プロローグ
本当に幼い時のことはよく覚えていない。
一緒に暮らしていたサミュエルおじいさんは、僕の両親は流行り病で死んだという。
サミュエルおじいさんは森の植物にも詳しかったし、熱を下げる薬の調合や、家畜の病気を防ぐまじないを村人からよく頼まれていたから、なぜ僕の両親を助けられなかったのか疑問に思ったことがある。
おじいさんにその疑問をぶつけると、おじいさんは寂しそうに笑って言った、それが運命というものだと。
その時は、村の子供たちから両親がいないことを理由に仲間外れにされていたから、煮え切らないおじいさんを腹立たしく思った。
それから4年ほど経ち、おじいさんの右腕として村の病人を訪ね、生死と隣り合わせの今なら分かる。
人を助けるということは万能ではない。
助けられない命もあるのだということを。
そして、自分が村の子供たちからいじめられていた理由は、村の大人たちが自分を疎んでいるからで、その理由が、自分が黒い髪、黒い瞳、褐色の肌をしているからだということも理解していた。
サミュエルおじいさんは明るい茶髪、緑色の瞳、白い肌をしている。
自分の髪の色や肌の色が違うのは母親がこの地の原住民だからだ。
"野蛮な原住民"
そう、僕は悪魔の子供だ。