22 奇襲
いつから本編が始まっていると錯覚していた?w
次からが本編の幕開けです。
歩いて二十分ほどすると、『ディファレンス』が見えて来た。
「なぁアル。お前はなんで勇者のパーティーに行きたくないんだ?お前程の実力があれば絶対に親父を超える階級の貴族になれると思うんだが?」
「私は位何かいらないよ。でも確かに勇者のパーティーで活躍出来るのは間違えないね。そしたら今よりも楽に生活できる」
「じゃあなんで...」
「私は楽しく冒険がしたいの」
「お、おう。そうか」
そうだな。俺はなんて馬鹿な事を聞いたんだ。勇者のパーティーはアルをアル本人では無く、アルと言う『魔導師』として扱う。
そんなパーティーが楽しいはずがない。
何て馬鹿な事を聞いたんだろうか?皆が冒険者に憧れるのは何でだ?と考えた時にまず「面白そう」と出て来たのは、きっと俺だけじゃないはずだ。
「面白そう」と言う言い方は軽い口ぶりで「冒険者舐めんじゃなねー」と言われそうだな。でも、戦いで起こる戦術、間一髪生き延びるリスク、そして、仲間にこの身を預ける信頼。それが全て積み重なって、「楽しい」となる。それが冒険者だと思う。
前世で言うサッカーに例えてみよう。サッカーと言うのは、怪我も多い。ヘッドだって痛い。総合的に、試合でボールに触れる時間が少ないかもしれない。
だけど面白い。何故なら仲間でボールを必死に繋いで、繋いで、繋いで、最後にゴールをもぎ取り、勝利する。その喜びと快感は、金には変えられない。だから「楽しい」のだ。
人と人は支えあって生きる。そう言う生き物だ。
「あぁー。何かまだ一日も経っていないのに、何故か懐かしく感じます」
「その気持ちは分かるぞ」
「ところで李依お前を無理やり冒険に連れて来たのは悪いと思ってるよ。でも会社は大丈夫なのか?」
「ん?へーきだよ。何せ私は会社を作って、施設を作り、繁栄させた。後は巨人族に任せっきりだからね。私は印税で毎日楽しく生きてるわ!」
うわーただの印税泥棒だった。尊敬して損だな。
「それで服は誰が作ってるんだ?」
「巨人族よ」
「え?あれが?」
「巨人族を舐めないでよね!あれでも凄く器用なんだよ?」
「そうかそうか」
◇
俺達は討伐に出て1時間くらいしか経っていないのでギルド内はガラガラだった。
「はい。サンドランナー264体の討伐ですね。凄いですね、山分けして4アリスです。死体もあればもっと高額で売れたのですが...」
「は、はい...今日は無いです」
冒険者カードには討伐したモンスターの記録管理なども出来る機能がある。今現在俺達はパーティーを組んでいるので、討伐記録が統合される。
一体も倒して無いのに、金は山分け何故か罪悪感を感じる。
「なっ、なぁこの4アリス今日はアルに譲るよ」
「ん?何で?」
「いやぁ〜何となく...」
「やだわよ。私達パーティーでしょ?」
ご最もです。
俺達はまた李依ハウスに行き、昼食を作ってもらう。
予定だった...
李依ハウスについた頃俺は李依に質問した。
「李依って料理できるのか?」
「出来ないわよ」
「じゃあどうやって食うんだよ?」
「ふふふっ!私にはハセガワと言う強き味方が居るのだぁ〜」
「お前朝自分で『今日はハセガワ休みだから誰も私の面倒を見てくれないのよねぇ〜』ってクソ発言して無かったか?」
「...」
という事でギルドに来てご飯を食べる事にした。
朝から酒、いうわけにも行かないのでオレンジジュースで我慢した。俺はあまりお腹が空いて居なかったので食べない事にして、何故か睡魔に襲われたので、そのまま李依ハウスで寝ることにした。
ベットに着くと、意識を奪われるかの様に寝てしまった。今日の目覚めは良かった癖に...
◇
「貴様は何をしているのだ?」
「誰だ?」
俺は寝てから、意識が覚醒するとここにいた―起きている?いや違うな。この空間は多分自分の心だと思う。
今現在俺は黒い空間に一つだけ置いてある椅子に座っている人物の前に立っていた。
「誰かって?そんな野暮な質問をする奴が居たとは...」
その人物は俺と同じ色の髪。黒髪をしていて、全身に、金の甲冑で覆い尽くされている。その紅きマントは、火焰を連想させ、とても凛々しく思えた。
「何を言っている?俺とお前は初対面だろ?」
「そうだな。だが違うな。我とお前の対面は初だ。だが悠久の力を受け継ぎし者は皆我を知る者よ」
「そんな周りくどい言い方はをすんなよ」
「ほぅ?まだ分からんとな?まぁ良い。時間の様だ。次会う時に我の正体の答え合わせと行こうか。おっと、まだ要件を話していなかったな。『覚醒』」
「なにを―」
そう言った刹那。俺の意識は再び覚醒する。
◇
「あれ?俺何か大切なことを...」
俺が起きた瞬間、エレベーターの方から李依がやって来て。
「大変よ!急いで正門まで来て!」
「なんだ?」
俺は言われた通りに来てみると、夜にも関わらず冒険者達の集団が居た。街灯を集中させているため凄く明るい。
「何の騒ぎだ?」
「サンドランナー約100000体がやって来たのですよ」
「ひゃ、10万!?」
ステフが深刻な顔で教えてくれた。
「避難は?」
「終わりましたよ」
「アルはどこだ?」
「昼の魔法で魔力がもう無いのです。なので瞑想で魔力回復をさせています」
「マジか...」
「はい。なのでアルには最終ラインを死守してもらうのでフェイくんは頑張って倒して来てください」
「居たぞぉぉぉぉぉ」
とある冒険者が望遠鏡で遠くを見るとサンドランナーがやって来たらしい。
「「「「うおおおおぉ」」」」
一斉に冒険者達が横並びになり応戦した。魔導師が1人も居ないのを見ると、きっと皆脳筋連中なのだろう。
俺は、エクスカリバーを使う事にした。何故なら―
「うぉりゃー」
俺は剣を100メートルくらい伸ばしてサンドランナーを一掃した。多分400は殺ったな。
ステフは怪我をした人の応戦をしている。
戦術は組む暇なかったが、その場のノリでこうなった。
3層に別れて、第1層が最前線で片っ端から切り、第2層が残りを始末。第3層が、全除去&回復になっている。
皆視界も暗い中良く頑張っていると思う。
俺は第3層に居ながら、第2・5層の敵を剣で切り落とす。なのでステフは治療のみだ。
「瞑想が終わったわ」
アルのが終わりを告げる。
「皆戻れぇぇぇぇ」
灯台の上から音の拡張魔法で男が戻れと知らせる。
皆が戻っている間、俺は慎重にエクスカリバーで一掃する。一方的攻撃が出来るのでかなり便利だ。
「『レイン』『フリーズ』」




