judeccaにて -降りてきた一滴ー
一滴の光が落ちてきた・・・。
暗い、光のないその闇に一滴の光が・・・。
光はゆっくり沈むように下へと落ちながら、しばらくして無軌道に彷徨いはじめた。
光は人に翼が生えたような天使の姿が発していた。
笑顔の似合いそうな美貌をたたえた顔立ちは、暗闇にあってか、涙にぬれた憂いしか見えない。
発する光も弱弱しいがその光が照らす闇に何かしらの変化が現れた。
「あ!」
天使が声を出す。目に入ったその闇は岩肌のような壁がうつっていた。
漂う空気には凍てつく冷気が含まれており時折その天使の光を吹き消さんばかりに吹きすさぶ。
天使はその壁伝いとその冷気の風上に進みだす。
風は強くなりだす。凍てつく風はどこか生臭く醜悪な臭気を帯びていて、
天使は幾度気分を悪くしたか解からない。しかし、それ以上に天使の意識は今時分の置かれている
託された使命に疑問を持っており、その自問自答に支配されていた。
『なぜ私があの男に会わなければならないのか・・・?
主から遣わされたとはいえ、主はなぜ今にあの男を目覚めさせようというのか・・・?』
その疑問を繰り返すうち天使は風のおこる場所に到達した。そこが天使の目的の場所でもあった。
そこはjudecca。かの詩人「ダンテ」が冥界下りのおり、その最下層に位置づけ、
世界の最深部、人類史上最も重い罪を犯した罪人を落とした場所。
そこは悪魔大王「サタン」が支配し、一切の光がさすことがなく、半身を地に埋められたサタンが
その3つの顔のそれぞれに一人ずつ罪人を永久に噛み砕く地獄。
人類史上最も重い罪、ダンテはそれを主を裏切ることし、サタンの口には
カエサルを裏切った。ブルータスとカシウス、そしてキリストを裏切った。イスカリオテのユダとした。
地獄の最深部。天使はその不似合いなその場所にその罪人であり、永久に噛み砕かれ続ける男。
ユダに会いに来たのだった。それが、かの主に遣わされた使命。
巨大なサタンの目前で天使は絶望していた。天使の大きさは人並みであるが、サタンのその大きさは
天使の真正面にありながら、鼻の頭が光に照らされている程度だった。
サタンはその光に気づいているのか気づかないのか、意に介さぬという感じで、
その呼吸を止めることもなく口を動かし続けている。
天使は絶望しながらも『悪魔大王そのものはこの姿の奥深くにあるという。
しかも気づかれていたとしても天使としての自分にはなにもできないはず。
恐れてはいけない。主はそういってくれた。私はそれを信じてただ使命を全うすればいい・・・』
強く心にそう念じながら、その暗闇にうごめく悪魔の山をゆっくりと捜索する。
それをその一滴の光のはるか上で、小さいのにその天使よりも
はるかに強い光を放ちながら見つける男の姿があった。
「あれはあの時こぼれた光か・・・なぜあんな場所に・・・?」
光に見つめられていることに気づいていないその弱弱しい光は疑問と絶望の中、目的に会うことになる。
ししまるです。
遅くなりましたが(judas)の続きです。
自分の稚拙な文とたいしてない知識ながらも
書きたい世界を書いていきたいと思います。
今回は天使の光が地獄の底に落ちてきたという話。
なぜなのか?それは次回にて。
気長にお待ちください(え?待ってないって?グスン)