!」


ガシンッギリリィィィッッゥ~ッッッッッッ


「おお、おお、耳と腕に響いた、響いた」


「なんてこった、砕ける……とは」


私の手には、刃こぼれどころではない砕け方をした、購入したての剣があった。

今も、刃の破片が、ポロポロと、舞っていた。


私は、刀剣類については素人だったから、分からなかった。

考えてみれば、刀剣類の中でも傑作と言われる日本刀でさえ、切るのはワラの束だったか。太い木を、まして木目に沿わずに叩き切るなんて、無茶だったか。


私が黙っていると、店主が口を開く。


「アンタは、どういう腕力をしとるんだ?」


ん、なんかズレたことを聞かれた気がする。


「あまり、私は腕立て伏せをしないもので」


「いや、そうじゃない。オレの作った剣は、まして新品は、切れ味はともかく、頑丈さは、決して粗雑じゃないつもりだ。

頑丈さテストのために、この大木で、いつも剣を振り叩いているが、刃こぼれなんて、したこともない。まして、砕けるなどと……」


店主は、ワナワナ震えている。


「あ、この剣は、そちらさんの手作りで。いやぁ、見事ですなぁ~」


「そんなことは問題ではない! 理由どうあれ、オレは、あそこまで”使えない剣”を売りつけてしまったということかっ! 『使えない剣』を!」


「壊れちゃったねぇ。ここまで壊れちゃ、たしかに、使い続けられないな。店主、あんたには悪いが、この剣、捨てなきゃ」


「分かった……、分かった……、待ってくれ。オレは、『売ったらそれで終わり』、という無責任なことはしない。――つまり、こういうことだろう?」


「どういうことなんだ?」


「あんたは、あんたの馬鹿力にも耐える武器が欲しい、と」


「腕力には自信がないんだけどな。ずうっとやってきたのも、デスクワークばっかりさ」


   *


「頼みがある」と、店主は言う。


「なんだ?」


店主は、ずいっと、斧を差し出す。


「オレと一緒に、『鉄の木』を切ってくれ」


「鉄の木?」


「ああ。正式名は分からん。ただ、ここらでは、『鉄の木』の俗称で呼ばれている」


「んで? それが、何か重要な木なのか?」


「それを材料にすれば、途方もなく頑丈な武器ができる。だが!」


「……」


「その木自体が、とてつもなく硬い。数十のもの斧と、並外れた腕っ節が要る。だから、アンタの手を借りたい」


「肉体労働には自信がまるでないが……」


「アンタができなけりゃ、オレにもできん」


見たところでは、店主のほうが、はるかに大柄で、腕も太い。

どう見たって、力があるのは店主の方だが。


「やるだけ、やってみよう」――そう答えた。




村長宅

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;ココカラ村に入り、村長宅でのシーン【ボツ】


ココカラ村にある、こざっぱりした建物の中で、村長と対峙している。


自分より歳はだいぶ上だが、腰は曲がっていない村長が、質問してきた。


「ンム、まず、そちら様の名は、何とおっしゃる?」


「名前? 名前ね。私の名は、ノロ、と申します」


「そうか、ノロさんとやら、見るに、見慣れない格好だが……、いったいどこから来たか、お尋ねしてよろしいか?」


「実は、すごく、私の記憶は混濁していて……。覚えているのは、日本にいた、というくらいでしかなくて……、ええ、さっぱりで」


「ニッポ? ニッポというのは?」


「にっぽん、日本です」


「どれ? ニッポン? ニホン?」


「え? 私たちは、日本語を話しているじゃありませんか? なのに日本が分からんのですか?」


ちょっと私は突っかかる言い方をした。私の戸惑いが声に滲む。


「ニフォンゴ? いったい、君の出身はどこなんだ?」


私は言葉を選んだ。


「日本です」


「初耳だ」


「本当に?」


「ウソを言っているわけでは、ないのか?」


「先ほども言ったように、私の記憶は混濁していて。私がいた国が、日本だというのも、ちょっと自信がありません。ジャパンという名だったような気さえしますし、ヤマトだったような気もします」


「そうか……、いずれにしても、君の服装から風貌は、ここからの人間でないことを示している」

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